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【PS4】オリジナル版の美点を一切損なわない堅実なリメイク! |『バイオハザード RE:2 Z version』| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:85/100
作品情報
ジャンル ホラーアドベンチャー TPS
発売日(日本国内) 2019年1月25日
開発(デベロッパー) カプコン
開発国 日本
ゲームエンジン REエンジン

ゲームの概要

 
このゲームは1998年に初代PSで発売された『バイオハザード2』のリメイク版です。
 
オリジナル版の固定視点のカメラが切り替わっていく方式を廃止し、4・5・6やリベレーションズ1・2と同様のTPSとなり、オリジナル版に比べ格段に遊びやすくなっています。
 
オリジナル版の2に非常に忠実なリメイクがされているのと同時に、オートセーブやナビゲーションなど現代の基準に合わせゲーム性が調整されており、元のゲームをやり込んでいても、初プレイでも大丈夫な作りです。
 
REエンジンの表現力により劇的に臨場感が増したことで、ゾンビはじめクリーチャーが生々しく感じられ、生き物が本当に目の前でうごめいているような存在感を堪能できるのも魅力でした。
 
しかし、テンポよく進められたオリジナル版の2に比べ、敵の耐久力が大幅に上昇し、敵の攻撃のしつこさや敵配置の嫌らしさも増すなど、全体的に高難易度化しています。そのせいで、プレイ中の細かいストレス量が増えるという問題も発生しました。
 
それでも、シリーズが途中から追加していった余分な要素を徹底的に削ぎ落とし切り、本来あるべきシンプルな探索アドベンチャーに回帰しているため、バイオハザードの面白さの本質に触れられる貴重な一作です。
 

オリジナル版との比較

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同じ部屋
 

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同じ廊下

 

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棚を動かすところまで同じ
本作は、TPSになりゲームの見た目自体は劇的に変化していますが、オリジナル版をとことん尊重したリメイクで、2への深い愛情が感じられます。
 
 

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オリジナル版のOPムービーにちょこっとだけ登場したガソリンスタンドを歩けることに感動!
オリジナル版同様、主人公がレオン・クレアと二人制で、それぞれ別のシナリオが用意されている点。
 
オリジナル版の表編・裏編に相当するクリア後に解放される通常ルートの裏側が描かれる2ndモードが用意されている点。
 
ラクーンシティの警察署・下水処理場・アンブレラの研究所が舞台となる点など、2っぽさを無闇に弄らずそのまま残してくれており、抵抗なくスッと入っていけました。
 
特に、警察署はじめマップの構造がかなりオリジナル版の面影を残していることが特徴で、1のリメイク版同様、オリジナル版のマップ作りの完成度の高さに改めて気付けるのと同時に細かい部分は調整され目新しさもありと、元の2をやり込んでいる場合も、本作で初めて触れる場合も、両方納得させる理想的なリメイクとなっています。
 
 

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エイダやシェリーの操作パートもしっかり確保
ただ、オリジナル版の表編・裏編のように表編で入手した共有アイテムは裏編では入手出来なくなるというシナリオ間の繋がりは廃止され、それぞれが完全に独立してしまっているのだけはやや物足りなく感じました。
 

この表編・裏編のような構造はむしろクレア編とバリー編が繋がっている『リベレーションズ2』のほうが濃厚です

 
結論を言うと、ゲームは予想を遙かに超えて楽しめました。しかし、初期の頃のバイオハザードは1・2・3・コード:ベロニカ全て数十周はプレイし、隅から隅までマップやアイテム・敵配置を記憶するまでやり込んでいるため、オリジナル版から良くなった点、逆にオリジナル版にはなかった問題点などいくつか気になるところもありました。
 
まず、良くなった点。
 
オリジナル版は、マップのあちこちにキーアイテムがバラバラに配置され、それをプレイヤーが任意の順番で探すスタイルでした。それが、リメイク版ではマップが整理整頓され、今現在どの仕掛けを解くためにどんなキーアイテムを探しているのか逐次ゲーム側が教えてくれるため、目的を見失うことがなくなりました。
 
逆に言うとプレイヤーが好きな順番でアイテムを探していくスタイルだったのに、ゲーム側から目的を細かく指示されるという窮屈さも生まれています。
 
ただ、ここは目的の整理整頓の仕方が自然で、かつ複数のキーアイテム探しに対しどれから集めても大丈夫という最低限の自由があり、押しつけられているという不快さは極力抑えられています。
 
しかも、オリジナル版ではただキーアイテムを使うだけだった箇所に新たにパズル要素も追加され、今の時代から見るとあまりに単純すぎるパズル全般も現代の基準に修正されており、マイナスよりも遙かにプラスの印象が勝ります。
 
 

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便利になったと言えば、ボス戦の前や、即死もあり得るイベントの前にオートセーブが付いたのも非常に助かりました。これは普通にプレイするだけだとありがたみがイマイチ体感し辛いですが、手動セーブのみのハードコアモードをやると、オートセーブのおかげでどれだけ死亡した箇所まで戻る際に移動が短縮されているのか気付け、便利さが身に染みて分かります。
 
