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【海外ドラマ】打ち切りが妥当、超常現象サスペンス |『DEBRIS / デブリ シーズン1』| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:80/100
作品情報
放送期間 2021年3月~5月
話数 全13話
アメリカ
放送局 NBC

ドラマの概要

 
この作品は、太陽系に突如現れた大破した宇宙船から“デブリ”と呼ばれる物体が地球へ降り注ぐようになった世界を描くサスペンスドラマです。
 
ストーリーは、アメリカとイギリスのデブリ合同調査タスクフォース“オービタル”に所属するCIAのブライアンと、MI6のフィノラのコンビがデブリが関係する超常現象を調査していくという内容です。
 
すでにシーズン1で打ち切りが決定しており、しかも宇宙船・デブリともに何一つ秘密は解明されないまま全ての謎を放置して終わるため、ハッキリ言ってこのドラマを見ても特に意味はありません
 
大仰な設定の割に話は非常に地味かつ小さなもので、スケール観はさほどありません。
 
しかも、わざとつまらなく作っているかのように、会話はスローテンポで眠気を誘い、知りたい情報は最初から最後まで何も教えてくれないと、視聴者を楽しませることを放棄したようなドラマです。
 

シーズン1で打ち切りになるのも大納得なほど退屈です

 
男女のコンビが1話完結型で超常現象の謎を解明していくという構造としてはドラマ『X-ファイル』と似ていますが、『X-ファイル』から優れた点を全て抜いたような薄っぺらさです。
 
ただ、デブリが引き起こす人智を超えた超常現象のアイデアや、それをどう映像で見せるのかという部分には強いこだわりがあり、そこに興味があれば最低限の面白さはあります。
 

人間に興味が無い人たちが作った人間ドラマ

 
まず、最初にこのドラマの注意点を言うと、シーズン1で打ち切りが決まっていることからも明らかなようにまったく面白くありません
 
宇宙から降ってくる謎の物体デブリが引き起こす超常現象を極秘裏に調査していくという内容ですが、物語にスケール観はまったく無く、登場人物は全員眠そうに喋るだけで見ていると高確率で睡魔に襲われ、ストーリーも特定の回以外は一切盛り上がらず、どう見てもやる気がありません
 
シーズン1で打ち切りが決定していることを知らずに見始めましたが、もう1話と2話を見た時点で「これは打ち切られるだろう・・・」とほぼ確信出来るほどの退屈さです。
 
ヘタクソな人間が作っているから出来が悪いのではなく、あえて退屈さを追求しているとしか思えないほどの人工的な退屈さで、なぜこんなドラマが作られたのか見ていて謎でした。
 

まるで退屈さの実験をしているかのようなドラマです

 
世界中のデブリを調査しているオービタルという組織はディテールがスカスカで、こんな組織が本当に実在するようには一切見えず、しかも世間には太陽系に出現した宇宙船の謎は伏せられているという割には、デブリの超常現象を目撃した人間は完全放置しているという有り様で、脚本の仕事ぶりがテキトーにも程があります。
 
キャラクターは、主役のブライアンとフィノラは人間的な弱さや優しさが描かれるため最初は地味でも見続けると徐々に好きになれます。特に最初はCIAとMI6という異なる組織の人間として互いに警戒し合っていたのが、ある時に国や組織の隔たりを超えて歩み寄る瞬間があり、ここは静かな感動を覚える良い場面でした。ただ、それ以外の人物は誰も彼も存在感が希薄な者ばかりで主役二人をサポートしてくれません。
 
ストーリーも、デブリを巡る国際的な駆け引きのようなものがあるわけでもなく、まるで人間という種を観察・分析しているかのように、デブリと接触した人間の記憶や感情をデブリが拡張して超常現象を起こすという小さい話が多く、盛り上がりは特にありませんでした。
 
しかも、デブリに接触した人が抱える心の問題と超常現象が関わっており、その人の悩みを解決することで超常現象が止まるとか、デブリが起こす超常現象によって壊れかけていた家族の絆が再生するなど、デブリを用いたカウンセリングのような話が多いのに、脚本が雑すぎてこの部分のドラマが非常に薄っぺらく表面的でまるで深みがありません。
 
デブリを中心とする世界的・宇宙的なスケールの話をあえて避け、心に問題を抱える人間がデブリと接触することで望まず超常現象が起きるという小さい話にしているのに、その小さい話はまったくやる気がないと散々でした。
 
一応、アメリカのCIAやイギリスのMI6が互いの国の利権のために相手国を出し抜こうとするというサスペンス展開や、デブリを極秘に回収し情報を秘匿しようとするオービタルに対し、デブリの技術を解放しようとするインフラックスというテロ組織のような過激な集団も登場しますが、どれもこれも細部が手抜きで組織に対する説得力はほぼありません。
 
このドラマは、いたる所ツッコミどころのオンパレードかつ、視聴者を楽しませるサービス精神が皆無なので、そこに期待しても完全に無駄です。
 
真っ昼間から敵のアジトにたった4人で踏み込み、しかも主人公二人は武器がハンドガンだけというふざけた軽装備で、さらに敵と銃撃戦をした後にアジトから脱出したのに自分たちが映る監視映像を消去するためにマヌケにもまた敵のアジトに戻るという見るも無惨なトンデモ展開は衝撃でした。
 

超常現象一点集中ドラマ

 
このドラマ唯一の見所は、デブリがもたらす超常現象のアイデアやそれをどのような奇っ怪な映像で見せるのかという部分のみです。基本は、SFとして設定が興味深いデブリと、サスペンスとして映像的に面白いデブリがあります。
 
2次元の平面空間に閉じ込められた人間とコンタクトを試みるというアイデアや、マンガ版『風の谷のナウシカ』のような、デブリのせいで地球外の環境に瞬時に体が適応してしまい地球の通常の大気が毒となってしまうという設定や、並行世界を移動できるデブリを使いすぎて元の世界への帰り方が分からなくなるという恐怖展開をブラックな笑いで見せるセンスなど、特定のデブリが起こす超常現象の描き方は優れていました。
 
SF的に好きだったのはデブリによって周囲の環境ごと人体構造が変化してしまい、地球の大気が猛毒になってしまうというアイデアでした。これは数あるデブリの中でもどのような環境下で使うことを想定して作られたのかが具体的に分かるデブリで、それが意図せず作用してしまったため悲劇が起こるというSF的なひねりの加え方が秀逸でした。
 
サスペンス寄りのデブリでは、前後編になっている9話・10話の並行世界をスライド移動できるデブリがもたらすトリップ感は突出しており、他の退屈な回と比べると面白さが異常なほど浮いています。この前・後編の話だけ唯一脚本の出来の悪さがあまり気にならない回でした。
 

マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』で言うと、自分が敵スタンドから攻撃を受けている記憶ごと消される系のエピソードに似たスリルです

 
全体的に脚本の出来が悪いのでどの話もキレイに盛り上がりはしませんが、アイデアと映像だけでゴリ押し出来るほど超常現象に関する部分だけは気合いが入っており、これを見るだけでもある程度は満足できてしまいます。
 

最後に

 
繰り返しますが、このドラマはまったく面白くないのでよほど超常現象が好きでもない限りは見ても無駄です。勢いだけで進む『24』シリーズの脚本が丁寧な仕事に感じるほどの粗雑な脚本で、見るべきところは特にありません。
 
ただ、超常現象のアイデアや、それをどう見せるのかという映画レベルの映像表現を楽しむという一点のみでギリギリ見る価値がある作品でした。
 
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