トレーラー
評価:80/100
ジャンル | オープンワールド 海戦 ステルス |
発売日(日本国内) | PS3・Xbox360版:2014年12月11日 PC版:2015年3月10日 PS4リマスター版:2018年3月22日 |
開発(デベロッパー) | Ubisoft Sofia |
開発国 | ブルガリア(UBIの本社はフランス) |
ゲームエンジン | AnvilNext |
ゲームの概要
この作品は、『アサシンクリード』シリーズの1作です。ケンウェイサーガに属しており、話の時系列は4→ローグ→3となります。
さらに『アサシンクリード ユニティ』ともほんの少しだけ接点がありますが、こちらはケンウェイサーガほど濃密な関連はありません。
シリーズ初である、テンプル騎士団側のアサシンが単独主人公で、アサシン教団のアサシンを暗殺していくという異例の作品です。
アクションゲームとしては、シリーズの中でも屈指の完成度を誇る4の海戦要素をそのまま受け継いでいるため並のゲームを凌駕する面白さはありますが目新しさは希薄でした。
全体的に4のシステムを遊びやすく整理整頓しただけのようなこぢんまりとした完成度で、この作品独自の魅力というものに欠けます。
ストーリーも主人公がアサシン教団からテンプル騎士団に寝返り仲間だったアサシン達を殺して回るという衝撃的な内容のわりに脚本が雑で盛り上がらず、シリーズの中でも陰が薄めです。
4の焼き直し続編
今作は海戦要素が魅力だった4のシステムをほぼそのまま使い回しているため独自の魅力に乏しく、どうしても4の焼き直しという印象が最後まで拭えませんでした。
ただ、過去作にあった街(建物の改築)に投資すればするほど定期的に振り込まれる収入が増えていくシステムは復活し、全体的に遊びやすさは4よりも強化されています。
この部分は海戦で強奪する物資や、今作から追加されたギャングのアジトを潰して街を解放していく要素や、被支配状態にある入植地を解放する要素と連動し好感触でした。
しかし、結局は4の煩わしさを取っ払うことだけに終始しているため、今作らしさは希薄で新しい面白味があるかと言われると疑問です。
4にはカリブの海賊という設定や雰囲気を生かし、それ自体ゲームとして別段楽しいものでなくとも、よりゲーム体験を豊潤なものとしてくれるような細々とした要素が無数にありました。
しかし、今作は本編やゲームの満足度そのものには絡まずとも、それがあるだけで遊び心や洒落っ気を堪能できるような要素が乏しく、味気ない印象しかありません。
海賊を廃業し暗殺者に復帰するもどうしても付きまとう海賊の影
主人公はテンプル騎士団に寝返るとはいえ基本は終始アサシンです。そのため、4のような海賊の船長が突然ステルスし出すという設定とゲーム性が噛み合っていない違和感は解消されました。
ただ、今度は主人公がアサシンとなったため、4では違和感がなかった海賊行為のほうが設定から浮いて見えます(なぜかアサシン教団に比べ組織規模で圧倒的に上回っていそうなテンプル騎士団が積極的に海賊行為を働く、など)。
やはり4でも感じた、そもそも地味なステルスと派手な海賊行為というまったく方向性の異なるものが他人行儀にお互いの顔色を窺い続けるという根本の問題は改善されていません。
システム周りは全体的に4で面倒だった部分を簡略化・高速化し、快適性を確保するという方向性でほぼ一致しており遊びやすさは向上しています。
そのためプレイは快適になったものの、どうしても4の延長線上で同じ事を繰り返しているだけでしかなく劇的な変化は感じられません。
寝返る動機付けに失敗したため、致命的な問題を孕んだ主人公
ストーリーはシリーズで最も衝撃的なはずの、アサシン教団のアサシンがテンプル騎士団に寝返り仲間だったアサシン達を殺害していくことで元いたアサシン教団支部の一つを壊滅に追い込む、という内容にも関わらず思っていたより淡泊でした。
その原因はアサシン教団の教えに忠実だったアサシンが教団のやり方に疑問を抱き裏切るというシリーズ中最も丁寧で繊細な脚本力を要求されるはずの場面がただ単にコミュニケーション不足であっさり仲違いしたようにしか見えないことです。
教団の信条という絶対の方針と主人公の信条がぶつかり相容れなくなってしまったという描写があまりにも弱すぎて、仲間達を殺していくという展開にイマイチ入り込めません。
もっと序盤で主人公の考え方とアサシン教団の考え方が食い違うという描写を積み重ねつつ、テンプル騎士団側の主張にやや心惹かれてしまうといった布石を丁寧に描かないとアサシン教団に対する不信感がある一点で爆発し教団に対する激しい怒りに転化するという場面に感情が沸き立ちません。
