トレーラー
評価:80/100
ジャンル | オープンワールド ステルス |
発売日(日本国内) | PS3・Xbox360版:2012年11月15日 PS4リマスター版:2019年5月23日 |
開発(デベロッパー) | Ubisoft Montreal |
開発国 | カナダ(UBIの本社はフランス) |
ゲームエンジン | AnvilNext |
ゲームの概要
このゲームは、現代より遙かに進んだ古代文明を築いた謎の存在“かつて来たりし者”が残した遺産を巡り、自由を求めるアサシン教団と、秩序を重んじるテンプル騎士団という二つの勢力が歴史の影で争いを繰り広げるシリーズ三作目です。
3は、のちに独立戦争の遠因となるイギリスとフランスのアメリカ植民地の奪い合いであるフレンチ・インディアン戦争と、本国イギリスがアメリカ植民地に課した重税への反発で起こったアメリカ独立戦争という根っこが繋がった二つの戦争を親子二代に渡って体験するという主旨です。
今作はシリーズでも異例のテンプル騎士団の父とアサシン教団の息子二代に渡る壮大なスケールの物語と、所属する組織の信条により父子が敵味方に別れ殺し合うという壮絶な運命を描くなど、父子の話が中心となります。
ただ、歴史の再現度を非常に重視する硬派なスタンスの影響でゲーム的な面白味が犠牲となっており、単純なゲームとしての楽しさではエツィオシリーズに比べかなり劣ります。
それでも、ネイティブアメリカンのアサシンという非常に攻めた設定や、自然児らしさを最大限生かす都会ではなく森を駆け回るパルクール、圧巻の迫力を誇る船の操舵など、アクションで挑戦している点は多々あり全体としては良作にまとまっています。
七年戦争とアメリカ独立戦争を描く気概
今作はゲーム性を犠牲にしてでも歴史の再現度を重視するという姿勢がシリーズでも突出しており、単純なゲームとしての面白味で言うとシリーズでも下位の部類だと思います。
それはいきなりアメリカ独立戦争から始めても問題ないのに、わざわざプロイセンとオーストリアの七年戦争に関連するフレンチ・インディアン戦争から始めるという徹底ぶりからも見て取れます。
なぜなら、イギリスがフランスと植民地を巡って争ったフレンチ・インディアン戦争の莫大な戦費を賄うためイギリス本国がアメリカ植民地に重税を課したことがキッカケで独立戦争が起こるからです。そのため、本気でアメリカ独立戦争を描くなら七年戦争とフレンチ・インディアン戦争を扱うことは避けられず、これだけでUBIの歴史への強いこだわりが伝わってきます。
ちなみに3の前日譚にあたる『アサシンクリード ローグ』も七年戦争を描く内容で、今作の冒頭ヘイザムと同じ時代です
3はシリーズの中でも特に歴史を体験させることに主眼が置かれており、ある程度流れを理解していないとゲーム内で自分が何をやらされているのか曖昧となりあまり楽しめません。
最低でも王党派と愛国派の区別が付かないとストーリーが理解できません
パルクールの快感が後退
マップが広大なゲームの付き物である、目的地までの長距離移動の煩わしさに一つのブレイクスルーをもたらしたのがアサシンクリードのパルクールだと思います。
本来なら迂回するほうが早く目的地に辿り着けるようなケースですらすいすいと建物をよじ登る操作が快感で、つい遠回りになり兼ねない障害物(建造物)を乗り越えるルートを選んでしまうほどアサシンクリードのパルクール移動の快楽性は優秀で初めてプレイした際は感動しました。
移動を楽しませるというアプローチはオープンワールドの弱点である移動時間の長さをカバーする戦略としては非常に理に適っており、ファストトラベルなど移動をショートカットするという発想より遙かに好きです。
それに、どの壁が登れるのか建物の構造や壁の凹凸を観察する必要性が生まれることや、遠くにある高い建造物も全てアクションの舞台となるため、周囲の景色がただの背景でなく遊びの空間となる利点もあると思います。
しかし、3ではマップが広くなった影響とパルクールで駆け回る高い建造物がない北米という舞台設定の都合上、シリーズでも移動が最も退屈でした。
広大で自然豊かな北米を舞台にしているため高い建造物が乏しく、マップがより広くなったことが災いし移動がただ長距離を馬やダッシュで走らされるだけの作業と化しました。
それに、今作はファストトラベルが高台のビューポイントに設定されていません。迷路のようなフリーメーソンの地下通路を進み、パズルを解いて扉を開放しないとファストトラベルポイントが増えないという面倒な要素が追加されており、これも移動にやや苦痛を伴う原因の一つでした。
ビューポイントも建物だけでなく背の高い木を使うことで北米の大自然を強調するというアイデアはユニークですが、同じ形の木がやたら目立ち、使い回しが露骨なのはマイナスでした。
この長距離の単調な移動が多いという問題や、ファストトラベルポイントの解放がやたら面倒など、3における移動の楽しさの後退はそのままゲームとしての面白さの後退の大きな要因となっていると思います。
ゾクゾクする操舵演出
