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【PS4】長きに渡る迷走を経てついに至高の現代戦へと到達 |『コール オブ デューティ モダンウォーフェア』(※キャンペーンモードのみ)| レビュー 感想 評価

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トレーラー

評価:100/100
作品情報
ジャンル FPS
発売日(日本国内) 2019年10月25日
開発(デベロッパー) Infinity Ward
開発国 アメリカ

ゲームの概要

 
このゲームは2007年に発売された『コールオブデューティ4 モダンウォーフェア』を始めとする現代戦を描くモダンウォーフェアシリーズのリブート作品です。
 
過去シリーズでダントツどころか、全FPSの中でも銃を扱う快感が突出して高く、銃撃の迫力を味わえるだけで大興奮でした。
 
ただ、キャンペーンモードは元のモダンウォーフェアシリーズに比べ、スケールがこぢんまりしており決定的な盛り上がりに欠けます。それに、撃ち合いの楽しさは過去最高なのにも関わらず、それを殺すような無駄な強制イベントや長めのステルスプレイが煩わしいステージも多く、長所を生かし切れていません。
 
それでも、操作の快感と銃撃の迫力、映画の『ゼロダークサーティ』や『ボーダーライン』など傑作映画から影響を受けたハイセンスな特殊部隊描写を堪能でき満足度は圧倒的です。
 

復活のモダンウォーフェアシリーズ

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本作は元のモダンウォーフェアシリーズと同様に対テロ戦争が題材なだけでなく、テロリストと民間人は一目で区別が付かないという厄介な問題や、テロリストが民間人を盾にする“人間の盾”のシチュエーションを盛り込むなど、テロや軍事行動で民間人が巻き添えを喰らうコラテラルダメージ要素も盛り込まれています。
 
そのため最終的に第三次世界大戦のようなものが勃発する元のモダンウォーフェアシリーズに比べ、テロリストが民間人に紛れている場合は相手がテロリストなのか非武装の民間人なのか見極めてから発砲しなければならないといった良くも悪くも地味な方向性のゲームです。
 
元のシリーズと同一の有名なキャラクターが複数登場したり、設定やミッション内容に酷似するものが多かったりと過去シリーズをプレイしたユーザー向けのファンサービスが多量に含まれていますが、基本的な設定や物語部分は全て新規で作られており、この作品から始めてもなんら問題ありません。
 

これまでプレイした全FPSを過去にしてしまう銃撃の快感

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このゲームの最大の魅力はなんと言っても銃器の取り扱い動作の快感です。
 
発砲の際に重みを感じさせる心地よい反動や、リロード時にマガジンを銃にしっかり押し込んでいるという手応え、一部の銃でリロードする際に残弾が残るマガジンを捨てずに回収するという気の効いた目配せや、サイトをのぞき込んだまま敵から照準を外さずリロードが可能という細部のこだわりなど、これほど銃器の取り扱いに美意識を感じさせるゲームは初めてです。
 
設定上特殊部隊が主役というだけでなく、銃の扱いに長けたプロならどのように銃器を使いこなすのかという説得力を生む戦略が細部まで行き届いており、自分がこれまでプレイしたあらゆるFPSの中でも銃器描写からもたらされる感動がダントツでした。
 
しかも、銃を扱う快感を極限まで磨き抜いただけでなく、遮蔽物に隠れて撃ち合うカバーアクションにマウントという銃を固定して射撃する要素が追加されこれまでのシリーズからより進化を遂げています。
 
遮蔽物に隠れた状態で銃をマウントすると射撃の反動で銃身が浮き上がるのを抑えられるため遠くの敵を狙う際も照準がブレません。そのため遠距離の敵や、高所に配置されるスナイパーやRPG(ロケットランチャー)を撃ってくる厄介な敵などを排除する際には重宝します。
 
このカバーアクションに銃を固定し射撃の反動を軽減するマウントを追加したことで、撃ち合う際に通常の射撃をするか固定して精密な射撃をするのか選択肢が生まれ銃撃戦を繰り返しても飽き辛くなりました。
 
全体的に銃の取り扱いに関するこだわりは素晴らしく、しかもリアリティとゲームとしての面白味のバランスの置き所も絶妙で、プレイしていてその快適なレスポンスと磨き抜かれた銃さばきの美しさに心底魅了されました。
 
ただ、登場する銃器の種類があまりにも少なすぎて似たような銃ばかり使わされるという点はやや不満が残ります。
 
※無料の『コールオブデューティ ウォーゾーン』と操作性はまったく同じなので、体験版代わりにそちらを先にプレイするのがオススメです
 

ようやく自国のために戦えるSAS

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本作のストーリーは対テロ戦争が主眼で、ロシア軍から奪われた化学兵器の行方を追いイギリス陸軍の特殊部隊であるSASとアメリカのCIAが協力し、犯人と目される中東のテロ組織アル・カターラを追うという内容です。
 