それに、レオンとクレアのデザインやモデリングも過去作に比べリアルになりつつ、どこか愛嬌も感じさせる非常にキャラクターものとしては理想的な落としどころで、いくら容姿を眺めていても飽きないことに感心します。
 
一つ前の作品である7は映画『悪魔のいけにえ』のあまりセンスの良くないオマージュのような作りだったので、デザインやコンセプトに不満たらたらでした。それに比べ今作はカプコンがついにホラーゲームのデザインのコツを掴んだなという手応えがあり、国産ゲームとは思えないほどデザイン周りが自然と馴染みます。
 
国産ゲームは海外の映画に作風を寄せれば寄せるほど違和感しかなかったのに今作はここが最小に抑えられており、まだダサいキューブリックの『シャイニング』パロディなど、せばいいのにという余計な異物もあるものの、全体的にはデザインの進歩を肌で感じさせてくれます。
 
次は、オリジナル版では無かった、リメイク版から生じた問題点です。
 
まず、これは仕方がないことですが、アンブレラ社が後の4で倒産することが確定しているので、オリジナル版に比べるとスケール感が乏しくなり、余韻があっさり気味なこと。
 
 

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オリジナル版はこれからアンブレラ社と死闘が始まるような雰囲気を匂わせシリーズの広がりを予感させて終わるのに対して、リメイク版はアンブレラ社との今後の関わりについてはなるべく触れないように終わるため、オリジナル版に比べフェードアウトするような終わり方で明確に地味です。
 
後、詳しくは後述しますが、オリジナル版と比べ最も不満だったのがプレイ中のストレス量がハンパではなく増量したことです。
 
元々オリジナル版は即死攻撃をしてくる敵がいるなど高難易度だった1に比べ大幅に難易度を下げており、シリーズの中でも楽ちんな部類でした。そのため、このリメイク版のシリーズでも上位の高難易度仕様との差が凄いことになっており、難易度設定だけは元の2への忠実さが微塵も感じられません
 
高難易度化したことでゲームとして深みが増した点の方が多いですが、敵に掴まれやすくなるなどハメ殺しになる頻度が大幅に増し、プレイ中のイライラ度合いはオリジナル版よりこちらが遙かに上でした。
 

ゾンビに立ち向かってもよし、逃げてもよしなシリーズ屈指の戦闘バランス

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今作は、移動ルート上の敵を排除しても、戦わず避けて進んでもいいという、戦闘周りのバランス感覚がシリーズの中でも優れており、緊張感が終始持続してくれました。
 
特にゾンビに一度ダメージを与えるとずっとその状態が残り続けるという仕様が素晴らしく、手持ちの弾薬に余裕が無い時は何発か当ててダウンした隙に避けて通ったり、余裕がある時は徹底して追撃を加え排除したりと、現在のアイテム状況に応じて敵への対応を常に考えさせられるため、プレイがマンネリ化しません。
 
これまでのバイオハザードシリーズは、大概は敵を集中して倒すか一切攻撃せずやり過ごすかの二択しかなかったので、この中途半端にダメージを与えてひるんでいる隙に逃げるという選択肢が選べるのは新鮮でした。
 
今作は、シリーズ中でも一撃一撃の被ダメージ量がとんでもないほど高く、数発攻撃を喰らうだけで死亡するため、いかに攻撃を喰らわず慎重に敵をやり過ごせるのかが最も重要になります。そのため、ダメージさえ受けずに敵をやり過ごせたらそれで良しと思え、無駄弾を撃ったことの後悔がさほど生じません。
 
これは個人的にバイオハザードとしては理想のバランスに近くほぼ文句ありませんでした。
 
まだ、1(リメイク版のほう)のゾンビをヘタに倒してしまうとクリムゾンヘッド化して蘇るため、倒した後の死体の処理も行うシステムのほうが好きですが、今作もそれに匹敵するほどの魅力を感じました。
 
しかし、問題は一撃一撃の被ダメージ量を増やし、それに合わせ攻撃を喰らいやすくすることでバランス調整をしているため、前述したハメ殺しにされやすいという大きな問題も生じています。
 
今作から、敵の横を通り抜け出来なくするため、敵が掴みかかってくるとほぼ100%敵の掴み攻撃が確定してしまうため、意図せず攻撃を喰らう事態が多発し、プレイ中はかなり強いストレスを覚えます。
 
 

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さらに、相変わらず敵がヘッドショットを避けるために頭をグラグラ揺らしながら歩くので弾を外しまくる上に、敵が接近してくる際に弾をどれだけ当ててもまったくのけぞりもせず、しかも突然加速するなど、掴まれやすくするためだけにほとんど嫌がらせのような挙動をするためやり過ぎ感もあります。
 
挙げ句の果てに、オリジナル版ではただのイベント戦闘用の敵だったタイラントが倒すことができない無敵キャラになってしまったことに加え、部屋を移動しても、どこまでもどこまでも追跡してくる厄介な仕様になり、好きに歩き回れないストレスでプレイするのが苦痛に感じる時もありました。
 
 