アクションにおいて今作最大の魅力と言っても過言ではないのがシリーズ初となる船の操舵でした。
舵を持つ主人公コナーの背後にカメラを置き、わざと視界を制限するという発想が発明的で、巨大な船を操舵するというダイナミズムを体感できます。
この船を操舵する際の重量感を伴う操作性とダイナミックなカメラワークが相まって船の操舵アクションから今まで味わったことのないゾクゾクする感覚を覚えました。
これは初めてアサシンクリードシリーズをやった際にお手軽に壁をよじ昇り建物と建物の間をリズミカルに飛び越えていくパルクールの快感を知った時の感覚を思い出させてくれます。
手軽にパルクールを味わえるという発明をしたアサシンクリードが今度は船の操作でも同じような革命をもたらしてくれたのが喜ばしく、これだけで本作をプレイして良かったと思えるほどです。
ただ、敵の船との砲撃戦はやることが基本的に同じなためややミニゲーム的で退屈なため、この船の操作の楽しさをもっと生かした別のシステムを作って欲しかったところ。
ネイティブアメリカンのアサシンという挑戦
今作で個人的に最も魅了されたのが、アメリカ大陸の先住民であるネイティブアメリカンとイギリス人の混血児をアサシンとすると言う設定の妙です。
アメリカ独立戦争という自由を謡いながらその実イギリスの内乱かつ白人同士の小競り合いでしかない争いに先住民の視点を入れることで、単純に植民地側の正義の戦いにしなかった判断は至極正しかったと思います。そのおかげで、独立戦争に植民地側が勝利しても単純な戦勝ムードはなく、これからアメリカ合衆国の未来に待ち受ける様々な人種差別を予感させる重い余韻を残す終わり方で、作り手の誠実さを感じました。
物語もテンプル騎士団の暗殺者である父ヘイザムと、アサシン教団のアサシンである息子が対立するというシリーズでも屈指のドラマチックな父子関係性にも圧倒され、歴代主人公の中でもコナーが一番好きです。
コナーの声をあてている声優の浪川大輔さんはアニメの『Fate/ZERO』のウェイバーのイメージが強すぎて最初はミスキャストなのではないかと思いました。しかし、徐々に一人前のアサシンとして成長していくと繊細さを帯びながらも逞しく、逆に最初のなよなよしたような声とのギャップで成長が実感でき素晴らしい存在感でした。
倒すべきテンプル騎士団の仇でありながら、実の父でもあるヘイザムとの父子関係を描くのにこの声の繊細さは非常にプラスに働いていると思います。
途中、親子で共に行動するミッションがあり、ここでは父ヘイザムが見せる例えアサシン教団の人間だろうと我が子を想う親の顔や、コナーも父へ向ける思慕の想いや、それでもテンプル騎士団で倒すべき敵であり私情に走ることが許されない苦悩が交差し、何度もプレイすると残酷な運命に胸が締め付けられます。
現代編もデズモンドと父の話で、アメリカ独立戦争というイギリスという親から子の植民地が独り立ちするような時代背景と関連し、物語も親子の話に絞ったのは大正解だと思います。
愉快なアサシン村の発展
今作で最もハマったサブミッションは、コナーとアキレスが暮らすアメリカ植民地におけるアサシン教団の本部である“ダベンポート・ホームステッド”を拡張していくミッションでした。
これは、各地に存在するホームステッドミッションをクリアすると、徐々にホームへと人が集まり、村が発展していくという軽いやり込み要素です。
これによりクラフト出来るアイテムが増え、輸送隊を派遣する取引で効率的にお金が稼げるようになるなど様々な恩恵が得られます。
ただ、ゲーム的な要素より単純に村が発展し暮らしが豊かになっていく光景を眺めるほうが好きです。ミッションをクリアすればするほど村人同士が仲良くなり、村で子供が生まれたり結婚したりと、単純に村人同士の人間関係がより深まっていくため、都会の喧噪に疲れ穏やかなホームに帰ると田舎の風景にホッと癒されます。
それに、アサシン教団を壊滅寸前にまで追い詰められたった一人孤独に暮らしてきたアキレスに対し、アサシン教団の自由という信条を掲げた村が発展していく様はアメリカ植民地のアサシン教団復活の象徴としても、コナーの師匠への恩返しとしても感動的です。
最後に
クリアまで約25時間ほど。
全体的に歴史を重視する地味な内容で、単純な面白さではエツィオが主役のシリーズに比べると大きく劣ります。
それに、誤動作が耐えない細かい操作性の悪さや、ミッション中一体自分が何を失敗したのかさっぱり分からない理由で何度もゲームオーバーになるなど、そこら中ストレスだらけでお世辞にも一本のゲームとして完成度が高いとは思えません。
ただ、重量感のある船の操舵や、森を庭として育ったネイティブアメリカンのアサシンらしい自然の中でのパルクール、アメリカ独立戦争になぞらえる親子の物語など、3独自の味はしっかりあり、大好きな作品です。
アサシンクリードシリーズ
タイトル
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ハード
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