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【PS2】魔法特化版キングスフィールド |『エターナルリング』| レビュー 感想

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評価:55/100

作品情報
ジャンル
アクションRPG
発売日(日本国内)
2000年3月4日
開発(デベロッパー)
フロム・ソフトウェア
開発国
日本

ゲームの概要

 
このゲームは、フロム・ソフトウェアの『キングスフィールド』の流れを汲む一人称アクションRPGです。
 
『キングスフィールド』シリーズを魔法特化版に改良したような趣で、バトル中に指輪(魔法)をリアルタイムで切り替えられるバトルシステムは魅力的でした。
 
しかし、操作性の悪さが終始足を引っ張り続け、アクションゲームとしては出来がイマイチです。
 

操作性(というかキーコンフィグ)の酷さ

 
本作は、PS2のゲームにも関わらず、移動や視点操作にアナログスティックが使えず、PS初代の頃のフロム作品同様相変わらず十字キーとLRボタンで操作という酷い仕様です。
 
この十字キーで操作するという点は、アナログスティックが周辺機器として発売され、初期の頃には付いていない初代PSの『キングスフィールド』なら我慢できるものの、PS2ではやや厳しいものがあります。
 
このようなゲームをやるといかにアナログスティックを使った操作が快適なのか逆説的に分かり、現行ゲームの快適さに思いを馳せることができ、それはそれで貴重な体験でした。
 

キングスフィール……あ、違うゲームか

 
 
本作はあまりにもキングスフィールドと基本的なシステムや操作、印象が瓜二つで、目新しさが特にありません。厳密に言うと『シャドウタワー』の装備依存システムを属性指輪に置き換えているためキングスフィールド(8) + シャドウタワー(2)くらいの折衷な印象です。
 
キングスフィールドと大きく異なる点は、通常攻撃が中盤からはほとんど空気と言っていいほどの存在感で、ほぼ魔法中心でゲームを進める点。
 
そして、魔法を使えるようになる指輪を合成で作る新システムです。
 
敵を倒すと属性や魔力値が設定されている魔法石(通貨的な役割も果たし、ソウルシリーズで言うソウルに近い)が手に入り、それを用いて指輪(魔法)を合成します。
 
この時に素材とする魔法石の属性や魔力値によって出来上がる指輪が変化するシステムで、バリエーションは100種類とそこそこ存在します。
 
ただ、この指輪合成というシステム自体がフロムソフトウェアのゲームの方向性と噛み合わず、イマイチしっくりきませんでした。
 

アイテム合成とフロム的なゲームとの喰い合わせの悪さ

 
強力なアイテムを合成で作れる面白さとは詰まるところ『スターオーシャン』シリーズのように賢く合成すればやや反則気味なバランスブレイカーアイテムが作れ、多少のズルができる点にあると思います。
 
ですが、フロムのゲームの面白さは死にゲーとしての堅実なレベルデザインやバランス調整にこそあるため、ゲーム進行が極端に楽になるアイテムが作れるようなシステムがあったらそもそも台無しで、逆に強力なアイテムが作れないのであれば合成システムに意味はありません。
 
苦労して作ったアイテムがゲームを進めるのにさほど有利に働かないのであればご褒美不足で、かといって有利になってしまうとフロム的な面白さが目減りすると、堂々巡りに陥ってしまいます。
 
結果、ゲームをプレイしながら「とんでもない指輪が合成で手に入るのではないか」という期待と「でもそんなものが作れたらゲームバランスが崩壊するから嫌だ」という相反する感情に悩まされ続けました。
 
こんなアイテム合成に不要な悩みに煩わされるのは勘弁して欲しいです。
 

指輪(魔法)=銃火器、MP=残弾数のような役割

 
バトルは、最大5つ装備した指輪(魔法)を状況に応じてリアルタイムで切り替えながら使い分けていくというもので、コロコロとテンポ良く指輪を切り替えられるバトルは一定の面白さがあります。
 
指輪の使用は単純なMPの他に、指輪の威力や効果に応じてフロム作品ではお馴染みのスタミナに相当するマジックゲージも消費します。
 
強力な魔法ほどチャージに時間が掛かる仕様で、さながらシューティングゲームのリロードの感覚(チャージショットでも可)に近いです。
 
ハンドガンは一瞬でリロードが終わり、ロケットランチャーは弾を込めるのに手間取るイメージで、このため強力な魔法を使う際はチャージに時間が掛かり、外すと次のチャージまで大きな隙が生じるため心地良い緊張感があります。
 
バトルの不満は指輪の切り替え時に進むと戻るの二つのボタンを用意して欲しかったこと。次の指輪に移ることしか出来ず、指輪交換の度にムダなボタン入力が増えストレスが溜まりました。
 
最近のシューティングゲームのように十字キーを押したら対応する指輪に即交換されるなどの操作ならより直感的で便利だったはず。
 
このゲーム自体がシューティングゲームよろしく魔法を撃ちまくるシステムのため、この指輪交換の快適さはシューティングゲームにおける銃器交換と同じくらい重要だと思います。
 

不満あれこれ

 
本作で最もストレスが溜まるのが、MPの回復手段が乏しく、終始MP不足に悩まされることです。
 
MPは基本的に敵を倒すと回復するものの、その敵がこちらの魔法の消費量を上回る耐久力なため、慣れていないと近接攻撃を交ぜて戦ってもMPが戦う度に減っていきます(近接攻撃のために接近するとダメージを受けてしまい回復魔法を使う羽目になるのもMPが減る要因の一つ)。
 
MPが自然回復せず、容易にアイテムでの回復もできないため、魔法をメインに使うゲームなのにMP消費が怖くて魔法を思うように使えないという本末転倒なことになっています。
 
前述した魔法=銃火器という考え方なら、弾が極端に手に入り辛いサバイバル要素が濃いシューター系のゲームのようなイメージです。
 
ただ、終盤になるとほぼ一撃でザコ敵を撃破可能な強力な指輪が合成可能になるためMP消費量を上回るMP入手量となり、魔法使用に対する慎重さからは解放されます。
 
その他にも、移動速度が極端に遅いのもストレスになります。
 
途中ある指輪を入手するとダッシュ可能になるものの、そのダッシュの速度すらかったるく、この程度の速度ならデフォルトでダッシュできてもいいのにと毒づきたくなりました。
 

最後に

 
指輪をリアルタイムに交換しながらのバトルは魅力的なものの、結果的にマイナス面が大きく足を引っ張り楽しかった思い出はさほど残りませんでした。
 
いくら小手先のシステムを弄っても、操作性が悪いアクションゲームが名作たり得るはずがなく、満足度は低めです。
 

余談

 
物語はほとんど皆無に等しいものの、ラストにフロムらしいと言えばフロムらしい、フロムらしくないと言えばフロムらしくない、ある心を欠落させた存在が人の心を理解し、前向きに終わるという、正直フロムのゲームには一切求めていなかったポジティブな展開があり、非常に驚かされました。
 
ゲームのラストに一発プレイヤーに不意打ちを喰らわせる様なオマケ展開を入れるのはフロムらしいのに、それが前向きなものであるという点は珍しく、このような不意打ちならいくらでも大歓迎です。
 
 

 
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