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【PS4・PC】REエンジンの描画力によって匂い立つ舞台 |『バイオハザード7 レジデントイービル グロテスクVer.

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トレーラー

評価:85/100
作品情報
ジャンル サバイバルホラー FPS
発売日 2017年1月26日
開発(デベロッパー) カプコン
開発国 日本
ゲームエンジン REエンジン

ゲームの概要

 
このゲームはサバイバルホラー『バイオハザード』シリーズの7作目です。これまでのシリーズとはほぼストーリー上の繋がりはなく、今作から始めても問題ありません。
 
ゲームの内容自体は凡庸に毛が生えたようなアカ抜けないアクションアドベンチャーと操作性が悪いFPS型のホラーシューターでパッとしません。
 
しかし、7から採用されたREエンジンの匂い立つ様なグラフィックの質の高さは過去シリーズを凌駕するものでした。
 
これまでアクションアドベンチャーとシューターとジャンルがどっちつかずでガタガタだったシリーズの方向性を修正すると同時に、『バイオハザード』ブランドも一発で立て直してみせた会心の一作です。
 

6で沈没したバイオハザード号のサルベージに成功

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前作の6はバイオハザードシリーズでも群を抜いた駄作で、もうバイオハザードシリーズは終焉を迎えたのだと思いました。しかし、今作でブランド自体はしっかり持ち直したのでその点は称賛しかありません。
 
あそこまで迷走しまくりドツボにはまって処置の施しようがなかった6に比べるとしっかりバイオハザードしているので、不満は多々あるもののクリアまでモチベーションが低下することは皆無でした。
 
作りとしては初期のバイオハザード(1~3、コード:ベロニカ、0)路線のアクションアドベンチャー要素と、4以降のシューター路線を折衷し、一人称視点に改良したような置き所でバランス感覚に優れていると思います。
 
メインは謎解きを重視するアドベンチャーで、敵との戦闘は控え目ながらFPS型のホラーシューターにするという、なるほど途中で路線が二つに引き裂かれてしまったバイオハザードシリーズのアドベンチャー要素とシューター要素をうまくすり合わせたもので、うまい落とし所を見つけたなと感心させられました。
 
4以降は、コツコツと積み上げてきた謎解きアドベンチャー要素に背を向けてシューターオンリーに走ったことでシリーズの核が失われ迷走したことへの反省なのか、4以降の核だったシューター要素も切り捨てず残すという選択は賢明でした。
 
これまでのあらゆるバイオハザードシリーズを否定せず内包させ、かつシリーズとしては心機一転やり直すというコンセプト的には、今作のバランスの置き所はほとんど100点に近いと思います。
 
バイオハザードと呼ぶにはほとんど原型が残っていない別物すぎた4に売り上げのためか無理矢理バイオハザードというタイトルを冠したせいで生じた長きに渡るジャンル的なボタンの掛け違いがようやく解消されスッキリです。
 

凡庸なアクションアドベンチャー+出来損ないのホラーシューター

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今作は、ガタガタのバイオハザードを立て直すというコンセプト的には満点だと思います。しかし、実際プレイすると中身はありとあらゆる部分が欠点だらけでした。
 
まず、今作のメインの敵となるベイカー家の人間達は一体何十年前のスラッシャー映画から抜け出した殺人鬼一家なんだと思うほど古臭いセンスで目新しさが皆無です(トレーラーを見た時点から嫌な予感がしていたものの予想通りなだけでした)。
 
カプコンは映画や他のゲームを引用する際、いつも表面的な記号だけしか注意を払わず、その作品の核の部分、魅力の本質を捉えられず何をやっても薄味に感じてしまいます。
 
今作も、一作目の自己主張せず不穏さを湛えるのみに留めた上品な洋館と異なり、敵キャラも舞台演出もべちゃくちゃ主張しすぎで下品にしか感じません。
 
6のしつこいだけの連戦ボス演出の失敗から何も学んでいないのか、延々何度倒しても復活し続けるジャック・ベイカーにも「また懲りずに何度も復活するパターンか」とイライラしっ放しでした。
 
舞台となるベイカー邸や旧館などは一作目の洋館や別館を模しているのでしょうが、いかんせんマップが狭すぎたり一本道過ぎたりで、一作目の探索の楽しさには遠く及ばず。ただ、これは新しい一人称視点を用いて昔のアドベンチャー路線に回帰するという高度な挑戦をしている一作目なので多少は仕方ないと思います。
 
戦闘もガードを使わせるためかショットガンなど高威力の武器以外はほとんど敵がノックバックせず、ひたすら突進して射程の長い攻撃をしてくる上に、ザコ敵のモールデッドはヘッドショットしないと効率的に倒せないのに頭部を左右にグラグラ揺らして射線を逃れようとするなど、相変わらずカプコン特有のサディスティックな仕様にも辟易させられます。
 

ザコ敵が全員『リベレーションズ2』のレヴェナントみたいな感覚です

 
カプコンはプレイヤーをイライラさせ、そのイライラから解放されることをもって達成感だと勘違いしている節があり、フロム・ソフトウェアのような乗り越えたいと思わせる魅力的なハードルを設け、プレイヤーに自らの意思で挑戦させる作りとはまったく別種の一方的にストレスや苦痛を与えるだけのサディスティックな嫌がらせ仕様が散見されます。
 
6であそこまで盛大に失敗したのに、一体カプコンはいつになったら達成感とプレイヤーへの陰湿な嫌がらせに因果関係がないことに気付くのか絶望的な気分にもなりました。
 

救世主REエンジン降臨

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今作のあらゆる欠点の全てを払拭して脇に追いやるほど凄まじい魅力が、REエンジンによってもたらされるグラフィックの魔力でした。
 
激しく五感に訴えるような描写力は、視覚・触覚・嗅覚を刺激することで今作を並みのホラーゲームとは比較にならない遥か高みへと押し上げてくれました。
 
FOXエンジンによってステルスゲームとしてのキレに磨きがかかり完成度が向上した『メタルギアソリッドⅤ』のように、今作のREエンジンはバイオハザードシリーズを再び世界的なホラーゲームブランドに復帰させてくれた最大の功労者だと思います。
 
ハッキリ言って今作はアクションアドベンチャーやホラーシューターとしてはパッとしないので、このREエンジンを開発した裏方の技術者の人たちにこそ賛辞を贈りたいです。
 
REエンジンで作られたゲーム世界を歩けたことこそ至福でした。
 

おわりに

 
クリアまで約10時間ほど。
 
ゲーム性自体は凡庸で特に優れたところは見当たりません。しかし、迷走しっぱなしでガタガタだったシリーズを立て直すという困難な目標を見事達成しバイオハザードブランドを復活させた功績は見事としか言い様がありません。
 

バイオハザードシリーズ

タイトル
ハード
バイオハザード HDリマスター PS
バイオハザード RE:2 SFC
 
 
 
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