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【ビジネス書】1億総戦国大名の時代 |『評価経済社会 電子版プラス』| 岡田斗司夫 | 感想 レビュー 書評

本の情報
著者 岡田斗司夫
出版日 2013年7月11日
難易度 難しい
オススメ度 ☆☆

本の概要

 
この本は、人々が貨幣の代わりに評価と影響力を奪い合う“評価経済”という概念について解説がされます。
 

影響力とはツイッターのフォロワー数、YouTubeのチャンネル登録者数など数値化されるものが主です

 
1995年に出版された『ぼくたちの洗脳社会』という本が元となっており、当時に比べネットがより一般化した現代用に細かい部分がブラッシュアップされた内容です。
 
本の主旨は、ネットによる情報革命によりこれまでは政府やマスメディアが独占していた大衆に対する影響力が一般人にも開放され、その結果あらゆる人間が互いに評価と影響力を競い合う評価経済社会に突入したというものです。
 
やや古い本ですが、情報化社会とは、個人が評価と影響力を武器に覇を競い合う戦国時代でもあるという解釈が切れ味鋭く、今読んでも面白い一冊でした。
 

情報化社会=戦国時代

 
この本は出版されてすぐに読んでいましたが、最近『未来に先回りする思考法』という未来予測に関する本を読み、改めて評価経済という未来を予測していたこの本に興味が湧き再読することに。
 

 
すると、10年前に比べると読書量が増えた影響か本に書かれていることが手に取るように理解でき、一回目より楽しく読めました。
 
なぜなら、一回目は評価経済によって未来がどう変わるのかという表面的な部分を中心に読んだのに対し、今回はなぜそもそも1995年というネットが一般に普及していない段階で評価を競い合う未来を予測できたのかという点を中心に読んだためです。
 
この本は全5章で構成されており、1章・2章はアルビン・トフラーの『第三の波』という著書の中に登場する、狩猟生活を捨てた第一の波・農業革命、農耕生活を捨てた第二の波・産業革命、生活の中心が物質から情報へと移行する第三の波・情報革命という3つのパラダイムシフトが語られ、なぜ第三の波・情報革命が評価経済に繋がるのかという基礎部分の説明がされます。
 
そして、3章~5章は具体的に評価経済がどのようなものなのかについて解説されますが、今回読み返して面白かったのはむしろ1章~3章の各時代には誰が影響力を持ち、それがどのように推移していったのかという部分でした。
 
特に刺激的なのが、キリスト教など死後の安心を糧に影響力を握っていた宗教組織が、民主主義の監視や科学の発展という役割のために生まれたマスメディアによって情報を発信する影響力を根こそぎ奪われ、今度はそれがネットの発達により一般に開放されると、あらゆる人間がかつてのマスメディアのような影響力を獲得できる時代を到来させたという、影響力を軸に歴史を俯瞰する視点でした。
 
よく著者である岡田斗司夫さんは様々なメディアで、現代は「乱世だ」「戦国時代だ」と主張しているのを見かけますが、いまいちピンときていませんでした。しかし、改めてこの本を読み直すとマスメディアという名の室町幕府がネットという最新技術によって弱体化し、これまでは幕府に従っているフリをしていた各大名たちの下剋上の時代が訪れたことが手に取るように分かります。
 
前回読んだ時は評価というワードが重要だと誤解しましたが、むしろ評価経済においては影響力の奪い合いこそが本質であり、評価とは影響力の源泉でしかないと気付くことができました。
 
それにこの本を改めて読み直すと、有名人(芸能人)というものに対する認識もガラリと変化します。
 
ネットが発達する以前は、いかに影響力を独占するマスメディア(TVやラジオ業界、出版業界)に取り入って影響力のおこぼれを貰うかが名を上げる唯一の手段だったのが、今はネットでいくらでも自身をメディア化することができるため、未だにTVやラジオという旧権力に固執する人たちがただの時代遅れに見えます。
 

まだTVやラジオが主戦場な有名人たちは、衰退するだけの幕府の中で役職を巡って争っている様な状態ですね

 
世の中がすでにこの本に書かれている様な状態に突入した後なので書いていることが手に取るように分かりますが、これを1995年の段階から先読みして、マスメディアが弱体化する未来に向けて着々と実験を繰り返し、来るべき乱世に向けて準備をしていた岡田斗司夫さんの未来予測の精度に改めて驚愕しました。
 

最後に

 
この本を再読すると、岡田さんは本の中でほぼ手の内を晒していることが分かり、主張を丁寧に読み解くと岡田さんの思考そのものをトレースでき、実はもの凄く大胆な一冊だと気付けます。
 
最初は未来予測の精度を改めて検証するという目的で読み始めましたが、途中から最初に読んだ際に見落としていた各時代に影響力を独占していた権力は何か、それがどのように時代ごとに推移していったのかという点が重要であると気付け、現代が貨幣よりも評価と影響力を奪い合う戦国時代なのだとようやく理解するに至りました。
 
イラク戦争は表面上はアメリカが勝ったのに、評価経済という点においては大量破壊兵器などなくアメリカの国際評価が下がるだけで敗北だったという主張も、そのまま現在のロシアとウクライナに当てはまるなど、未だに評価経済という影響力を奪い合う状態は継続しており、今読んでもまったく古さを感じません。
 
 

 

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