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【スーファミ】豊富なジョブとアビリティに全振りの5作目 |『FF5 / ファイナルファンタジー5』| レビュー 感想 評価

プレイ動画

評価:85/100
作品情報
ジャンル RPG
発売日(日本国内) 1992年12月6日
開発(デベロッパー) スクウェア

ゲームの概要

 
このゲームは、スーパーファミコンで発売されたFFシリーズとしては4に次いで2作目となるRPGです。
 
ジョブとアビリティの組み合わせでキャラクターを好きにカスタマイズ出来る自由度の高さはスーファミのFFシリーズどころか全FFシリーズの中でも上位の完成度で、これだけでもシリーズの歴史に残るほどの魅力を備えています。
 
ただ、カスタマイズを自由にし過ぎた反動でそれぞれのキャラクターの個性が存在せず、それに引っ張られストーリーも起伏がありドラマチックだった4に比べると貧弱という欠点もあります。
 
ジョブとアビリティを中心とする成長&カスタマイズの楽しさはほぼ100点に近い完成度ですが、ストーリーやキャラクターの魅力は弱いと、RPGとしての長所と短所がハッキリ別れているのが特徴です。
 

寡黙なドラクエ、饒舌なFF、両者の決定的な違い

 
今回はスーファミ版の『ドラゴンクエスト5』をプレイした直後にそのまま『FF5』をプレイしたため、ドラクエとFFという二つのシリーズの方向性の違いが明確に理解できました。
 

 
ドラクエはあまり多くをセリフとして語らず起こった出来事の判断をプレイヤーに託すような大人な態度で作られているイベントが散見されます。それに比べFFはとにかくセリフで全てを語るため全体的に説明量が非常に多く子供向けな印象を受けました。
 

ドラクエは一見子供向けのようで読解力を求められる映画のような態度に対しFFはアニメに近い説明量で、個人的にプレイヤーの判断に委ねてくれるドラクエのほうが好みでした

 
ただ、その分グラフィックやイベントの豪華さは段違いにFFのほうが優れており、同じ時期に発売された『FF5』と『DQ5』の二作では天と地ほどクオリティに差がありました。
 

『FF5』と『DQ5』では大作ゲームとインディーズゲーム並みに技術力に差があります。『DQ5』はかろうじて演出力でそれっぽく見せているだけで『FF5』は技術で圧倒しており、スクウェア黄金時代の余裕が感じられます

 
正直、トータルで見るとFFシリーズのほうが遙かに勝っていますが、ドラクエはドラクエでデザイン全体が親しみやすいことやFFのように理不尽に感じられるような不快な嫌がらせがないなど、ユーザーフレンドリーさでいうとドラクエに軍配が上がります。
 
ドラクエは短歌や俳句など多くを語らない引き算の表現を好む日本文化が色濃く、あくまで日本人向けのシリーズで、FFは海外でも勝負するため見た目の豪華さに多くのリソースを割いているといった印象です。
 
子供の頃はドラクエとFFだと断然FF派でしたが、今FF5をプレイし直すとFFのアニメっぽい表現が若干ノイズに感じられ、むしろ多くを語らないドラクエのほうが好ましく思えます。
 

DQ5とFF5だとFF5のほうがセリフ量が軽く10倍近く多いので驚きます

ジョブ&アビリティに全振りしたことの長所と短所

 
このゲーム最大の魅力は間違いなくジョブと、ジョブに付随するアビリティを覚え自由にセットできる成長システム&カスタマイズ要素です。
 
ナイトやモンク、白魔導師、黒魔導師など、ジョブの種類は序盤から出し惜しみなく豊富に用意されており、通常のレベルと並行しジョブレベルも上げる必要があり、これぞRPGの王道というほどレベルを上げキャラクターを成長・強化させる楽しさが他のRPGと比べても群を抜いています。
 

アビリティをセットすると戦闘中にコマンドが追加されるのは7のマテリアの原型となっています。7は固定装備+マテリア(アビリティ)という5の簡易版でしかなく5のほうが遥かにカスタマイズ性が豊富です

 
この点においては、あらゆるFFシリーズの中でもトップクラスの完成度で、ここまで成長とカスタマイズの魅力がハイレベルでバランス良くまとまっているシリーズは他にないのではないかと思うほどです。
 
しかも、各ジョブを最大レベルまで上げると“すっぴん”という最弱の初期ジョブに、マスターしたジョブの能力が全て受け継がれ途中からすっぴんのほうが強くなるという逆転現象が起こります。そのため、終盤にはすっぴんをアビリティでどうカスタマイズするのかという楽しみも生まれ、最後の最後まで成長とカスタマイズの楽しさが持続してくれます。
 
本作はジョブのレベルを上げアビリティを覚える段階の序盤から中盤までがそこそこ程度の楽しさで、アビリティが充実し自分なりに組み合わせを考えることが可能となる終盤が最も中毒性が強くなるという特殊なカーブを描くのが特徴です。
 
それに加え、ストーリーの進行も終盤になると封印された武器や強力な魔法、召喚獣を探して世界を隅々まで探索してもいいし、早々にラスボスのエクスデスに戦いを挑んでもいいという行動の自由が与えられるため、終盤の開放感はあらゆるFFシリーズの中でもトップレベルでした。
 
ただ、ジョブチェンジを最大限活用させるためボス戦がやたら高難易度に設定されているのは若干気になります。
 
このゲームはまず初戦で勝つことは不可能と思うほどボス戦がクセの強い調整を施されています。最初にボス戦で敗北させ、その後にジョブやアビリティをセッティングしてから再戦しようやく互角といったところで、考えなしに挑むと勝負にすらなりません。
 

