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【PS4・steam】産業革命×アサシン |『アサシンクリード シンジケート』| レビュー 感想 評価

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トレーラー

評価:80/100
作品情報
ジャンル オープンワールド ステルス
発売日(日本国内) 2015年11月12日
開発(デベロッパー) Ubisoft Quebec
開発国 カナダ(UBIの本社はフランス)
ゲームエンジン AnvilNext 2.0

ゲームの概要

 
この作品は、『アサシンクリード』シリーズの一作です。
 
産業革命の真っ只中であり、斬り裂きジャック事件が世間を騒がせる、19世紀ヴィクトリア朝のイギリス、ロンドンが舞台です。
 
そして、これまでのシリーズと異なり、アサシンでありギャングのリーダーでもある双子の姉弟が主人公で、ゲーム中は男主人公・女主人公をいつでも交代可能となっています。
 
作風が極めて陽気なものとなりシリーズの中でもかなり異色な感触でした。
 
ロンドンの街並みは、狂ったような人の密度を誇った『ユニティ』に比べるとやや物足りないですが、一般的なオープンワールドゲームと比較しても豪華で不満は特にありませんでした。
 
ただ、システム・シナリオ共にありとあらゆる部分に雑さが目立つ上に、マンネリもピークに達しており、決して優れた作品ではありません。
 

ロンドン、科学がもたらす光と影

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前作『ユニティ』は、フランス革命に沸く混沌としたパリを無理し過ぎなNPCの過剰密度で表現しており、街からもたらされる感動はシリーズでもトップクラスでした。
 
『シンジケート』のロンドンはパリの街並みや群衆量を体験した後だと物足りませんが、オンライン要素をバッサリ切って処理の負荷を減らし、かつモーション量もモッサリしていた『ユニティ』から適切となり、操作周りのストレスは軽減されています。
 
さすがに『ユニティ』のパリに比べると見劣りしますが、それでもヴィクトリア朝イギリス、ロンドンの街並みの再現度は凄まじく、アサシンクリードシリーズの醍醐味である過去に存在した都市を散策できる感動は十分堪能できました。
 
ただ、ロンドンの街並みの再現度以外の部分はわりと不満が多めです。
 

アサシンなの? ギャングなの? なんで主人公が二人必要なの? パルクールさせたいの? させたくないの?

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本作のシステム周りは過去シリーズから少なくない変更が加えられています。
 
主人公が双子の姉弟の二人制でメニュー画面からいつでもキャラ交換可能になったこと。
 
ロープランチャーという、ゲームの『バットマン』シリーズのグラップリングそっくりな機能が追加され、高い場所へフックを打ち込むと『進撃の巨人』の立体機動のごとく移動できるようになったこと。そして、離れた建物にジップラインを作り、建物から建物へ簡単に移動が可能となったこと。
 
車の代わりとなる馬車が街に配置され、徒歩や馬移動が主体だったこれまでと違い街中を馬車に乗り高速で移動できるようになるなど、これまでのシリーズと比べ明らかに近代化が進み毛色が異なります。
 

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アクションも、主人公二人がアサシン兼ギャングのリーダーという設定のためか、これまでのチャンバラで敵をバッサバッサ斬り伏せるような爽快感重視のアクションから一変。さながらマーティン・スコセッシ監督のマフィア映画や韓国のバイオレンス映画のように、相手が動けなくなるまでボコボコに殴ったり、刃物で執拗に切りつけたり、グサグサと体を何度も刺したりと、より敵ギャングへの見せしめのための処刑的なアクションへと変更されました。
 
ただ、スタイリッシュ路線はそのままなので凄惨さやグロさは特にありません。
 
このアサシン兼ギャングという設定が加わったことにより、また4やローグで感じたアサシンとしてのステルス部分と海賊行為部分が噛み合わないのと同様の違和感が再発しました。
 
