プレイ動画
評価:80/100
ジャンル | RPG |
発売日(日本国内) | 1992年9月27日 |
開発(デベロッパー) | チュンソフト |
ゲームの概要
このゲームは、国民的RPGであるドラゴンクエストシリーズの五作目で、スーパーファミコンではシリーズ初タイトルとなる作品です。
父と子、さらにそのまた子供たちと親子3代に渡って繰り広げられるドラマチックな物語と、自分が結婚し父となり家族を持つことの重みを描くという通常のRPGとは一線を画するようなテーマと、長いドラクエシリーズの中でも一際 異彩を放つ名作中の名作です。
ただ、ボタンの反応速度が極端に悪いことなど、ゲームとしてはやや耐用年数切れな感もあります。
それでも今なおプレイに耐えられるほどドラマチックなストーリーやゲームデザインの魅力は健在で、スーファミ世代を代表するRPGの一本であることに変わりはありません。
ちなみにスーファミ版をプレイするのは25年以上ぶりでした。PS2版もクリアしているのでドラクエ5自体は15年ぶりくらいです
最悪なボタンの反応速度・・・
まず、このゲームについて語る際に絶対に避けて通れない重大な欠点はボタンを押した際の致命的な反応速度の遅さです。
十字キーで移動する際や、Aボタンやその他ボタンで人物に話しかけたり物を調べたりする際、ターン制の戦闘でコマンドを選んだりキャンセルしたりする際など、このボタンの反応が遅いという単純すぎる欠点がゲーム内のありとあらゆる箇所に悪影響を及ぼしており、ゲームプレイ中は常にストレスを感じ続けます。
移動はコチラの思った通り動いてくれず常にイライラしっぱなしで、慣れない序盤はタンスやツボを調べる際に高確率でズレてしまったり、ダンジョンにトラップがあるのが分かっていてもボタンの反応が鈍いせいで意味もなく引っかかったりなど、移動周りは最後の最後までストレスフルでした。
パーティのメンバー同士でアイテムを移動する際や、武器や防具を装備する際も、とにかくボタンの反応が遅く何をやるにも億劫です。
中でも最悪だったのが戦闘です。コマンドを選択することそのものがストレスなため作戦を“めいれいさせろ”にしてパーティ全員分の行動を選ぶ作業が苦痛で仕方ありませんでした。そのためザコ敵は主人公だけコマンド選択し、仲間は全て自動で動くような作戦を選び、ボスなど強敵と戦う時だけ全員分のコマンドを選ぶようにしないとストレスで長時間プレイすることすら不可能です。
レトロなゲーム機ではあるものの、スーファミというハードの優れているところはCDやDVD、ブルーレイなどの光学メディアではなくROMカートリッジのためロードがほぼなく常にサクサクと動いてくれることなので、このボタンの反応が極端に遅いというストレスはスーファミの魅力を根こそぎ殺してしまっており、耐えられないほどの酷さでした。
子供の頃はここまで酷いという記憶が無かったので久しぶりにプレイしたらあまりのストレスに驚きました
ずば抜けたゲームデザインとシナリオのセンス
このゲーム最大の長所はやはり家族をテーマにしたストーリーで、この点はそもそも類似するような他作品があまりないため、未だに独自の魅力を維持し続けています。
ゲームの最初から最後までずっと主人公家族を中心とした物語のみが続くため一貫性があり、しかも序盤の子供時代に起こる出来事の数々はほぼ後半の大人時代に起こることの伏線になっているなど、シナリオの作り方が丁寧で多少のゲームとしての問題点は吹き飛ばすほどの底力があります。
特に、個人的に好きだったのは、ほぼチュートリアルである子供時代が終わりようやく自由に世界を旅できるようになる瞬間の開放感でした。
実際は移動制限があるためほぼ一本道ですが、ここはオープンワールドゲームに近いこれから世界のどこにでも行けるというワクワクをシナリオ演出で出せており、裸で自由な世界に放り投げられるような興奮に包まれます。
奴隷という抑圧された状態から解放される流れに加え、昼と夜という時間変化要素が追加され夜でないと発生しないイベントが起こることや、オラクルベリーでカジノが可能になることで寄り道という選択肢が生まれ、馬車を手に入れることで野生のモンスターを仲間にすることも可能になり戦闘の自由度も増すなど、大人への成長と共に途端に出来ることが増えゲームの可能性が広がるため、下手なオープンワールドゲームより開放感があります。
単純な自由度の高さで言えば最初からどこに行って何をしてもいい初代のドラクエが一番ですけどね
久しぶりにドラクエ5をプレイし直して一番感動したのはこのゲームデザインのずば抜けたバランス感覚でした。
数十年というRPGにしてはとてつもない長期間に渡る物語を巧みに操り、ゲーム的な抑圧と解放や、家族の再会と別れを繰り返す起伏のある展開の作り方や、同じ街なのに住人が年を取っていくため最初は子供だった者がいつしか大人になり訪れる度に微妙に会話内容が変わっていくことで時の流れや世代の移り変わりを意識させる工夫など、どれもこれも堀井雄二さんのプレイヤー心理を巧みに利用するシナリオセンスが遺憾なく発揮されており、今プレイしてもゲーム演出には驚かされるばかりでした。
中でも最も際立っていたのが、自分が子を持つ親になるという感覚をゲームデザインで表現しようとする試みです。
