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映像化が成功しないカオスシリーズの呪い [アニメ]『CHAOS;CHILD(カオス チャイルド)』 〈レビュー・感想〉

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PV

評価:55/100
作品情報
放送期間 2017年1月~3月
話数 本編全12話+TV未放映のサイレントスカイ編
アニメ制作会社 SILVER LINK.

アニメの概要

 
 このアニメは、5pb(現 MAGES.)制作のアドベンチャーゲームである『カオスチャイルド』を原作としたアニメです。
 
 『シュタインズゲート』や『ロボティクスノーツ』などの科学アドベンチャーシリーズの一作目である『カオスヘッド』の続編でもあります。
 
 アニメ版は、原作ゲームの展開をただなぞるだけのダイジェストにも関わらず、あらゆる美点を殺し尽くすような改悪要素で埋め尽くされた駄作でした。
 
 映像センスが皆無な乱暴な演出に、シリーズ構成と脚本がずさん過ぎて基本の内容すら理解できないトンデモ作品です。
 

原作への愛情はゼロ

 
 この作品は、結論から言うと原作ゲームの映像化としてはあまりにも出来が悪く、唖然とさせられました。
 
 冒頭の0話は前作『カオスヘッド』の内容を軽く振り返る回ですが、ここで描かれる寒気を覚えるほどダサイ「その目誰の目」のシュプレヒコールに衝撃を受けます。
 
 「その目誰の目」コールは原作のゲームとまったくイントネーションが異なり、多分このアニメを作っているスタッフは『カオスヘッド』をきちんとプレイしていないのだと思います。
 

 
 このように原作からの改変がことごとく的外れなものだらけで、見ていて頭が痛くなりました。
 

ガタガタのシリーズ構成と各話脚本がもたらす恐怖体験

 
 本作は監督自らがシリーズ構成と全話の脚本を担当していますが、ここの出来の悪さが常軌を逸しており、ただ単に話を見続けるだけで苦痛でした。これほどまでに壊滅的な出来になるならプロのシナリオライターに任せたほうが絶対にマシだと思います。
 
 シロウトが思いつきで書いたのかと思うほど話の筋がぐちゃぐちゃで、今何をやっていて話がどこに向かっているのか頻繁に見失うばかりでまったく集中できません。
 
 もはや実写映画版の『デビルマン』を思い出すほど、油断しているとあっという間に前後の流れがぶつ切られ迷子になります。
 
 構成が酷すぎるのに加え、本来なら互いに密接な関係にあり分断できないはずの設定を平気で片方だけ削ぎ落とすなど、無茶苦茶な改悪もされています。そのため原作のゲームをやっていればいるほどアニメ版は何をどうしたいのかさっぱり意図が掴めません。
 
 前提となる設定をほぼ説明しないまま唐突に何か深刻な事態が起こるのでもはやヘタなコメディにしか見えず。
 
 人が猟奇的に殺されるたび雑な脚本と不器用な演出のせいで笑いが漏れ、細やかな描写の積み重ねと巧みな映像テクニック、演出のリズム感が要求されるホラーとしてはまったく成立していません。
 
 重苦しさを画面で語らず登場人物にわぁわぁぎゃあぎゃあ泣きわめかせるため、やかましいだけの下品なホラーに成り下がっており本当に苦痛でした。登場人物の悲痛な想いは見る者が想像し読み取るもので、押し付けるものではありません。
 
 本作を見ると、ホラーとコメディというジャンルが紙一重で、少しでも間違えるとパロディになってしまうのが良く分かります。
 
 それに、このアニメ版は序盤から後々重要となるニュージェネの再来事件の被害者のエピソードを飛ばし、さらにあらゆる細かい伏線までも削られているため、中盤くらいからアニメオリジナル展開でも始まるのかと勘違いしました。
 
 しかし、なぜか終盤に突入するとそのまま説明不足と伏線無しの状態のまま原作ゲームとほぼ同じ展開になり、案の定グダグダのまま終わるため、なんのこっちゃ分からずポカンとさせられるばかりでした。
 
 こんなことになるのはもう最初の一話の段階で必要な伏線を抜いてしまったことで簡単に予想できます。
 
 まるで目の前にある丸見えの落とし穴に向かって緩やかに歩を進め、直前で避けるのかと思ったらそのままただ穴に落っこちるのを延々と1クールかけて見せられただけのようで、気味が悪いです。
 
 見終わった後は、一話の時点でもうダメと分かり切っている話を延々十二話かけてやはり全然ダメだったということを確認しただけの徒労感しか残りませんでした
 

力士シールのデザイン変更に象徴されるユーモアセンスの後退

 
 科学アドベンチャーシリーズは、ゲームオリジナル設定だけでなく、虚実を曖昧とさせるため現実にも存在するアイテムを混ぜ込むのが特徴ですが、『カオスチャイルド』はこれが力士シールというキーアイテムに設定されています。
 
 しかし、これがアニメ版ではデザインが改悪されておりガッカリでした。
 
 

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原作ゲーム版の力士シール
 この一見マヌケでどこか微笑ましさすら感じさせるシールが実は恐ろしいものというギャップが魅力だったのに、アニメ版は最初からおっかないデザインなのでギャップが生まれません。
 
 力士シール以外も、猟奇事件描写がヘタ過ぎてギャグみたいになっている上に、逆に原作で豊富にあったコミカルな部分はごっそり削られており、科学アドベンチャーシリーズ特有の尖ったユーモアが薄まりあべこべでした。
 
 原作のゲーム版は『ソードアート・オンライン』のキリト役でお馴染みの声優の松岡禎丞さんがハイテンションでコミカルな演技を披露し、何カ所か声を出して笑ってしまいました。それなのに、アニメ版は主人公が堅物キャラ過ぎてほとんど存在感がありません。
 
 

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 アニメ版の『エロマンガ先生』も松岡さんの演技力のおかげで一話で爆笑させられたので、多分ラブコメの主人公を演じさせたら松岡さんは日本でもトップクラスの実力があるのに、妄想狂の主人公に妄想させないというアニメ版のスタンスは宝の持ち腐れだと思います。
 
 松岡さんがいるのであればホラーとユーモアを半々くらいのバランスにしたほうがより見やすかったのに、アニメ版はやたら不機嫌で怒っているようなシーンばかりでちっとも主人公が印象に残りません。
 

最後に

 
 押さえるべき勘所を外しまくり、脚本も無残にぶっ壊れ、尺も足りず、原作とほぼ同じ展開にも関わらず受ける印象が天地ほど異なる原作ゲームの劣化コピーにすらなっていない失敗作。
 
 何一つ面白味がないのに無駄にネタバレするだけなので、絶対に原作ゲームをプレイする前に見てはいけない駄作中の駄作です。
 

原作ゲーム版

 
 
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