この中途半端なアサシンとギャングの二足のワラジ状態という、ステルスをさせたいのかさせたくないのかまるでハッキリしない態度は個人的にはマイナスです。
 
主人公の二人は一応姉はステルスが得意、弟は戦闘が得意という多少の差異がある程度で使用できる武器もアイテムも共有なため大して印象は変わりません。
 
これなら姉のミッションは全て古典的なアサシンらしいステルスや暗殺、パズル寄りで、弟は派手なパルクール主体のド派手アクションものやギャング同士の集団抗争をメインにしたものなど、明確に差別化して欲しかったです。
 
それに、移動周りはロープランチャーが便利すぎてフリーランが陰ってしまうというマイナスもあり、善し悪しの判断に悩みました。
 
特にロープランチャーは最初『バットマン』シリーズのグラップリングのパクリくらいの印象だったのが、行き交う船が足場代わりという斬新なアイデアのテムズ川エリアと相性が抜群で楽しかったり、そもそも過去シリーズと比べ建造物が全体的に高くなって壁を昇るのに時間が掛かるようになったことへの対処だったりと、一応は舞台の構造上やむを得ない部分もあり、最後は仕方がないかと納得しました。
 
 

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今作は移動手段の選択肢の多さはシリーズでもトップなのに、どこかオープンワールドゲームにありがちな移動手段をテンコ盛りにしただけで勘所を押さえていない雑然とした印象も増しこの変化をどうしても好意的には受け取れませんでした。
 
つくづく船のみが移動の足で、ひたすら船を改造していくだけだった4やローグはシンプルで良かったなと懐かしくなります。
 
このように、ステルスをさせたいのかさせたくないのかや、フリーランを使わせたいのか使わせたくないのかなど、システム同士がイチイチ反目するようなゲームデザインとなっており、アクションゲームとしての美しさはありません。
 

中途半端な『ブラザーフッド』の焼き直し

 
今作は、敵ギャングの支配するエリアを解放していくという『ブラザーフッド』に近い構造となっていますが、メインの敵となるブライターズというテンプル騎士団の下部組織のようなギャング集団は存在感が薄く印象に残りません。
 
そのため、拠点を潰したり、ギャングと手を組むテンプル騎士を暗殺したりというサブクエスト的な意味合いもある部分は驚くほど退屈でした。
 
最初はギャングを潰していく行為が『ブラザーフッド』のボルジアの塔のような街の発展と絡むものなのかと思いきやそんなことはなく、ただ一定数クリアすると装備が貰える程度で拍子抜けさせられます。
 
『ローグ』のように、ギャングのアジトを潰したら自分たちの拠点となりファストトラベル地点になる、などの報酬もありません。本当にただテンプレで作られたような、雑に配置されたエリア内の敵を排除するだけの面白味もない作業でしかありません。
 
ステルスという非常にデリケートな調整が必須となるジャンルをこんな雑に作ってもうまく機能などするはずもなく、だったらいっそギャング関連のイベントは派手な集団抗争オンリーにして、全部アクションに振り切ってくれたほうがマシでした。
 
今作が採用している、ひたすらギャング組織を潰していくというアプローチは後に『ゴーストリコン ワイルドランズ』も採用し、これより遙かにうまく使いこなしています。それに比べると、今作はまだまだ発展途上の段階でしかありません。
 

最後に

 
クリアまで約30時間ほど。
 
ヴィクトリア朝時代のロンドンの街並みは息を呑むほど美しく、この部分に関しては特に不満はありません。
 
『ウォッチドッグス』(一作目)のバンカーや、前作『ユニティ』のカフェのように、今作もロンドン市内を走る蒸気機関車がアジトという、UBIらしい秘密基地っぽいアジト演出も粋でそこも好みでした。
 
しかし、全体的にゲーム性の焦点を絞り切れていないグラグラした座りの悪さは一度たりとも晴れることはありませんでした。
 
それどころか、非常に優れたパルクール部分すら面倒なものとしてショートカットし出したので、もはや作り手はパルクールの魅力すら信じられなくなったのかとプレイしていて切なくなります。
 

アサシンクリードシリーズ

タイトル
ハード
アサシンクリード3 リマスター
PS4
アサシン クリード4 -ブラックフラッグ-
PS4
アサシンクリード ローグ
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