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【PS2】超高難易度路線に突っ走った続編 |『エヴァーグレイス2』| レビュー 感想

プレイ動画

評価:55/100

作品情報
ジャンル アクション
発売日(日本国内) 2001年6月21日
開発(デベロッパー) フロム・ソフトウェア
開発国 日本

ゲームの概要

 
このゲームは、装備の着せ替えを売りとするアクションゲーム『エヴァーグレイス』の続編です。
 
一作目の前日譚という設定ですが、そもそも前作からしてストーリーもキャラクターも大して重視しておらず、未プレイでも問題ないと思います。
 
装備の交換を主体とするゲーム性がうまく機能していなかった前作に比べ、装備交換に意味が生まれるなど、改善された点も多数あります。
 
ただ、難易度が途方もなく爆上がりし、ほとんど別物といっていいほど高難易度になりました。
 
バトルもスタミナが廃止されたせいで凡庸なアクションに毛が生えたようなゲームになってしまい、改良点と改悪点でプラスマイナスゼロになってしまった感があります。
 

スタミナが……

 

自分がフロムのアクションゲームで好きなのは『キングスフィールド』など昔からスタミナ制をしつこく採用している点です(採用していない作品も多々あります)。
 
スタミナゲージがあるおかげで、無駄にスタミナを消費しないように敵の動きを観察し慎重に立ち回る癖が付くなど、スタミナ制はアクションゲームの基礎を鍛えてくれる効果もあり、昔からずっと好きでした。
 
しかし、今作ではスタミナが廃止され、空振りもなんのその、連続攻撃し放題の爽快感寄りにシフトしたためアクションゲームとしての魅力が消滅しました。
 
しかも前作には無かったガードが追加され、ガードしないとザコ敵の攻撃ですら一撃死が多発します。そのため、どうしても前作の癖が残り、ガードよりも回避しようとしてしてしまう序盤はゲームオーバー地獄でした(難易度が徐々に上がるため、結局ガードに慣れた中盤以降もゲームオーバー地獄です)。
 
スタミナが無くなったためガードし放題で、ガードしすぎると崩されるなどの駆け引きもありません(さすがにボスの強力な攻撃によるガードブレイク状態くらいはあります)。
 
さすがにガードに何らかの制約を設けないと回避安、ガード高過ぎるきらいがあり、バランスが極端に悪く感じてしまいます(それでも死にまくるのが本作の怖いところ)。
 

雑になったパルミラアクション

 

スタミナがなくなった代わりに、前作から引き続き登場する、PA(パルミラアクション)というバトルにおける必殺技と、ダンジョンでの謎解きを兼ねるシステムが拡張されました。それに三人のキャラでパルミラアクションを連携する要素が新たに加わるという新要素も。
 
ただ、作りが非常に雑で、操作キャラ(三人の中から一人を操作)がパルミラアクションを敵にヒットさせないと味方がその敵をロックオンすらしてくれないという残念な仕様です。
 
ボタンをタイミング良く押して攻撃を連携させるといえば『ヴァルキリープロファイル』が真っ先に思い浮かびますが、そこまでの連携の爽快さはありません。
 
仲間に単独でパルミラアクションを使用させても明後日の方向に攻撃を繰り出したり、射程が足りなくて敵に攻撃が届きすらしなかったりと、ストレスしか溜まりません。
 
これは緩めのロックオン機能を持たせるか、事前に行動をAIに指示し、ある程度こちらの意に沿った攻撃対象選びをしてもらうなど、工夫が欲しかったところ。
 
PAは攻撃モーションがやたら速いため、自分の反射神経ではもはやデタラメにボタンを押して無理矢理連携っぽく繋いでいる状態がやっとでした。そのため「なんかよく分からないけど凄いダメージを与えているっぽい」という漠然とした感覚しか得られません。
 
ただ、それでもエフェクトが派手だったり、ダメージが強力だったりで一定の爽快感はあります。しかし、それはフロムのゲームに求めている要素ではありませんでした。
 
逆に前作よりも素直に改善されたと思うのは装備交換の重要性です。
 

弱点属性はほぼ一撃死のシビアさ

 

