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【スーファミ】ドラえもんらしさ激薄の横スクロールアクション |『ドラえもん のび太と妖精の国』| レビュー 感想 評価

プレイ動画

評価:55/100
作品情報
ジャンル アクション
発売日(日本国内) 1993年2月19日
開発(デベロッパー) 酒田SAS

ゲームの概要

 
この作品は、漫画(というよりアニメ版)『ドラえもん』を原作とする横スクロール型のアクションゲームです。
 
ドラえもんがお馴染みの街を歩き回るアドベンチャーパートと、横スクロール型のステージをクリアするアクションパートに別れています。
 
ドラえもんを題材とするゲームとしては、ただの完成度が低い横スクロールアクションにドラえもんっぽさをほんの少しだけ足したようなもので非常に薄味です。
 
ストーリーが本当に子供だましで薄っぺらいとか、ドラえもんの秘密道具はただのイベントアイテムでプレイヤーが自由に使えるわけではない不満など、長所より短所が目立つ残念な作品でした。
 

基本は『ロックマン』なドラえもん

 

このゲームは、ドラえもんではお馴染みの土管のある空き地やのび太たちが通う小学校、裏山などがある街中を探索し隠されたステージを発見していくアドベンチャーパートと、街中で発見したステージを攻略する横スクロールアクションパートの二つが交互するという構成です。
 
ゲームとしては『ロックマン』に似ており、ロックマンでは最初から選択可能なステージがこのゲームでは街中に隠されており、まずそれを発見する必要があるといったイメージです。
 

ロックマンと同じくセーブ機能はなく、続きから再開する場合はパスワードを用います

 
アクションステージ内には武器として使える秘密道具が隠しアイテムとして配置されているなど、ステージを隅々まで調べると攻略が楽になるという点もロックマンそっくりです。
 
最初はマリオのようなジャンプアクション主体のゲームと思いきや、途中で空気ピストルや空気砲が手に入ると途端にシューティングゲーム化し雰囲気が変わります。
 
注意点としては、街中のステージではボスは出現しませんが後半の舞台となる妖精の国ではボスが出現するため、事前に様々なステージに隠された武器(秘密道具)を回収しておかないと終盤の難易度が上がってしまうという問題が起こります。
 

妖精の国に行くともう街には戻れないため事前に回収しておかないと終盤のボス戦で苦戦する事態に陥ります。ただ、妖精の国で弾がホーミングする便利な武器が入手可能でボス戦はそれだけで何とかなってしまうので不要と言えば不要です

やる気があるのか無いのか不明な探索パート

 
まず、街の中で人々に聞き込み調査をし、怪しい場所を探していくというアドベンチャーパートですが出来は悪いです。
 
単にブラブラとそこら辺を歩いている住人に話しかけるだけで次から次に隠されたステージの場所が判明していくため、そもそも頭を使う余地がありません。
 
中にはステージを開放するために特定の秘密道具が必要になる箇所もあります。その場合はまず秘密道具を回収できるステージをクリアし、秘密道具を入手してからでないと新しいステージが解放できません。
 

例えば、鍵がかかった場所を開くのにどんな鍵でも解除できる“ゴマロック”という秘密道具が必要になるといった感じです

 
ただ、この秘密道具はドラえもんが勝手に使用してしまうためどの場所でどの秘密道具を使うのかプレイヤーが考える余地がなく達成感は皆無でした。せめて場所に応じて最適な秘密道具はどれかプレイヤーに選ばせるくらいのゲーム性がないとただの作業です。
 
のび太たちが住まう街をあちこち探検し隠されたステージを秘密道具で発見していくというアイデアは良いものの、やることがただ単にそこらを歩く人に片っ端から話しかけるだけなので実際は作業感しかありません。
 
全体的に出来の悪いアドベンチャーパートですが、目的地がマークされるマップをいつでも確認できるといった配慮や、重要な会話は効果音でそれとなく知らせてくれるなど、一応子供向けのゲームとして最低限の配慮があり次にどこに行けばいいのか分からなくなるといったことはありません。
 

 
特に、マップの作りが非常に丁寧で、すでにクリア済みのステージとまだクリアしていないステージをマークで教えてくれるなど、このマップのおかげで迷うことなくスムーズにプレイできます。
 

マリオやロックマンには遠く及ばない二流横スクロールアクション

 
街中を歩き回りステージを発見するアドベンチャーパートはオマケで、このゲームの中心はこの横スクロールアクションパートです。
 
しかし、操作性に難があり過ぎて動かしていて楽しいと感じるほどの完成度ではありません。
 
特に、慣性が非常に強めに設定されていることが大問題で、このせいでジャンプ時に空中で方向転換が行えず落下死が多発します。
 

慣性が強すぎてダッシュしながらジャンプすると空中で制御がまともにできずそのまま着地したい場所を通りすぎて落下死するということが多々ありました

 
一応、空中でBボタンを連打すると落下スピードが軽減されるという救済策は用意されているものの慣れないうちは無数の落下死を経験する羽目になります。
 
この慣性が強すぎる問題のせいでダッシュしながらジャンプすることが困難で、そのせいで常に落下場所を目視しながらゆっくり歩いてジャンプしなければならず、横スクロールアクションゲームとしてのスピード感が絶望的にありません。
 
しかも、このゲームはチェックポイントが一切なく途中で失敗すると常にステージの最初からやり直しになります。そのせいで強制スクロールのステージで終盤に落下死が多発するような難所があると一気に死にゲーと化し、一部ステージは10~20回ほどやり直しをさせられキツイ思いをしました。
 
敵の配置やステージの作りもかなり嫌らしく、ジャンプして落下する丁度のタイミングで敵が出現し集中が乱され着地に失敗したり、勢いよく飛んで着地する場所のすぐ横に落下する穴がありまた少し前のエリアに戻されたりと、アドベンチャーパートの簡単さや気配りに比べるとアクションパートはかなりの意地の悪さで苦労します。
 

ドラえもんっぽくないという最大の欠点

 
このゲーム最大の問題は横スクロールアクションゲームとして完成度が低いというよりドラえもん感が極端に薄いことです。
 
ドラえもんっぽさをゲームでどう表現するかより適当に作った横スクロールアクションゲームに記号としてドラえもんをくっつけただけといった感じでドラえもんのゲームをやっているという満足感はほぼありません。
 

ドラえもんなのに人間の頭蓋骨のオブジェがあるなど、何を考えてこんなステージを作ったのか理解不能な部分がいくつかありました

 
唯一、タケコプターを手に入れると街中を自由に空中移動できるようになるという一点のみドラえもんぽいと思える部分で、これ以外はただの完成度が低い横スクロールアクションゲームで動かせるのがドラえもんのキャラクターだけといったお粗末な出来です。
 

おわりに

 
クリアまで約2時間30分~3時間ほど。ボリュームは皆無で半日どころか一瞬で終わります。
 
人間の環境破壊が妖精の国に危機をもたらしドラえもんたちがそれを救うというストーリーも大長編ドラえもんと比べると子供だましの薄っぺらい内容で何一つ記憶に残りません。
 

藤子・F・不二雄は真剣なSFを志向する人で、こんな魂のないふざけたシナリオなんて絶対に書きません

 
街を探索してステージを発見していくアドベンチャーパートはただの作業で、肝心の横スクロールアクションパートは操作性が悪すぎて落下死ばかりのストレスゲーと、褒めるところがほとんどない残念なゲームでした。
 

逆に落下死が存在しない水中ステージはとんでもなく難易度が低く、落差が凄いです

 

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