今作をプレイしてまず一安心だったのがアル・カターラのテロの標的がイギリスのロンドンであること。元のモダンウォーフェアはイギリスの特殊部隊が主役なのにテロの標的はアメリカで、なぜかイギリス軍人がアメリカをテロから守るために命がけで戦うという珍妙なストーリーでした。それがプライスたちイギリスの特殊部隊員が自国をテロから守るために戦うという真っ当な形式になり、違和感はほぼ無くなりました。
 
ただ、イギリスが話の中心になったのは好ましいのですが、問題はストーリーそのものが元のモダンウォーフェアシリーズに比べるとかなりこぢんまりとしておりスケール感が大幅に後退したことです。
 
それに、ロシア軍が極秘に製造していた化学兵器が盗まれその行方を追うという話の本筋も途中から盗まれた化学兵器自体がほったらかしになるなど、話し運びがずさん過ぎてあまり乗れませんでした。
 
まず、化学兵器が盗まれたのにそれが民間人へのテロに利用されるのではないかという一番最初に懸念される危機に対して話題が触れられないのが不自然です。この化学兵器は誰によって盗まれ、それはなんの目的のためで、どこに消えたのかという謎に対して誰も仮説を唱えず、本来はミステリーの種明かしのようにならないとおかしい真相がうまく機能していません。
 
テロリストのリーダーのウルフや、明確な悪役であるロシア軍のバルコフも元のモダンウォーフェアに登場するザカエフに比べると貫禄不足で小者にしか見えず。
 
しかも主人公を一人ではなく複数に設定してしまったことでそれぞれ因縁のある人物同士の相関関係がぐちゃぐちゃでまとまりがなく、元のモダンウォーフェアのプライスとザカエフのように、宿敵と対峙しても大して盛り上がりもしません。
 

銃器へのこだわりの半分以下の情熱しか費やされていないミッション

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このゲームで最も不満だったのはキャンペーンモードのミッション内容の作りの甘さでした。
 
レンガを運ばされるイベントや、何の面白味もないヘリに爆弾をしかけるステルスっぽい雰囲気だけのイベントなど、なぜこんな粗雑なものが作られたのか理解に苦しむような箇所が多数あり全体的にアイデアがブラッシュアップ不足でした。
 
ロシア軍の基地を襲撃するステージが3つもあったり、狭い場所でマシンガンの掃射を遮蔽物に隠れながら進むという似た構造のエリアが被っていたりと、全体的に同じようなシチュエーションで戦闘する回数が多くストーリーを把握しきれていない初見時は退屈でした。
 
このゲームは登場する銃器の種類が限られているため、バルコフが雇った傭兵とテロリストグループと正規のロシア軍がほとんど同じ武器を使用しており、始めてプレイする際は一体どこの勢力と戦っているのか高確率で混乱します。今誰と戦っているかもロクに把握できないようなステージが初見で楽しいわけもなく、真の魅力が分かるのはストーリーの繋がりが明確に見える2周目からです。
 
そんな中、ロンドン北部にあるテロリストのアジトであるアパートに奇襲をかけるというシチュエーションは飛び抜けて好きでした。床面積が異常なまでに狭いロンドンの住宅事情が反映され、それが逆に建物内で身動きができないという緊張を生む最高のロケーションに仕上がっており、ここは過去のコールオブデューティシリーズの中でもベスト3に入るほど好きです。
 
それ以外はアメリカ大使館が襲撃され暴徒が大使館内に雪崩れ込んでくるというシチュエーションが良かったくらいで、銃撃戦の圧倒的な快感のわりにどのステージもろくに印象に残りません。
 
元のモダンウォーフェアではTV局だった場所が病院になっているのに別段進化も感じられないなど、過去のモダンウォーフェアシリーズのほうが遙かに印象的なシチュエーションやロケーションが豊富だったので、ここは大幅に後退しているなと思います。
 

最後に

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クリア後、約12時間かけてプラチナトロフィー獲得。CoDシリーズでは異例のマルチプレイをせずともキャンペーンモードのみでプラチナトロフィーを獲得できるというありがたい仕様。そのためキャンペーンモードだけでもかなりの時間遊べます。
キャンペーンモードはクリアまで約6~7時間ほど。ボリュームは似たジャンルと比べ少なくも多くもない無難な量といったところです。
 
ストーリーやミッション内容は不満しかありませんが、銃を扱う快感で全て帳消しにしてもいいと思える程度で長所が圧倒的に勝ります。
 
とにもかくにも銃を撃つというシューティングゲームの基本中の基本動作を極限まで磨き上げており、その到達度は感動すら覚えるほどでした。コールオブデューティシリーズ最高傑作にして、自分がこれまでプレイした全FPSの中でもこのゲームが一番好きです。
 

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