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今作は、基本が大変良く出来ているのでトータルで見ると面白さのほうが圧倒的に勝りますが、一つ一つの負荷は好ましくても、それらが束になった瞬間に強烈なまでの不快さを生むという欠陥も看過できません。
 
弾がないのにヘッドショットが当たらずイライラしたり、タイラントが邪魔で先に進めないことがあったり、ボスの耐久力があり過ぎるため戦闘が長引きうんざりしたりと、本来ならプレイに緊張感を生む心地よいはずの負荷が突き抜けて苦痛に転じる瞬間も多く、ここはあまり褒められた出来ではありません。
 

最速クリアを狙って初めて気付く計算され尽くしたルート設計

 
このゲームはクリア時間を意識せず普通にプレイする場合と、Sランクを目指しクリア時間を少しでも短縮しようと悩みながらプレイする場合や、トロフィーを取得するために縛りプレイをするケースとで、マップが異なる見え方をします。
 
便利なアイテムボックスもクリア時間を速めようとする場合は大きなタイムロスの原因となり、移動途中のどのタイミングにアイテムの出し入れを挟むかまで考慮しなくてはなりません。
 
ルート選びも無駄なくどう動くのか先を読みながら最短のルートを頭で弾き出すと、通常プレイ時には気付かなかった一本の正解のラインが見えるようになります。
 
クリア時間を速めようとすると一切の無駄のない動きが可能なラインに気付け、改めてこのゲームはレベルデザインが秀逸だなと驚かされます。
 
トロフィーを獲得するために行うアイテムボックスを一度も開かずにクリアするという縛りプレイも考え尽くされており、キーアイテムをどう使い切って捨てるのかまで悩まされるプレイは普段と違う頭の使い方を求められ新鮮でした。
 
Sランククリアすると弾を無限に撃ち放題の武器が入手できるなど、時間短縮を心がけるとゲームプレイが引き締まり面白くなる上に強力な報酬も貰えるという点は非常に理に叶っていると思います。
 
ただ、どのモードをどれくらいの時間でクリアすればどんな報酬が入手出来るのかという情報はモチベーションアップのため最初からオープンにして欲しかったです。
 
本作は意味もなくクリア報酬を隠しているため、最初からSランククリアをしたくなるよう、情報を開示しておくべきだったと思います。
 

ややスラッシャー寄り過ぎる安易なホラー演出

 
今作はオーソドックスな怖さを追求していた7に比べるとホラーゲームとしての怖さは大幅に減りました。
 
相変わらずREエンジンのおかげで画面に高級感が漂い、皮膚が腐り落ち筋肉っぽい繊維が剥き出しのクリーチャーの生々しくて気持ち悪い様に生理的な嫌悪感を抱くなど、ホラーゲームとしては十分な凄みがあります。
 
しかし、敵の耐久力を上げてしまったせいで戦闘がしつこくなり、そのせいで怖いと言うよりもただ単に面倒くさいと感じることも多く、あまり敵を強くしたことが恐怖に貢献していません。
 
しかもタイラントがどこまでも追いかけてくるというのは、ホラーではなくサスペンスの演出なので、恐怖の出し方がズレてるなという違和感も覚えました。
 
ホラーというのは自分に降りかかるかもしれない目に見えない脅威を想像しビクビク怯えている状態で、敵がどこまでもしつこく追いかけてくるとか、何発撃っても不死身で死なないという目に見える脅威はホラーではなくサスペンスの領分で、あまり怖がらせ方にセンスを感じません
 
映画の『シャイニング』のパロディが入っていることからも、全体的に殺人鬼のようなものに追いかけ回されるスラッシャー志向で、想像力をさっぱり刺激されず、怖いと感じる瞬間はほぼゼロでした。
 
画面をやたら暗くするとか、ゾンビを撃つと肉が吹き飛ぶとか、怖がらせ方が視覚的で単純なものが多いのも若干安易に感じます。
 

最後に

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10周近く周回プレイしてプラチナトロフィーを取得
クリアまでレオン・クレア編(通常モード)がそれぞれ約5時間ずつで10時間ほど。クリア後に解放される2ndモードもほぼ変わらずそれぞれ5時間ずつで10時間ほど。4つある本編シナリオ全てクリアするのに約20時間ほど(リザルトに表示されないリトライ時間も含めても計25~30時間くらい)。
 
バイオハザードにしてはボリュームはあるほうですが、計4つあるシナリオはどれも基本的にやることは全部同じなので、連続してプレイすると飽きが来るのも早いです。
 
7のようなシリーズそのものを立て直してやるという攻めの姿勢が感じられず、ややオリジナル版遵守という名の安定性に走りすぎているきらいはありますが、その分単純な面白さは7すらも超えシリーズでもトップ3に入るほどでした。
 
7・リメイク版2と続けて完成度が高い作品を連発したことで、6をプレイしてもうバイオハザードは終わったんだと絶望した過去が逆に懐かしくなるほど、このシリーズへの不安は完全に消え去りました。
 

バイオハザードシリーズ

タイトル
ハード
バイオハザード HDリマスター PS
バイオハザード7 レジデントイービル SFC

 

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