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【PS4・steam】暗殺者よりも楽しい海賊稼業 |『アサシンクリード4 -ブラックフラッグ-』| レビュー 感想 評価

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プレイ動画

評価:90/100
作品情報
ジャンル オープンワールド 海戦 ステルス
発売日(日本国内) 2013年11月28日
開発(デベロッパー) Ubisoft Montreal
開発国 カナダ(UBIの本社はフランス)
ゲームエンジン AnvilNext

ゲームの概要

 
この作品は、『アサシンクリード』シリーズの1作です。3の主人公コナーの祖父(ヘイザム・ケンウェイの父)であるエドワード・ケンウェイが主役です。
 
ケンウェイサーガの一作で、話の時系列は4→ローグ→3となります。
 
18世紀初頭のカリブ海が舞台となり、アサシンであり海賊でもあるエドワードが主人公とこれまでの『アサシンクリード』とは毛色が違います。
 
これまでのステルスメインではなく、シリーズ初の海戦をメインに据えるというアプローチの結果、アクションゲームとしては新たな魅力を獲得できました。
 
特にオープンワールドだからこそ可能なプレイの連続性をフルに生かした豪華な海賊行為はシリーズでも希有なゲーム体験が堪能できます。
 
しかし、これまでシリーズの中心要素だった硬派な歴史ものとしての魅力やドラマ性は後退し、ストーリーの面白さだけ見ると歴代シリーズの中では凡庸でした。
 

暗殺者と海賊、二足のワラジの弊害

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4はこれまでのストイックなアサシンらしい抑制されたトーンから逸脱し、海賊らしいど派手で豪快な作品へと変貌を遂げました。
 
3のオマケに近かった船の操舵や海戦を大幅にブラッシュアップし、この部分だけ抜き出し一本のゲームをでっち上げてしまったかのような豪快さです。
 
元々中心だったステルスを要素の一つ程度に降格し、代わりに商船や軍艦を襲って物資や船を奪う海賊プレイを中心に据えるという大胆な方向転換は良くも悪くもこれまでのシリーズと別種の開放感でした。
 
しかし、ステルスと海戦、海賊行為を足し算的にごちゃ混ぜにした結果システムの自重が増しゲーム全体が不安定にもなっています。
 
特に一番UBIらしくないと感じるのは、海賊行為を売りにするフリープレイ部分ステルスプレイをベースにするメインミッション部分ちぐはぐに感じることです。
 
異なる主旨のことを交互にやらされるため、まるで違うゲームが一つのゲーム内に無理矢理詰め込まれたような窮屈さすら覚えます。
 
ステルスは敵AIの調整がゆるゆるで、敵の近くで他の兵士を暗殺してもほとんど反応がありません。そのため、マップ中の敵をほぼ無尽蔵に殺して排除し放題だったり、途中から使用可能になる吹き矢があまりにも便利すぎてこれだけでほとんど苦労もせず敵を無力化できたりと、手応えが皆無でした。
 
タカの目モードで敵を簡単にマーキング出来るようになるなど、体感で進化したと思える部分もありますが、じっくり観察しなくても突破可能な適当な敵配置やAIの賢さの後退など、手抜きにも見える部分も散見されます。
 
その結果、海戦や海賊行為のほうが圧倒的に面白く、アサシンの本業とも言えるステルスの存在感が負けています。
 
本来なら作品の支柱となるはずのストーリーやステルスがサブのやり込み要素に負けており、楽しいフリープレイの合間に我慢して退屈なメインミッションをやらなければならないという本末転倒さが終始気になりました。
 

オープンワールドを巧みに利用する海戦の豪華さ

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映画においては編集でカットを割らず、カメラを回し続ける長回しをやり過ぎると映像を自然に見せるための手法なのにも関わらず逆に自然に見せようという作り手側の力みを強調させてしまう場合があります。
 
しかし、ゲームにおいてはこの様な副作用は一切存在せずプレイがエリアチェンジやロードという切れ目を挟まず連続していればいるほど豪華さが増し続けるという利点のみがあり、これをフルに生かす海賊プレイは圧巻でした。
 
今作は陸地ではなく海のほうが主役のオープンワールドとなっており、海上で敵艦船との遭遇、砲撃戦、さらにそこから相手の船に乗り込んでの白兵戦という流れを一切ロードを挟まず行え、このダイナミズムには圧倒されます。
 
これまでの記憶からオープンワールドと言えでもどこかで途切れて画面がふっと切り替わるだろうと思いながらプレイしていると、
 
「あれ? 敵の船を行動不能にしたのにまだ何かするの?」
「え? このまま大破させた敵の船に接近するの?」
「まさか、このまま敵の船に乗り込むの……え!? そのまま白兵戦が始まった!」という、ゲームプレイの連続性が途切れないことそのものが強烈なゲーム体験として機能しており感動的でした。
 
その体験を支えるのが、とても1つのフレームに納まりきらないほどの船の巨大さや、操舵の際に船体の質量を意識させる操作性の作り込みや船体の軋みや帆が風を受けるSEなど、重さ表現の技術の粋を結集させているという技術的な凄みが一つ。
 
二つ目は、そこに今度は正反対である身軽なアサシンの船長を配し、船内の移動や敵船との白兵戦を爽快にこなすアイデアの妙だと思います。
 
この重さと軽さの対比がもたらす感覚がアクションゲームとして官能的で美しく、ここはアクションを得意とするUBI的なバランス感覚でした。
 
思えばアサシンクリードシリーズも、大河的な歴史ものとしての重みと、SFとしてのアニムスというデジタル空間設定の軽さとの対比。
 
天を衝くようにそびえ立つ建造物を昇りダイブさせられることで際立つ歴史の巨大さと、それと相反する人間のちっぽけさ。しかしそれをすいすいと昇って見せる軽快なアクションの妙と、まるでゲーム全体が精神の軽やかな自由を求めるアサシン教団と堅固な規律を重んじるテンプル騎士団の対比構造の相似形が発現したかのようで、そこに美を見出してしまいます。
 
実は今作をプレイしていて覚えた感覚は初めてのものではなく、アサシンクリードシリーズにずっと内在し潜伏していたものだと分かり、改めてこのシリーズは昔から傑作だったのだと気付かされました。
 

最後に

 
クリアまで約30時間ほど。
 
ストーリーとしては、エツィオを主役とした一連の作品群や、親子で世代が移り変わる壮大なスケールの3のほうが好みです。
 
しかし、海戦を主軸とする一本のアクションゲームとしての到達度でいったら間違いなくシリーズ屈指どころか他のアクションゲームと比較しても優秀すぎる傑作でした。
 

アサシンクリードシリーズ

タイトル
ハード
アサシンクリード3 リマスター
PS4
アサシンクリード ローグ
PC
アサシンクリード ユニティ
PS4
アサシンクリード シンジケート
PS4
アサシンクリード オリジンズ
PS4
 
 
 
 
 
 
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