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前半を捨ててでもシガンシナ区奪還作戦に命運を賭けた一極集中の3期 [アニメ]「進撃の巨人 シーズン3(3期)」 〈レビュー・感想〉

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トレーラー

評価:95/100
作品情報
放送期間 Part.1:2018年7月~10月
Part.2:2019年4月~7月(分割2クール)
話数 Part.1 : 12話 Part.2 : 10話
全22話
アニメ制作会社 WIT STUDIO

メモ

 
・映像化の範囲は原作単行本の13巻~22巻までです
 

短評

 
 前半であるPart.1は全体的に会話が間延び気味でテンポが悪い。内容もほぼ後半に向けての準備に費やされるため退屈に感じる場面が非常に多く魅力が不足気味。
 
 しかし、後半のPart.2は会話主体の前半とは打って変わり激しいアクションが連続し面白さは段違いに跳ね上がる。
 
 前半をある程度捨て後半のシガンシナ区奪還作戦にリソースを全投入しているため全体のバランスは悪いが、その分後半はシリーズでも1位、2位を争うほどの豪華さで、前半の不満などあらかた吹き飛ばすほどの圧巻の完成度。
 

脅威の密度で描かれるシガンシナ区奪還作戦

 
 シーズン3は前半(12話)と後半(10話)に分割されており、前半はほぼ後半に向けての説明・準備にのみ費やされ、面白味はさほどありません(対人立体機動アクションや超超大型巨人に見応えがある程度)。
 
 今シーズンの本番は後半のエレンやミカサ、アルミンの生まれ故郷であるシガンシナ区奪還作戦です。前半部を丸々使って準備に費やした忍耐が活き、もはやとち狂ったような完成度に達しており、退屈な瞬間など一瞬たりともありません
 
 5話連続で激しいアクションが披露される回が続くという、どうかしている密度で、その気合いの入り様にただただ圧倒されました。
 
 板に付いた立体機動アクションは言わずもがな、シガンシナ区奪還作戦の何が凄いかというと、シガンシナ区全体を常にロングショットで見せ続ける構図の作り込みです。
 
 ひらけた場所でどのキャラクターがどこで交戦しているのか一目瞭然な上、調査兵団が連絡用に使う信煙弾の煙が街のどこからでも視認でき、作戦の流れや位置関係を見失うことが一切ありません。
 
 常に作戦を引いた視点で見せ続けるおかげで、開けた場所で敵にいつ奇襲されるか分からない緊張や、ジリジリと味方が追い詰められていく切迫感を最大限まで高められており、無類の面白さです。
 
 5話連続でアクション回が続くだけでも凄いのに、この奪還作戦全体を俯瞰させるような異常な密度の背景や、位置関係を把握しやすい工夫のおかげで、本当に自分がシガンシナ区にいるような錯覚すら覚え、没入感が過去最高でした。
 
 それ以外も、兵団の新装備である雷槍らいそうの爆発描写も迫力があり、そのおかげで原作漫画より、攻撃時に雷槍の爆発に巻き込まれたら巨人ごと自分も爆散して死んでしまうという絵的な説得力があります。
 
 瞬間的な作画の凄みで言ったら過去作のほうがまだ優れている箇所が多いですが、5話も異常な書き込みの背景の中で緊張を途切れさせないまま作戦が続くという豪華さは異例で、あまりに楽しすぎて気が触れそうなほど興奮が冷めませんでした。
 
 この常軌を逸した面白さは、前半部のマイナスなど一瞬で忘れさせてくれ、後半に突入した瞬間に作品評価が爆発的に上がります。
 

リヴァイとエルヴィン深き戦友の絆

 
 アニメ版を見ていて、原作漫画を読んだ際は見逃していた登場人物のセリフや行動に隠された意図をいくつか発見でき、その中でも特に印象的なのはリヴァイとエルヴィンの関係性や、アルミンとエルヴィンをずっと重ねて描いていたことでした。
 
 リヴァイとエレンが自分の大切な人を守るために対峙する際に、エレンは自分の感情を優先し動くのに対し、リヴァイは相手のことを深く思うがゆえに自分自身の感情を抑制するという対比のさせ方がうまく、ここは『進撃の巨人』屈指の名シーンだなと見方が変わりました。
 
 アルミンとエルヴィン両方とも、子供の頃に思い描いた壁の外への憧れを胸に調査兵団を志し、片方はまだ穢れのない純粋なままその想いを持ち続け、もう片方は身も心もボロボロな体を無理矢理希望で支えているだけという、暗にアルミンの未来はエルヴィンであり、エルヴィンはかつてのアルミン、そしてアルミンやエルヴィンの夢に触発されたエレンとリヴァイも似た存在ということが分かり、リヴァイがもう一人のエレンに見えます
 
 この場面は最初読んだ時は単に辛い選択を迫られる重圧を描きたいのかと思っていたら、アニメ版を見たらアルミンとエルヴィンが完全に重なって見えるように二重三重の伏線が張り巡らされていることに気付け、その精巧さに鳥肌が立ちました。
 
 エレンやミカサ以外は兵団の未来ばかり考える中、リヴァイだけが重圧で精神が限界に達しているエルヴィンという一人の人間のことだけを考え、これ以上重荷を背負わせたくないという決断を下す様に胸を打たれます。
 
 この瞬間、他のキャラとは明らかに深度の異なる悩みを抱え苦悩するリヴァイはエレンよりも遙かに主人公然として見え、リヴァイは『進撃の巨人』のもう一人の主人公であるということに気付けました。
 

最後に

 
 前半はテンポの悪い会話シーンの連続で退屈極まりなくシーズン3はダメなんじゃないかと落胆していたら、後半一気に怒濤の巻き返しを見せられ、印象が一気に逆転しました。
 
 シガンシナ区奪還作戦の完成度はアニメ版の中でも1位、2位を争い、アニメ版どころか原作への評価まで跳ね上がり、『進撃の巨人』という作品の底力に心底魅了されました。
 

進撃の巨人シリーズ