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評価:80/100
ジャンル | ゾンビ アクション サバイバル |
発売日(日本国内) | Xbox360版:2006年9月28日 PS4版:2016年9月29日 |
開発(デベロッパー) | カプコン |
開発国 | 日本 |
ゲームエンジン | MT Framework |
- ゲームの概要
- Xbox360版と比べて
- ふざけているのにちゃっかりとロメロしているゾンビ設定
- 面白さの肝は『風来のシレン』(『ブレスオブファイアⅤ』でも可)+『アトリエ』シリーズ
- 不満あれこれ
- 最後に
- 余談
ゲームの概要
この作品は、コメディタッチなゾンビアクションゲーム『デッドライジング』シリーズの1作目で、Xbox360版のリマスターです。
ゾンビ映画では定番の舞台であるショッピングモール内の商品を武器やアイテムとして使用できるというアイデアを形にした力作でした。
周回プレイを前提とした難易度設定や、時間制限が設けられたメインストーリーの進行や、サブとなる生存者の救出活動など、リアルタイムに発生するイベントを管理する要素は非常に中毒性が強く一度ハマると病み付きになります。
ショッピングモールを舞台にゾンビゲームを作るというベタなコンセプトが良作に結実した非常に幸福なゲームでした。
Xbox360版と比べて

このゲームはXbox360版をクリア済みです。
元のオリジナル版と比べPS4版は
・解像度が向上し映像がくっきりした
・画面が明るくなり夜間も視界が良好
・フレームレートが向上し多少は操作が快適となった
・エリア移動時のロード時間が短縮した
・セーブスロットの数が増えた
など、様々な点が改善されています。
中でもゲーム性に関わる最も大きな変更点はXbox360版がセーブスロットが一つだけだったのがPS4版は複数スロットになった点です。
Xbox360版はセーブスロットが一つしかないため進行に詰まるともう一度最初からやり直さなくてはならず『風来のシレン』はじめローグライクゲームのような高難易度さが特徴でした。
それに比べ、失敗したら他のセーブデータからやり直せるようになるという救済措置が追加されたPS4版はかなり易しくなりました。
それ以外はカメラ撮影をする際にカメラのバッテリー交換が求められたXbox360版に対し、こちらは写真をひたすら取り放題なこと。これは写真自体それほど撮らないため大して影響もありません。
正直、こんなところをいじるなら銃を扱う際の極悪なボタン配置を改善して欲しかったです。
そもそも元となるXbox360版も完成度が高いというワケではなく、アイデアの面白さで一点突破を狙うようなゲームで、多少快適になった程度ではあまり体感で変わりはありません。
総じてXbox360版をやり込んでいるのであれば快適さは上がっているものの、新鮮さはほとんど感じられない程度でした。
ふざけているのにちゃっかりとロメロしているゾンビ設定

社会派の映画監督であるジョージ・A・ロメロ監督は、ゾンビそのものや大量にゾンビのいる世界にその時代の空気を風刺的に反映させるゾンビ映画のフォーマットを確立しました。
本作は、ショッピングモールが舞台という点で、ロメロ監督の映画『ゾンビ』(原題:ドーン・オブ・ザ・デッド)の影響が色濃く反映されています。
しかも表面上の舞台設定だけでなく、普段の欲望が極限状態で爆発するロメロゾンビ的なメッセージまでちゃっかり入っており、抜かりがありません。
例えば、スーパーの店長が憎い万引き犯を処刑しているなど、普段抑圧されている人間の感情が爆発する様がコミカルに描かれています。
これは同じカプコン作品でも、ゾンビをクリーチャーとしてしか扱っておらず、ゾンビのいる空間に意味を設定しないゾンビ愛の足りない『バイオハザード』シリーズよりもしっかりロメロゾンビしていると思います。
面白さの肝は『風来のシレン』(『ブレスオブファイアⅤ』でも可)+『アトリエ』シリーズ

このゲームは、一週目はゲームオーバーになることが前提のような作りでクリアまでは到底辿り着けません。
二週目三週目とレベルを持ち越し、繰り返しのプレイでゲームのコツを掴ませプレイヤーが成長することにより前は断念させられた困難な箇所を突破し先に進めるようになっていくという周回プレイベースな作りです。
このローグライク的なプレイヤーのゲームへの慣れを前提としたバランス設定と、(昔の)『アトリエ』シリーズのような期限付きの作業に追われ、作業内容に優先順位を設けて効率的に処理しなければならないというシミュレーションゲームに似た魅力をうまくハイブリッド出来ており、ハマると無類の中毒性があります。
最初はショッピングモールの広さに途方に暮れますが、周回プレイするうちにどこにどんな店があり強力な武器はどこで調達できるのかが自然と把握でき、俄然サクサク進められるようになるという、プレイヤーのゲームへの適応そのものをゲーム進行のキーとして組み込んでおり、自然とゲームが体に馴染んでいく感覚を味わえるのも快感です。
このようなマップを頭に叩き込む系のゲームが好きなので、非常に肌に合いました。一本道で二度と訪れない場所が多々あるよりも、同じ場所を何回も往復することでエリア同士の繋がりが見えるようになり、自然と近道を使いこなせるようになるとその場所に愛着が湧きます。
しかし、結局は限られた時間の中で正しい答え(タイムアタック的最短ルート)を見つけることが目標となってくるため、突き詰めると自由度がありそうで無い見せかけの自由さが露呈してくるのがややこの手のスタイルのゲームの問題点だと思います。
不満あれこれ

まず周回プレイがベースなのにも関わらずレベルのカンストがあっという間ですぐにダレだすことです。
これはカメラでスクープを撮影すると得られるPP(プレステージポイント、経験値)を溜めレベルを上げるという点に絡んでくるため、早い段階でカメラ撮影の意味が希薄なものになります。
あとは『シェンムー』の一作目のように時間がリアルタイムに流れるということのデメリットとして、次のイベントの開始時刻までの待ち時間が長いことです。プレイヤーが好きに時間を早送りできないため、次のイベントまで長時間待たされる羽目になり、周回プレイをすればするほどこの時間が辛くなります。
どれも元のXbox360版から根本的には何も変わりません。
最後に
ゲームとしては非常に多くの欠点を抱えたクセの強い作品です。
ただ、それら欠点を凌ぐほど中毒性が強いのも確かで最終的には長所が勝ります。
楽しそうなアイデアを思い付きそれをゲームにしたら本当に面白い作品になってしまうという当たり前のようで達成困難な挑戦を成功させた秀作です。
余談
セーブポイントが公衆トイレというアイデアは、広いデパートやモールで尿意を我慢してトイレを探し右往左往する感覚をトレースしているようで非常に感心させられました。
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