例えば、全ての敵を全体攻撃で同時に倒さないといけないボスなどは、そもそも全体攻撃が使えない場合は倒すことが不可能となります

 
そのため勝つためにどのジョブを使うのか毎回考える必要があり、これを歯応えがあると取るか、毎回自分のスタイルを否定されジョブチェンジを強要され面倒と取るかで印象が変わってきます。
 
賢くジョブチェンジを駆使しないとボスに勝てないという点は本作の売りと言えば売りなのでまだ良いにしても、それ以外の問題はゲーム全体に細かいストレスがやたら多いことです。
 
特に、ジョブの一つである狩人に通常攻撃が100%ヒットするアビリティがありそれを際立たせるためか、ドラクエでいうとメタルスライムやはぐれメタル並みに通常攻撃(剣や刀など)が外れる敵が多く地味にストレスになります。
 
これは魔法や召喚獣、もしくはナイフなど命中率が高い武器で攻撃すればいいだけなので対処はできますが、これほどまでに通常攻撃が外れまくるRPGも珍しいと思うほど敵に攻撃が当たらずイライラしました。
 

RPGにおいて通常攻撃がまともに当たらないことがどれほど大きなストレスになるのか学べます

 
これらの不満点は主に戦闘面に限ってのものですが、ジョブチェンジの最大の問題はキャラクターの個性を根こそぎ奪ってしまうため、それがストーリーの退屈さに繋がることです。
 
FF5はジョブを自由に変えることが可能なため、各キャラクターに何の特徴もありません。
 
例えば、FFシリーズで格闘家と言えば6のマッシュや、7のティファ、8のゼルなどがパッと思い浮かびますが、5にはこのような個性は一切なく、どのキャラクターも何の印象も残りません。
 
ファリスなどは作中で海賊のかしらという設定なのに戦闘においてもイベントにおいても海賊感は皆無です。
 
このように、ジョブやアビリティを自由に選べる代償として各キャラクターに固定装備、戦闘スタイルなど一切の特徴が持たせられず、そのせいでキャラクターの個性が極めて薄いです。
 

多分、FFシリーズの人気キャラクターランキングで5のキャラが上位に入ることはほぼ不可能と思うほど何の特徴もありません

 
このキャラクターの個性が薄すぎるという点がアニメ的なキャラに魅力を依存するFFにおいては致命的で、元々弱いストーリーの足をさらに引っ張っており最後の最後までキャラクターにもストーリーにも興味が持てませんでした。
 

クラウドのバスターソードや、スコールのガンブレード、ワッカのブリッツボールなど、FFは実は武器でキャラの個性を強化していることが多く、固定装備がないと魅力半減です

なぜ世界を無に帰したいのか不明なエクスデス

 
前述した通り5はキャラクターに魅力が無い上にシナリオも退屈で記憶に残るようなストーリーではありませんでした。
 
前作である4は、登場人物たちが悩みや心の弱さを抱えそれに抗い続けるドラマチックなストーリーなのに比べ、こちらは個性が薄いキャラクターたちがひたすらスケールの大きい展開に巻き込まれるだけで前のめりになるような魅力は皆無でした。
 

唯一良かったのは自分の発明のせいでクリスタルを破壊してしまったと苦悩するシドくらいです

 
主人公たちの個性が薄いこと以上に問題なのがラスボスであるエクスデスの存在感の無さでした。世界を無に帰すという行動の動機が何一つ語られないただの記号的な悪でしかなく、この人物のやることなすこと何の興味も持てません。
 

むしろ脇役のギルガメッシュのほうがいい味を出しているくらいです

 
ただ、最初の第一世界から第二世界へ、そこから第三世界へと話の進行に合わせて2回も世界の景色がガラリと変わるという興奮はスーファミ時代のFFらしさ全開でこのスケール観の出し方は問答無用で好きです。
 

スーファミのFFシリーズで育っているため途中で世界そのものの形が大きく変わるというのがFFという刷り込みが強く、世界が変化するとむしろ安心します

おわりに

 
クリアまで約24時間ほど。プレイ時間は24時間とカウントされていますが実際は高難易度なため数十分のプレイの後にあっさり全滅するなんてザラで、この時間より確実に3、4時間は多めにプレイしています。
 

このゲームは全滅しまくるのでプレイ時間のカウントがあまり信用できません

 
ジョブチェンジとアビリティによってキャラクターを成長・カスタマイズさせる要素はスーファミのRPGの中では間違いなくベスト3に入る完成度で、今なお面白さはまったく色褪せておらずシステム面では4を軽く凌駕しています。
 

しかも5人のキャラクターそれぞれのジョブごとに全て固有のドット絵が用意されているという豪華さも異常です

 
ただ、ストーリーは非常に退屈でこれを長く覚えている自信はありません。4が様々な傑作SF小説や映画、ドラマの引用で出来ておりオリジナリティには欠けるものの刺激的なストーリーだったのに比べ、5はオリジナルにこだわったためか4に比べ数段見劣りします。
 
植松伸夫の音楽も相変わらず優れていますが、やはり全体的に重苦しく暗い雰囲気を120%表現できていた4に比べ、こちらはそもそもストーリー自体がやや呑気のんきなため、音楽の魅力も半減されてイマイチ音色が響いてきませんでした。
 
欠点もそこそこ多いですが、ジョブチェンジとアビリティによる成長・カスタマイズの楽しさが全てを相殺するほど魅力的で、さすがスクウェアの黄金時代のRPGというだけあり圧巻の完成度です。
 

FFシリーズ

タイトル
ハード
ファイナルファンタジーⅣ PS
ファイナルファンタジーⅥ SFC
ライトニングリターンズ ファイナルファンタジーXIII PS3
ファイナルファンタジーXV PS4
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