前作も敵の属性に合わせて装備を交換していく面白味はあったものの、今作はその点がより強化されました。前作では何となく程度だった装備交換が大きなウェイトを占めるように。
 
弱点属性を突けば敵を蹂躙でき、逆に敵の攻撃属性に対して弱点となる属性で固めるような装備なら瞬殺されるバランスです。
 
このおかげで少しでも油断して装備交換を怠るとあっさりゲームオーバーになるため、ザコ敵戦でもスリルがあります。難易度は前作とは比較にならず、軽く前作の10倍近いゲームオーバー量を経験しました。
 

同じフロム作品で例えると『アーマードコア2』から『アーマードコア2 アナザーエイジ』くらいの難易度差があります

 
ただ、装備交換の重要性が増したのはプラスですが、新たな問題も発生しています。それは装備交換をするのにいちいちメニュー画面を開かなくてはならないことです。
 
前作ではボタン一つでメニュー画面をショートカット起動でき、パルミラアクション変更もそれほど手間取りませんでした。しかも、武器はR3(右スティック押し込み)でサブ武器に一瞬で交換できるなど、満足とは言い難いものの、それでも装備交換を軸としたゲームらしく一応のワンタッチ変更機能は用意されていました。
 
しかし、今作ではそれが全て廃止され、あらゆる装備交換はメニュー画面を開かなくてはならない仕様に。
 
その代わりに三人のキャラをワンタッチで交換出来る機能を入れ、それぞれに違う装備をさせることで擬似的に装備交換を行えるようにしています。
 
ですが、いかんせんパルミラアクションなどは戦闘やイベントで頻繁に交換するためキャラ交換だけでは追いつかず、どうしてもいちいち何かある度にメニュー画面を開かなくてはならず、これが非常に苦痛でした。
 
武器・頭・胴体・足・パルミラという5つの部位を頻繁に装備交換させられ、面倒なことこの上ありません。
 

不満あれこれ

 
前日譚ということもあり、てっきり1の冒頭に話が繋がるのかと思ったら繋がらず、そのまま流れて終わるためクリア後はぽかんとさせられました。
 
そもそも、あんな退屈な話の前日譚を一体どこの誰が求めているのか皆目見当もつきません。
 
フロムはたまにストーリーをいかにつまらなくできるか実験しているのかと勘ぐりたくなるほど退屈なゲームを作るものの、本作はそれの極致に近いです。
 
まだ1は同じ場所を舞台に二人の主人公の時間の流れが微妙にずれており、この後どうこの二人の話がリンクするのか多少の興味を惹かれたものの、2に至っては物語にサスペンス性が皆無で、何一つ興味が湧きません。
 
その癖ムービーはやたら挿入されるのでストレスしか溜まりません。どうせキャラの魅力もドラマの面白さも信じていないならせめてつまらないムービー部分を削って展開をスピーディにして欲しかったところ。
 

昔のフロムは説明を用いない雰囲気の出し方がまだまだ拙いですね

 
それに、一部ボスの難易度が嫌がらせにしか思えず、特にラスボスは腹が立つを通り越して清々しいほどユーザーを苛つかせることにのみ終始したような難易度で苦痛なだけでした。確かに弱点さえ分かれば簡単に倒せてしまえるバランスではあるものの、自分はあまりにも死にすぎて心が折れ倒し方を調べてしまいました。
 
多分クリアするまでに50~60回はコンティニューをしたものの、それほどのゲームオーバー量に見合うほどの面白さも達成感も皆無でした。
 
難易度を上げるのであればまず操作やカメラの快適性を確保してからにして欲しかったです。操作性が悪いのに難易度だけ上げたら苦痛が倍増するだけだとなぜ分からないのか……。
 

最後に

 
クリアまで約7時間ほど。
 
長所もあるにはありますが、結局全てを操作性の悪さが殺しています。
 
1も2も操作していてまったく楽しくない。これが本作のアクションゲームとして最大の問題だと思います。
 
カメラ操作も前作が下の下の酷さだったのに対して今作が下の上くらいになった程度で、やはりストレスフルなことに変わりはありません。
 
正直パルミラアクションの派手さを売りにする今作よりも、微妙に特性が異なる主人公を切り替えながら進める前作の地味なスタイルのほうが好みでした。
 

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