PV
評価:85/100
放送期間 | 2017年4月~6月 |
話数 | 全12話 |
アニメ制作会社 | A-1 Pictures |
アニメの概要
この作品は、ライトノベル『エロマンガ先生』を原作とするTVアニメです。
エロマンガとタイトルに付いていますが、イラストレーターのペンネームが“エロマンガ”というだけでエロ漫画はほぼ関係ありません(最終話にちょこっとだけエロマンガ先生がエロ漫画を描くというギャグがあるのと、エロ同人誌が登場する程度です)。
なんと、メインヒロインに専属のアニメーターを割り当てるなど、ヒロインへのこだわりが常軌を逸しており、並みのラブコメアニメとは一線を画します。
脚本もテンポのいい会話のやり取りでグイグイ話を引っ張るなど、アニメとしてもラブコメとしても質が高く、安心して見続けられる傑作ラブコメアニメでした。
あらすじ
現役高校生ライトノベル作家である和泉正宗 は、父親の再婚相手の連れ子である、自室に引きこもったまま1年以上も顔を合わせていない義理の妹である和泉 紗霧 を心配する日々を過ごしていた。
ある日、正宗は自身のライトノベルのイラスト担当だった、エッチなイラストを得意とするエロマンガというペンネームのイラストレーターがネットで生動画配信をしているという情報を聞きつけ視聴する。
すると、画面に映るお面姿のエロマンガ先生の後ろには、先ほど自分が引きこもりの妹のために作った食事が映り込んでおり・・・・・・。
ラブコメ度マックスファイアーな設定の妙
本作は、あまり一つ一つの設定に新鮮味はないものの、設定の組み合わせ方が絶妙でラブコメとしては文句のない面白さでした。
まず、コミカルなシーンでもマジメなシーンでも常にエロマンガという単語が飛び交い続けるというシュールさは、同じA-1ピクチャーズの『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で登場人物の一人が安城 鳴子 であだ名が“あなる”なため、ひたすら劇中でアナル、アナル・・・と卑猥な単語を連呼させる手法そっくりで、これだけでラブコメを得意とするA1との相性の良さが分かるほどです。
他にも、ラノベ作家の主人公とイラストレーターの妹がそれぞれ文章と絵を担当するコンビを組みライバルであるラノベ作家たちと交流しながら自分たちのラノベのアニメ化を目指すという設定は『バクマン。』そのもの。
引きこもりの家族をひたすら献身するものの、引きこもっている当事者はワガママ放題という関係性をコミカルに描きつつ、そこに家族愛を忍ばせるやり方は『ローゼンメイデン』を連想しました。
ただ、『あの花』や『ローゼンメイデン』が不登校の引きこもり状態を表面的にコミカルに見せつつ、根っこはわりとえげつないという、軽さと重さ、躁 とうつをバランスよくスイッチする作りに対して、本作はラブコメとしての軽さに徹しているので、深刻さが控え目で見やすくなっています。
その分現実逃避としての躁状態、現実に押し潰されそうになるうつ状態という引きこもりキャラとしてのメリハリがないのがやや不満でした。
しかし、ヒロインとライバルたちとの関係性の作り方は秀逸で、オタクで引きこもりの人付き合いが苦手な妹をメインヒロインに据え、妹のコンプレックス部分を刺激するリア充のクラスメイトや主人公の同業の活動的な美少女ラノベ作家たちを主人公にちょっかいをだしてくるライバルとし三角関係を作ってしまうというアプローチがラブコメとして美しく機能しており、ここは見事でした。
本作を見ると、ラブコメにとって重要なのは三角関係の作り方と、それによって生じる焼き餅をどう斬新に見せるのかにかかっているかがよく分かります。
引きこもりで対人恐怖症に近い状態のため行き場のないヤキモチをどうすることも出来ずひたすら二階の自室の床をドンドン蹴って一階にいる主人公に怒りを遠回しに伝えるだけという感情の発露の仕方は、ラブコメの典型であるヒロインが嫉妬のあまり主人公を殴るとか蹴るとか、電撃を浴びせるとかハンマーで叩き潰すという嫉妬アクションを現代風にマイルドにアップデートできており斬新でした。
高純度のラブコメ世界に見え隠れするトゲ
本作は、基本のリアリティライン自体はコテコテのラブコメ世界で、主人公たちにとって都合の悪い存在は一切登場しません。
ひたすらラブコメにのみ徹するスラップスティック的ですらある作りなのに対し、ところどころやけに現実の生々しさを覚える箇所があり、ラブコメ世界への単純な没頭を拒んできます。
主人公のラノベ作家としての評価が、文章力は大したことがないのにエロマンガ先生のエッチなイラストのおかげでそこそこ売れているだけで、しかも同じレーベルの似たジャンルを書く筆力の高い作家の劣化・下位互換作家としてラノベファンから若干バカにされているという立ち位置で、ここだけ見るとラブコメの主人公の設定に見えません。
文章力よりもエッチな美少女のイラストこそがラノベのヒットでは大事ということを隠そうともしない姿勢など、コミカルな割に若干ラノベ批評的な視点も見え隠れし、これは非常に好ましく感じました。
最後まで見た後に一話を見直すと主人公がエゴサーチを極端に恐怖しており、それをギャグで誤魔化し乗り切る描写など、一見コミカル一辺倒な世界にもトゲが隠されており、この様な描写をちょくちょく挟むことによってご都合主義度100%世界に陥る愚をうまく回避できていると思います。
不満あれこれ
この作品で一番好きなキャラは主人公のライバルでもある美少女ラノベ作家の山田エルフで、画面に映るだけで映像が華やぐ存在感に惹かれました。
なのに中盤以降はわりとよくあるハーレムもののデレ要素多めの締まりのないツンデレヒロイン化していき、序盤~中盤のやりたい放題・暴れたい放題のぶっ飛んだ魅力が薄れてしまい、出番は増えるのに印象は薄まります。
山田エルフ以外のヒロインも、妹を間に挟んだ緊張感のある三角関係が魅力なのに、中盤以降は各ヒロインがひたすら主人公に対して個別にデレまくるような展開になり、退屈なハーレム感が増してしまい後ろに行けば行くほど作品への印象が悪化していく一方でした。
それと、原作にある設定の説明が端折られているのか、いまいち話の流れがピンとこない箇所(主人公よりも文章が遥かにうまいはずの作家が主人公の小説の熱烈なファン、など)も見受けられ、詰めの甘さが気になるところも多くあります。
最後に
序盤から中盤までの怒涛の展開が終盤やや鳴りを潜め失速する点は残念でした。
それでもマジメに質の高いラブコメアニメを作ろうという誠実さは伝わってくるため、印象は極めて良好です。
OVA版
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