子供に名前を付けるというイベントを父親であるパパスと主人公で二回繰り返すことで自分が父親と同じ立場になったと自覚させるアイデア。子供時代に少しでも傷を負うとパパスがホイミで回復してくれたように、自分が親になると子供たちについ同じことをしてしまう親の行動を反復させるかのようなアプローチ。そして自分がいつの間にか偉大に見えた父親よりも遙かに強くなっていることをRPG的な数値で実感できること。子供たちの初期レベルをわざと低めにし、ぐんぐんとレベルアップしまくることで我が子が成長していく感覚を疑似的に再現するなど、単純なストーリーだけでないゲーム部分を利用した創意工夫が散見されます。
このような単純なシナリオ面だけでない、RPGというジャンルの持つ成長要素を最大限活用したストーリーテリングこそがドラクエシリーズの中でも5が異彩を放つ要因なのだと思います。
子供に細やかに回復呪文を使ってあげることで親の愛情をゲーム的に表現したり、ステータスの数値によって親を超えたことを実感させたりと、RPG的な親子の描き方のお手本のようなゲームデザインでした
やや単調で作業なターン制バトル
本作の戦闘は、ザコ敵はほぼ“たたかう”コマンドを連打するだけの単調さで特に面白いと感じることはありません。
それよりも、昔のRPGではお馴染みの異常なまでのエンカウント率の高さや、前述した通りボタンの反応が鈍いことのストレスが圧倒的で、戦闘はどちらかというと終始ストレス源にしかなりません。
さすがにボス戦はバイキルトやルカニ(ルカナン)といった攻撃力を上げたり、敵の守備力を下げたりするバフ・デバフ系の呪文を駆使しないと苦戦するため歯応えがありますが、それでも戦闘が楽しいと感じる瞬間はほぼありませんでした。
やはりボタンの反応が鈍いという欠点が終始足を引っ張りまくり、せっかく個性豊かなモンスターを仲間にできるのに馬車で待機する仲間と頻繁に交換するのが面倒だったり、そもそもパーティメンバー分のコマンドをいちいち選択するのすらストレスで戦闘はオートにしたくなったりと、この部分がネックになります。
さらに加えると、どのキャラクターもMPが少ないため攻撃呪文が自由に使えないというストレスが常にありました。
このゲームはエンカウント率が異常なほど高い上に、“にげる”コマンドで逃走しようとしても何度も失敗するなど、強制的に敵と戦わされダメージを受ける量が凄まじく多いのが特徴です。そのため、ダンジョン内でMPが切れHPを回復できなくなると即全滅なので、常にMPを回復のために温存しておく必要があり、そのせいで攻撃呪文を使う余裕がほとんどありません。
ダンジョンではザコ敵相手にMPを消費しすぎると最深部で待ち構えるボス戦中にMP切れになり回復不能になるという事態が何回かあるほどMPが終始足りません
そのせいで、戦闘中は常にMPを消費しない“たたかう”、戦闘が終わるとホイミ系の呪文で回復を延々と繰り返すのみで、その他の呪文を使うことすら稀でした。
序盤で回復呪文を使えるモンスターを仲間にできるかどうかで難易度すら変わってしまうほどのシビアさです
馬車が入り込めないメンバー交換が不可能なダンジョン内のザコ敵戦はひたすらMPを温存しなければならず単調で、ボス戦はバフ・デバフを駆使しないと勝てないシビアさなためメンバーもある程度固定されるなど、全体的に行動を制限され気持ちよく戦うことができずフラストレーションが溜まります。
どこに行けばいいか分からなければ即攻略サイトをチェック
このゲームというか、昔のドラクエシリーズ全般の問題ですが、目的地に関するヒントが極端に少ないため、もしどこに行けばいいのか迷ったら即攻略サイトを見たほうがいいと思います。
中でも酷いと感じたのが、北東の方角に行けばいいと指示され北東を調べたのに目的地が一切無く、意味が分からなくて攻略サイトを見たら実は目的地が地図の南西の位置にあったことでした。
確かに北東の方角に進めば南西に繋がるので辿り着けますが、てっきり地図の北東の位置に目的地があると勘違いし、ひたすら北東を調べるという時間を無駄にする行動をしてしまいました。
このように自力クリアしようとすると高確率で延々とワールドマップ内をさまようことになるため、少しでも迷ったら攻略サイトを見るのがオススメです。
親切なヒントと思いきやただの妨害だったとわかった際はブチ切れました
おわりに
クリアまで約24時間ほど。ちなみにオラクルベリーのカジノで景品のメタルキングのけんを手に入れるために4時間30分ほど100コインスロットを回し続けたので、実際は30時間ほどプレイしました。
序盤~中盤にメタルキングのけんを手に入れるとほとんどのザコ敵を一撃で倒せるため、軽いチート気分が味わえます
正直、RPGとしては若干耐用年数切れと感じるほど操作性が極悪で、グラフィックもしょぼく、ターン制の戦闘も単調と、あまり褒められる要素がなく、スーファミのRPGとしては凡作といったところです。
街の中でモブが多いだけで処理落ちするなど、とにかくゲームをやっていて操作が重い・遅いと感じる瞬間が多々あります。ちなみに続編のスーファミ版の6も確認したらこのような問題は一切ありませんでした
ただ、そのような欠点があってもなお親子3代に渡る勇者の末裔や天空城を巡るドラマチックなストーリーと、自分が親になり子を持つ感覚をどうゲームデザインで表現するのかというアプローチ部分は古びておらず、ドラクエシリーズの中でも一位二位を争うほどの存在感がありました。
ドラゴンクエストシリーズ
タイトル
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ドラゴンクエストⅥ -幻の大地- | SFC |
ドラゴンクエストXI -過ぎ去りし時を求めて- | PS4 |
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