著者 | 宮坂昌之 |
出版日 | 2020年11月19日 |
難易度 | 難しい |
オススメ度 | - |
リンク
本の概要
この本は、現役の免疫学者である著者が、免疫学の観点から新型コロナウイルスについて解説するブルーバックスの科学本です。中身はブルーバックスらしい手加減のない難解さで、気合いを入れて挑まないと一読するだけでも困難な激ムズな内容となっています。
その代わり、本に書かれている情報は応用範囲の広い免疫学の基礎の話が大半を占め、新型コロナ関連の最新情報がいくら更新されても内容が古くなり難いという大きな利点があります。
これを読むだけで新型コロナ関連のニュースを読む際の理解力が飛躍的に向上するため、文句なしにオススメの一冊です。
免疫学で新型コロナの正体に迫る
この本は、免疫学の専門家が執筆しているだけに、人間の免疫(ウイルスに対する体の防衛機構)の仕組みと、新型コロナが体内に侵入した際にウイルスと免疫がどのような攻防を繰り広げるのかが科学的な視点で語られます。
免疫学的なアプローチで新型コロナに迫る本なので、具体的なウイルス対策方法が説明される本ではありません
なぜウイルスは次から次に人間を嘲 笑い翻弄 するかのように変異を繰り返すのか、新型コロナは人間の免疫に対しどれくらい巧妙な手口で自身の存在を隠蔽し感染後もしばらく潜伏状態を維持するのか、そしてあっさり回復する人に対し、重症化してしまう人の体内では免疫がどのような反応をしているのかといった、新型コロナの持つ厄介な性質が一通り学べ、非常に有意義な内容でした。
ただ、専門家が専門知識を駆使し説明しているため、とにかく難解で体力を消耗し、自分も専門用語の羅列に何度も心が折れかけました。
一回目は辛くても二回目読み直すと不思議と内容がスラスラ入ってくるため、一回目は専門用語に体を慣らすつもりで読むのがオススメです
特に著者が免疫学者ということもあり、自身の専門分野である免疫学に関する説明は容赦がなく、抜きんでて難解です。ただ、免疫以外の部分はそれほど専門用語が登場しないため比較的読みやすく、最初から最後まで難解さが徹底しているワケではありません。
この本で最も為 になるのは、新型コロナに対する小手先の情報より、免疫学に関する重要な基礎知識でした。
ウイルスに対する防衛機構である免疫を学べば、別段新型コロナが別のウイルスに変わったところでウイルスと免疫の関係はほぼ変わらず、一度この部分を頭に叩き込んでしまうと免疫の働きがイメージできるようになります。
確かに新型コロナはまだ全貌が把握できず謎だらけで、判明している特性だけ並べても厄介な性質で非常に手強いウイルスなものの、別段これまで人類に猛威を振るってきたウイルスから逸脱するような未知のウイルスというワケでもないということがこの本を読むことで漠然と理解できました。
本の冒頭で新型コロナに対して正しい知識を知れば無闇に怖がることはないはずと書かれており、最後まで読むと本当にその通りだなと納得できます。
新型コロナが手強いと言っても対処可能な手強さなのか、人類が為す術もない手強さなのか、相手の脅威を正確に知るだけでも心に余裕が生まれ、困難な時期にはそのゆとりこそが何よりも重要だと思います。
最後に
繰り返しになりますが、この本は現実的にどのようなウイルス対策が必要かという内容ではなく、あくまで免疫学的にウイルスを説明し、新型コロナは他のウイルスとどこが異なるのか、そして体に侵入した新型コロナに対し免疫がどのような反応をするのかという免疫の働きを学ぶことが主眼です。
実際、この本を読む前と後では驚くほど新型コロナ関連のニュースへの理解度が変わり、なぜそうなるのかというニュースの背景もある程度想像できるようになりました。難解で辛くても最後まで読んで良かったと思います。
正しい知識とは何よりも強力な武器であることが学べる有意義な一冊でした。
リンク