プレイ動画
評価:85/100
ジャンル | RPG |
発売日(日本国内) | 1995年3月11日 |
開発(デベロッパー) | スクウェア |
ゲームの概要
このゲームは、『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親である坂口博信と、『ドラゴンクエスト』シリーズのシナリオライターである堀井雄二、ドラクエのキャラクターデザインを担当する『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』でお馴染みの漫画家、鳥山明という豪華メンバーが関わるRPGです。
と言っても、ほとんど原案程度でガッツリ関わっているわけではありません
現代を起点とし原始時代・古代・中世・未来という5つの時代を行き来しながらラヴォスという謎の生命体の正体を探っていくというタイムトラベルを題材としたストーリーとなっています。
過去で特定の人物の先祖に影響を与えると子孫の人間性が変わったり、過去に干渉することで未来の地形が変化したりなど、タイムトラベルの基本的な楽しさがギュッと詰まっています
開発がFFを手掛けるスクウェアなためドラクエよりもFFシリーズの感触に近く、魔法の名前(ケアル、ヘイスト、サンダーなど)はほぼFFそのもので、バトルもATBゲージを用いるアクティブ・タイム・バトルと、FFシリーズをプレイしたことがあればすんなりと馴染めます。
ただ、なぜかブリザドやブリザガなど氷系の魔法だけアイス、アイスガとなっており、多少違和感もあります
スーファミのRPGとしては破格なまでの豪華さを誇り、バトルは画面が切り替わらないシームレスバトルで、ほぼ全てのイベントが手抜き無しで丁寧に作られ、各時代ごとに記憶に残る専用のフィールド音楽が用意されるなど、FFシリーズすら凌駕するほどの力の入れ具合です。
ただ、ゲーム性は非常に浅く、バトルはテンポが悪く単調で、RPGなのに自由な成長要素は皆無。過去・現在・未来を自由に行き来できる割にはひたすら一本道のストーリーで窮屈。それに、FFやドラクエ本編に比べるとボリュームが少な目でRPGとしてはやや小粒感もあります。
良くも悪くもストーリーの面白さに振り切っており、RPGとして見た場合は凡作レベルでしかありません
全ての時代が等しく主役となるタイムトラベルの魅力
このゲーム最大の魅力は何と言ってもタイムトラベルの楽しさを詰め込んだストーリーです。それを見事に成立させているのが原始時代・古代・中世など各時代そのものをキャラクター化させてしまうバランス感覚です。
このゲームは冒頭からラストまで各時代で起こる出来事がパズルのような構造となっており、ある時代に登場する人物が実は別の時代で起こる重要な出来事と密接に関わっていたり、とある人物が実は誰々の先祖だったりと、各時代が独立せず互いを補完し合う関係となっています。そのため、RPGによくある序盤で登場した人物や場所が終盤では影が薄くなっているといったことがなく、ストーリーが進めば進むほど各時代の繋がりがより鮮明となり、どの時代にも愛着が持てる工夫が施されています。
それに加え、各時代ごとにその時代を象徴するようなキャラクター(原始時代なら原始人で怪力のエイラ、中世なら魔王と勇者ということで凄腕の剣士であるカエル、テクノロジーが発達した未来なら機械であるロボなど)が仲間になり、どの時代も各キャラの大切な故郷(ホーム)であり続け、存在感の無い時代というものが一つも存在しません。
これは続編である『クロノクロス』ではまったく出来ていないことであり、キャラクターの魅力なら各時代と関連付けられている『クロノトリガー』のほうが圧倒的に上です
謎の存在ラヴォスを中心にどの時代も等しく主役となるよう丁寧に役割分担がされ、かつそれらを巧みに相互作用させるという試みが大成功しており、一度プレイするとどの時代も記憶に深く刻まれます。
ただ、ゲームのボリュームが控え目なためそこまで壮大なスケールでないことが唯一惜しいところです
スーファミRPGとしてはぶっ飛んだ豪華さ&丁寧さ
本作は、スーファミのRPGとしては異常なまでの豪華さで、大作であるFFすら軽く凌駕するほどのこだわりが散りばめられており、間違いなくスーファミ世代ではトップクラスに手間がかかったRPGの一本です。
まず、バトルが通常のエンカウントではなくシンボルエンカウント(敵シンボルと接触するとバトル)とゾーンエンカウント(特定の場所でバトルが発生)で、しかも画面が切り替わらずそのままバトルに移行するシームレスバトルとなっています。
これの何が凄いかというと、敵シンボル(モンスター)が環境演出の役割を担 っていることと、バトルが発生する流れまで表現できていることです。
