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【お金】伝説の本多式4分の1天引き貯金術 |『私の財産告白』| 本多静六 | 感想 レビュー 書評

本の情報
著者 本多静六
出版日 オリジナル版:1950年
復刊版2005年7月10日
難易度 普通
オススメ度 ☆☆☆

本の概要

 
この本は、幕末生まれの林学者であり投資家本多ほんだ 静六せいろくが、自身が生涯実践し続けた貯蓄術投資の極意仕事論などを語るエッセイのような内容です。
 
この『私の財産告白』は、日本の著名な投資家が必ずと言っていいほどオススメの一冊として挙げますが、読んでみるとお金にまつわる名言・金言・至言の宝庫であり、単にお金の儲け方ではなく経済的な豊かさは人の心を自由にし人生に幸福をもたらすという人生訓としても秀逸で、投資家の間で名著として愛読される理由が分かりました。
 
1950年(昭和25年)に出版された本ながら、現代でも何ら古びていない貯蓄・投資の極意が詰まっており、本多静六という偉大な倹約家であり投資家のマインドに触れられる貴重な一冊です。
 

倹約と幸福との関係

 
この本で最も共感できたのは倹約(節約)生活という本来なら苦行であるはずの行為に対する著者の前向きなスタンスでした。
 
消費というものは結局のところ見栄であり、他人にどう見られたいのかを神経質に気にする人ほど不必要なものにお金を使い、倹約をする人ほど見栄にこだわらず自分にとっての幸福のみに集中して生きることができるという主張は完全に同意です。
 
この消費の虚しさに関連する話として語られるのが“天丼哲学”という著者の実体験です。
 
これは著者が苦学生の時代に初めて口にした天丼がこの世の物とは思えないほど美味で将来天丼をおかわりできるくらいの生活を送りたいと願い、実際にお金に余裕ができて天丼をおかわりしたら2杯目の天丼は大して美味しくもなく量も多く結局残してしまったという出来事から、お金が倍になっても幸福は倍にならないということを学んだという教訓です。
 
この“天丼哲学”は、自分にとってはゲームやアニメ、映画などの趣味に相当します。子供の頃は楽しくて楽しくて仕方がなかった趣味がいつしか惰性となり、子供の頃は楽しかったはずという思い出で誤魔化し続けた結果、天丼を2杯も3杯も際限なくおかわりし続けてしまい、徐々に自身が求める本当の幸福から遠ざかっていたことにここ数年ようやく気付き、生活態度を根本的に改めました。
 
日々の行動を徹底的に見直す倹約(節約)とはこのような無意識に天丼をおかわりし続けている状態に気付くキッカケにもなり、自分の本当の幸福に向き合うチャンスをくれます。
 
この本の著者である本多静六はじめ、多くの投資家は投資の種銭を稼ぐために自主的に倹約生活を経験し、その過程で自分が見栄や過去の幸せの幻影に囚われていたことに気付き、では自分にとっての幸福とは一体何なのかを真剣に考え抜き、確固たる自己を確立している人が数多くいます。
 

なかには金を儲けることしか考えていない守銭奴も多くいますけどね

 
この本を一冊読むだけで、見栄に振り回される愚かさに気付け、お金や幸福との真剣な向き合い方を突きつけられ、適切な投資マインドも形成されと様々な学びがあり、投資家の間でこの本が愛され名著として語り継がれるのも納得できます。
 

赤裸々な資産家の苦しみ

 
この本が投資家はじめ様々な成功者にバイブルのように愛される理由の一つに、投資やビジネスで財産を築いた後に待ち受ける切実な悩みもしっかり書かれていることもあると思います。
 
資産家になるとこのような連中が寄ってくるという注意点が非常にこと細かく書かれており、金を持っていることを非難していた連中こそ金を無心にやってくるとか、一度金を貸して二度目に断るとまるで被害者の如く逆上して恨み言を浴びせてくるなど、資産を持つ者が一通り経験するだろう様々な金銭トラブルが網羅されており、人間の薄汚さがこれでもかと詰まっています。
 
中でも印象的だったのは、日本は封建社会の名残で金に興味がないフリをしているだけで実は金に異常な執着をする人が多いという指摘と、日本という国は金持ちに対して出しゃばった口や態度を取る人が欧米に比べると多い(本多静六はドイツへの留学経験がある)という二点です。
 
他の成功者の本を読んでいても日本人は努力で成功を勝ち取った人を尊敬しノウハウを学ぶことより、陰湿に攻撃して憂さ晴らしの対象にしたがる傾向が異常に強く、この国民性は一体どこから来るのか不思議に思うことが多々あります。
 
この本はその点にストレートに疑問を呈しており、似たような経験をしたことがある成功者が共感を覚えるのも頷けます。
 

誰よりも努力して成功を勝ち取った者を攻撃するということはもはや努力の全否定ですね

最後に

 
貯蓄の意義、投資のコツ、円滑な人間関係を築くための仕事論、見栄と決別し誰とも違う自分だけの幸せを追求することの大切さを説く幸福論と、お金にまつわる様々な話題を自身の実体験を交え赤裸々に語る文句なしの名著でした。
 
特にFIREを目指している人にはテクニック的にも精神論的にも非常に学びが多い一冊で、読んで絶対に損はありません。
 
 

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