トレーラー
評価:85/100
ジャンル | ステルス RPG FPS |
発売日(日本国内) | 2011年10月20日 |
開発(デベロッパー) | Eidos Montreal |
開発国 | カナダ |
ゲームの概要
このゲームは、『デウスエクス』シリーズの一作です。
ステルスプレイをベースにしつつ、オーグメンテーション(人体拡張)という作中設定と呼応する成長システムや、会話選択肢によって物語が分岐する要素など、多数のアイデアを破綻なく一本のゲームに詰め込んだ傑作でした。
しかし、舞台となる街自体は広いのにメインミッションが一本道で単調な点や、操作性が悪くアクションゲームとしては微妙な点、やり込み要素が不足気味な点など、不満も多々あり手放しで絶賛という出来ではありません。
あらすじ
2027年。ナノテクノロジー・バイオテクノロジーの発達は、機械による人間の能力の拡張を可能とした。体を機械化するオーグメンテーション(人体拡張)は怪我などで身体の一部を失った者、常人を凌駕する能力を欲する者など様々な需要に応じて広く普及する。
しかし、機械化した人間であるオーグを危険視する反オーグメンテーション運動も同時に盛んとなり、世界中でオーグメンテーション関連の施設や企業へのテロが相次ぐ事態となる。
元SWAT隊員であり、現在はオーグメンテーション関連企業の大手であるサリフ・インダストリーの警備主任を務めるアダム・ジェンセンは、謎のオーグ化したテロ集団に襲撃され重傷を負う。
事件から6ヶ月後、またしても発生したサリフ・インダストリーへのテロに対抗するため自身の体をオーグ化し現場に復帰するジェンセン。しかし、ジェンセンは図らずも、サリフ・インダストリーへのテロに隠された世界を揺るがす陰謀に巻き込まれていくこととなり……。
死にゲーとしてゲームオーバー慣れをさせる序盤
本作はゲーム開始直後は高難易度ゲームに近い歯応えです。このゲームの最大の売りであるオーグメンテーションが使用できず、快適とはほど遠い操作性でさほど垢抜けないカバーアクションを中心としたゲームプレイを強いられるなど、非常に退屈でした。
しかし、この単調さこそがプレイヤーをオーグメンテーションへ適応させるためのチュートリアルだったと後々分かります。
序盤にプレイヤーに負荷を掛け、ゲームの基本的な立ち回りなどを叩き込み、死にゲーとしての心構えを持たせるスタイルは『ダークソウル』など高難易度ゲームの在り方で、そこを過ぎれば待っているのはオーグメンテーション(人体拡張)という名の快楽です。
オーグ化していく感覚
本作が他のステルスゲームと一線を画するのは、オーグメンテーション(人体拡張)という主人公の能力を拡張していくシステムの完成度です。
ゲーム開始直後は、主人公のジェンセンがまだオーグ(機械)化してから日が浅く、能力をうまく引き出せないという物語的な設定とリンクさせ、めぼしい能力が封印されています。
しかし、この部分を丁寧に描いているおかげで、ジェンセンがオーグ化した体に慣れるように、プレイヤーもまたゲームのシステムに順応していくというプロセスがまさに人体拡張をテーマにしているゲーム性ともリンクし、徐々に視野が広がる快感に浸れます。
これは、人間的な体温をあまり感じさせない作風と相まって、自分がオーグ化していくような没入感を得られ、プレイ中研ぎ澄まされていく感覚にゾクゾクさせられます。
ゲーム全体が拡張をテーマとしている点も統一感があります。
人間の機械化による身体・感覚の拡張がもたらす弊害を描くストーリー。
舞台となるデトロイトや中国は映画の『ブレードランナー』を思わせるサイバーパンク調の街並みで、それは元からあるスラム街にハイテク設備を後付けしたような、新旧の区画が同居する混沌とした拡張都市。
そして、ゲーム体験がもたらすプレイヤーの意識拡張と、物語・デザイン・システムが溶け合い、渾然一体となった拡張体験に惚れ惚れしました。
オーグメンテーション(人体拡張)によってもたらされる攻略性の拡張体験
本作はステルスFPSをベースとしながらRPG(成長)要素が加えられ、この二つが非常にうまく融合しています。
RPG要素は、ゲーム内の様々な行動(ハッキング、ミッションの達成や敵の撃退など)によって得られる経験値でレベルアップし、得たポイントでオーグメンテーションの能力を解放していくという、スキルツリーに似たタイプのものです。