今作は主人公のシェイがアサシン教団に失望し仲間と道を違えるという何がなんでも説得力を持たせて成立させなければならなかった部分を適当に描いてしまったせいで、シリーズ中最も感情移入困難な主人公となってしまっておりそれがストーリーの淡白さの主要な原因になっていると思います。
その結果、様々な要因のせいで教団への未練を引き摺り続けるにしても、激しい怒りで一気に離反するにしても、設定の過激さに対して脚本がまるで追いついていないという印象しか受けませんでした。
これならまだ3と今作にも再登場するヘイザムのほうが冷徹かつ紳士的でプロフェッショナルに徹しており、テンプル騎士団の理念を体現する暗殺者としては魅力的でした。
ヘイザムを超える魅力を備えたキャラクターを創造できなかった時点で、今作は3の前日譚という過去シリーズに依存する弱々しい作品に落ち着いてしまった感があります。
ただ、今作はいつものシリーズに比べると明らかにボリュームが少なめで、ストーリーの物足りなさは、このボリューム不足のしわ寄せのせいかもしれません。
3の前日譚としての魅力
本筋のストーリーは不満が多く残りますが、アサシンクリードシリーズのキャラクターは3が一番好きなので、3の物語に彩りを与える前日譚としては楽しめました。
作中アキレスの亡くなった息子の名前が出てきただけで涙腺が刺激されるほどです。
今作をプレイすることでアキレスが『スターウォーズ』のオビ=ワンのように弟子の想いを察してあげられなかったせいで大勢の同胞を死に至らしめてしまったという過去が追加され、より3の振る舞いに哀愁が生じます。
結果、この後に素晴らしい後継者と出会いその人物を一人前のアサシンとなるまで導いた奇跡がより際立つようになり、3への印象はより向上しました。
不満あれこれ
今作でもっともストレスを感じる部分は、アサシン教団が放ってくる追跡者の存在です。
コチラがステルス中だろうがおかまいなしに襲撃してくるため、ステルス中で大衆に紛れている→追跡者に襲撃され戦闘に→それに反応してパトロール中の兵士がアラート状態になって襲ってくる、という、周りの敵を連鎖的に巻き込んでアラート状態にされることもあり迷惑この上なくストレスが溜まりました。
後は、相変わらず4と同じでステルス要素はゆるゆるな難易度で歯ごたえは皆無なこと。
今作は前作の吹き矢の代わりに追加されたエアライフル(空気銃)に爆竹ダートという敵の注意を逸らしてくれる便利な弾が追加され、さらにあろうことか広範囲攻撃可能なグレネードランチャーまで加わりと、もはや敵の観察など一切不要でほぼこれだけで押し通せます。
ひたすらエアライフルとグレネードランチャーだけで全ての敵を無効化できるため、ただ単にミッション開始前に弾を補充してさえおけば何の苦労もなくクリアできてしまい達成感は皆無でした。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
4の海戦を使い回しやや大雑把に4の続編と3の前日譚を兼ねる作品をでっち上げただけの様なあまり志の高い作品ではありませんでした。
それでも、さすがに完成度の高い4ベースなため単純なゲームとしての面白さは十分でした。
アサシンクリードシリーズ
タイトル
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ハード
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アサシンクリード3 リマスター |
PS4
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アサシン クリード4 -ブラックフラッグ- |
PS4
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アサシンクリード ユニティ |
PS4
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アサシンクリード シンジケート |
PS4
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アサシンクリード オリジンズ |
PS4
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