例えば、原始時代なら恐竜がフィールド上を闊歩しているとか、未来ならパトロールロボットが施設のあちこちをライトで照らしながら侵入者を捜しているなど、敵シンボルがバトルだけでなくしっかりその場所の雰囲気を強化する働きもしており、シンボルエンカウントとしては理想的な作りでした。
さらに、特定の場所で強制的にバトルが発生するゾーンエンカウントも、例えば洞窟の中で突然天井からコウモリが襲いかかってくるとか、下水道で下水の中から敵が襲撃してくるなど、画面が切り替わる通常のエンカウントだと省略されてしまう敵に奇襲される流れそのものも表現可能で、通常のRPGよりバトル一戦一戦がドラマチックになっています。
このこだわり具合は凄まじく、全戦闘に何かしらの演出が施されており、スーファミどころか他のRPGでここまで徹底しているものは見たことがありません。
ただ、問題はあまりにバトル一つ一つを丁寧に作りすぎているせいで、全ての戦闘が強制イベント的になっており、例えばダンジョンで低確率でエンカウントする強力な敵と遭遇してしまいピンチになるといったことは一切起こらず、正直単調さも強く感じます。
ドラクエで言うとメタルスライムやはぐれメタルとエンカウントするといったラッキーもなく、ひたすら同じ場所で似たような敵との戦闘が続くため実際はかなり退屈です
全体的に豪華さに振り切った部分はテンポが悪くなっていたり意外性がなく単調さが気になったりとゲーム的な面白さを殺してもおり、手放しで褒められるような内容ではありません。
パッと見は凄いが、中身はあまりに低レベルなバトル
このゲーム最大の問題点はバトルが単調でまったく面白くないことです。
久しぶりに再プレイしましたが、クリアするまでバトルを楽しいと感じることは一度たりともありませんでした。
移動状態からバトルに移行する際に画面が切り替わらないシームレスバトルで、しかも攻撃や技は全て固有のアニメーションが用意されており、なおかつ仲間同士で二人技や三人技など協力技があるなど非常に豪華な内容ですが、とにかくテンポが最悪で敵のバリエーションも少なく、バトルは早々に飽きます。
豪華さに振り切った部分は総じてテンポが悪いと前述しましたが、バトルはその最たる例で、FFと同じATBゲージを用いるアクティブ・タイム・バトルは攻撃アニメーションがノロノロ、モタモタしておりテンポが極悪でストレスしか溜まりませんでした。
毎回長ったらしい攻撃アニメーションが終わるのをひたすら待たなくてはならず、何のためにリアルタイムに時間が流れるアクティブ・タイム・バトルにしたのか意味が分かりません。
RPGの核である自由な成長要素もなくただ単にレベルや技を機械的に覚えるだけで、バフ・デバフといった補助系の魔法の存在感も弱いと、バトルは非常に底が浅くハッキリ言ってただのゴミです。
あまりにバトルが退屈すぎるため、このゲームは1時間程度プレイしただけで眠くなり、長時間連続プレイが出来ませんでした。
リアルタイムにプレイした時はスーファミの中でも最高レベルの技術力に感動しテンポの悪さは気になりませんでしたが、今プレイするとこの極悪なテンポのバトルは耐えられません。
この退屈極まりないバトルがゲームの足を引っ張っています。バトルの楽しさや奥深さ、成長要素の充実度ではFFやドラクエの足下にも及びません
おわりに
クリアまで約18時間ほど。プレイ時間だけ見るとそこそこボリュームがありそうにも見えますが、実際はバトルのテンポが悪すぎてプレイ時間を水増ししているのではないかとすら思うほど間延びし放題で、体感ではもっと短めに感じます。
鳥山明がキャラデザインということもありキャラクターは全員可愛らしく嫌いなキャラなど一人もいない理想的なバランスで、タイムトラベルを題材とするストーリーもスーファミのRPGの中ではトップクラスに完成度が高く文句なし。音楽もハイレベルで雰囲気は極めて良好、グラフィックもスーファミのRPGでは最高水準、進行状況に応じてセーブデータに細かくサブタイトルが付くことや、つよくてニューゲームという1周目のレベルやアイテムを持ち越して2周目が可能なやり込み要素が完備されているなど、豪華さにおいて右に出るものはないと思うほどの出来映えです。
しかし、このゲームは良くも悪くも完全にストーリーメインで、バトルは単なるオマケレベルでしかなく、プレイの自由度もありそうであまり無くほぼ一本道と、この点ではFFやドラクエには見劣りします。
終盤はシャイニングという最強の魔法を放ち続けるだけの退屈な虚無プレイになります。しかもラストダンジョンが死ぬほど退屈でさっさと終わって欲しいという不満しかありませんでした
一本のRPGとしてはどのイベントも細部まで手抜きがなく非常に丁寧な仕上がりですが、バトルのテンポは極悪と、長所と短所がハッキリ別れた一作です。
RPGにストーリーを求めるか、バトルや成長要素を求めるかで好みが割れると思います
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