PRGだけでなくクレジット(お金)も最終的にはオーグメンテーションを強化するためのプラクシスポイントへの変換に行き着くよう設計されており、オーグメンテーションを頂点とするシステム体型がうまく機能しており無駄がありません。
しかも、オーグ化したジェンセンが経験を積むことによって徐々に機械の体に慣れていくという設定とRPG要素がうまい具合に噛み合っており、経験値を溜めるとオーグメンテーション強化が可能になるという流れに意味が付加されるという副次的効果もあります。
そして、本作最大の魅力がオーグメンテーションという能力解放システムと、その他ゲーム性の融合です。
似たコンセプトのゲームを挙げると『フォールアウト』シリーズが近く、ハッキング・索敵・ステルス・戦闘・コミュニケーション能力などを強化することで多彩な恩恵が得られる点が似ています。
このオーグメンテーションが強化可能となると、序盤の単調さなど吹き飛びます。
ステルス能力を強化すれば、クローク(光学迷彩)で敵に見つからず、隠密プレイができたり、ハッキング能力を強化すればロックされた部屋やパソコンのセキュリティを簡単に解除できたり、腕力を強化すれば持てるアイテム量が増えたり、肺を強化すれば毒ガスが蔓延している空間でも自由に活動できたり、肺活量が上がりダッシュ時に疲れづらくなったりと、強化する項目ごとに様々な恩恵が得られる自由度の高いシステムです。
本作はプレイヤーのオーグメンテーションの強化プランに応じて得意な攻略方法(攻略ルート)が変化するという優れたレベルデザインが施されており、その完成度は圧巻でした。
入手できるプラクシスポイントには上限があり、一回のプレイで全能力を強化することは不可能なため、どの能力を取ってどの能力を捨てるのか非常に悩ませられることになります。
一回クリアしただけでは、このゲームの全てを理解することは不可能で、別の能力を強化してプレイすると「こんな攻略ルートも隠されていたんだ!」と驚かされることが多々ありました。
本作は、オーグメンテーションの完成度の高さと、システムのパフォーマンスを最大限発揮させられるように丁寧に丁寧に作られたレベルデザインが相乗効果を生み、並みのステルスゲームを遥かに上回っています。
不満あれこれ
まず、本作最大の不満はメインミッションが一本道で単調なことです。
場所によってはサブクエストを受注し、メインミッションと同時進行させることも可能です。しかし、明らかにサブクエストのほうが街中駆けずり回り色々なことをさせられる分楽しいという本末転倒な部分も見受けられました。
それに、ストーリーの進行具合によっては買い物が自由にできなかったり、武器を預けたり引き出したり出来ないこともストレスでした。
これは『メタルギアソリッド4』のように何時でもどこでも買い物やアイテムのやり取りが自由にできるようにするか、やはり舞台をある程度街で固定してくれないと不便でしかありません。
場所によっては非殺傷武器が欲しかったり、強力な火力の武器が欲しかったりするのに、武器の変更ができないため、常に手持ちの武器で攻略しなければならず、明らかに作りが雑です。
後、ロードの長さが地味に問題でした。
本作は死にゲースタイルで、頻繁にゲームオーバーになるため、ロードが長いことによるストレスの蓄積率がかなり高めです。
その他にも操作のレスポンスが悪く、スティックを倒した際の感度を最大まで上げてもまだ快適にはほど遠い操作性で終始ストレスになります。
ただ、ステルスゲームなためゴリゴリのシューターのような動作を要求されず、それほど攻略上は影響がないという点は不幸中の幸いです。
やり込み要素や次周への持ち越し要素が無いなどボリューム系の不満点もちらほらありますが、それらはもっとこのゲームを味わい尽くしたいのに味わえる絶対量が不足しているという不満です。
最後に
改善して欲しい点も少なくありませんが、短所より長所が大きく上回る、これまで自分がプレイしたステルスゲームの中でも上位に食い込む傑作でした。
デウスエクスシリーズ
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