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【PS4】サバイバルホラーの始まりにして究極 |『バイオハザード HDリマスター』| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:95/100
作品情報
ジャンル サバイバルホラー
発売日 2002年3月22日(GC版)
2014年11月27日(HDリマスター版)
開発(デベロッパー) カプコン
開発国 日本

ゲームの概要

 
このゲームは、初代PSで発売された『バイオハザード』1作目をリメイクしたGC(ゲームキューブ)版を元とするHDリマスター版です。
 
元のゲームキューブ版は未プレイで、リメイク版は今作が初プレイなので、HDリマスター版というよりもリメイク版そのものに対する感想です。
 
初代PSにはアナログスティックが標準搭載されていなかったため、十字キーで操作するラジコンのような特殊な操作方式を採用しており、TPSとなった4以降の『バイオハザード』シリーズとは別物の操作感覚のゲームとなっています。
 
このリマスター版では、十字キーで操作する従来の方式と、アナログスティックで移動する十字キー操作よりは素早い動きが可能な新方式の二つのどちらか好きなタイプの選択が可能です。
 
初代PSのオリジナル版からより恐怖と探索心を刺激するようにリファインされた洋館と、死体を焼却する必要に迫られるという魅力的な新要素の追加でオリジナル版の面白さを損なうどころかオリジナル超えの偉業を達成した大傑作リメイクでした。
 
オリジナル版のサバイバルホラーとして優れていた箇所をより伸ばして上げるというお手本のようなリメイクで文句ありません。
 

リノベーションで新生を果たした洋館

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ゲームのリメイク版は、そこそこの割合でオリジナル版にあった「凄いゲームを作ってやる!」という、その時代の作り手の熱量がごっそり消失し、無味乾燥な今風なグラフィックとシステムに差し代っただけというケースが多くあまり良い印象がありません。
 
そのため恥ずかしながら本作もずっとスルーしていましたが、しかしいざプレイするとその判断は誤りだったと反省。
 
元々圧倒的な完成度だったオリジナル版の長所を的確に伸ばすような改良がなされており、そのツボを外さないバランス感覚はさすが初代のディレクターだった三上真司さんがそのまま続投しているだけのことはあるなと大納得な仕上がりです。
 
アイテム取得の快楽性を極限まで強化する消費アイテムの絶妙な入手量の調節。
 
メアリーセレスト号感が漂う、時間の流れが静止し、現実から隔離されたような不気味で静謐せいひつな空間に屍者が蠢いているという、2以降ではまったく見掛けなくなった舞台演出の妙
 
それらオリジナル版の魅力はそのままあるいは強化され、そこに死体の焼却システムや、所持していれば自動で攻撃を防いでくれるディフェンスアイテムの導入という改良が加えられ、なんとも贅沢な仕上がり具合で心底惚れ惚れします。
 

この得体の知れない建物を一歩一歩調査していく『バイオハザード』の醍醐味が2以降は完全に消え失せました。アンブレラとかゾンビとかキャラクターとかラクーンシティはどうでもよくて、不気味な建物を調査していく過程で隠された謎が明らかになっていく部分をシリーズの核として引き継いで欲しかったです

 
オリジナル版からの改良点の中でも特に感心させられたのは頭部を吹き飛ばすか、死体を焼却せずそのまま放置するとクリムゾンヘッド(移動速度と攻撃力が強化されたゾンビ)化するという新要素と絡めた洋館内の新ルートの追加部分です。
 
オリジナル版と比べ目的の場所に移動する際に複数のルートから好きに選べるようになったことで、どのルート上の敵を排除するのか、どのルート上の敵は放置するのか、より熟考を求められるようになりました。
 
意味もなくゾンビを倒してしまうと後半クリムゾンヘッド化して復活してくるため、目の前の敵を倒していいのかどうかすら悩まされることとなり、よりプレイに判断力を求められます。
 
本作はオリジナル版よりもプレイヤーの思考を促がし続ける要素が大幅に強化される様なゲームデザインになっており、どんなアイテムを持ち歩くか、どのルートを通ると最短で目的地に辿り着くのか、クリムゾンヘッド対策を考えつつゾンビをどれくらい倒すか、もしくは戦わず放置するのかと、プレイ中常に二手、三手先の対策を考え頭がフル回転し続けるという心地良い負荷が持続してくれます。
 

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このロケットランチャーはイマイチ、やはりロケランは肩で担いで欲しい

洋館以外は変わり映えせず

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リファインされた洋館は大変素晴らしいのですが、逆に洋館以外の場所の単調さが相対的に浮き上がってしまったのはやや残念でした。
 
無限ロケットランチャーやその他やり込み要素のため10周近くプレイしましたが、洋館は何度周回プレイしても飽き辛いマップのため、それほど作業感がありません。
 
しかし、それ以外の場所は割と一本道でルート選択を選ぶ楽しさがないため、ひたすら長い距離を歩かされるだけで少々かったるいです。
 
洋館以外の場所はゾンビを倒すにしてもアイテムさえ回収してしまえば二度とその場所には足を踏み入れない場所がほとんどなので、クリムゾンヘッド対策などする必要もなく葛藤も生じません。
 
クリムゾンヘッド対策をベースに再構築された洋館と、オリジナル版のエッセンスそのままの他の場所格差が生じてしまっており、オリジナル版は別館も中庭も研究所も楽しかったものの、あまりにも洋館だけ豪華にライトアップされすぎたため、それにより生じた濃い影に隠れてしまった感じです。
 
後、オリジナル版に比べ新マップが追加されたことの功罪でどうしてもクリアまでのワンプレイの時間が移動時間分延びしてしまうため、唯一テンポの良さだけはオリジナル版のほうが上かもしれません。
 

最後に

 
オリジナル版で辿った線を再びなぞるノスタルジックな時間と、そこから脱線し新たな刺激を味わえるフレッシュな時間。この二つの線が交互し螺旋を描いていく感覚は記憶の参照元であるオリジナル版が存在するリメイクという形でないと味わえない大変貴重な体験でした。
 
オリジナル版の完成度の高さに改めて想いを馳せ、それを上回ってみせるリメイク版の完成度に感嘆のため息を漏らすと、双方にとって幸福な、これぞ理想的なリメイクの在り方だと思います。
 

バイオハザードシリーズ

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