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【PS2】フロムの高難易度ゴリ押しロボットアクションゲーム |『A.C.E.(アナザー・センチュリーズ・エピソード)』| レビュー 感想

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評価:55/100
作品情報
発売日(日本国内) 2005年1月7日
開発(デベロッパー) フロム・ソフトウェア
開発国 日本

ゲームの概要

 
このゲームは『機動戦士ガンダム』シリーズや『聖戦士ダンバイン』、『重戦機エルガイム』など、様々なロボットアニメの機体が集結するロボットアクションゲームです。
 
『アーマードコア』シリーズという傑作ロボットアクションゲームを手掛けるフロム・ソフトウェアが制作しており、難易度もフロムのゲーム基準なためかなりの高難易度です。
 

一作目は高難易度ですが、二作目は低難易度に調整されています

 
フロムの高難易度志向と、スパロボ系お祭りロボットゲームの食い合わせが非常に悪く、爽快感を売りにしなければならないはずのジャンルでストレスばかりが溜まる一体誰が得をするのか分からないターゲット不明のゲームでした。
 

フラッシュフォワード型の凝ったシナリオ

 
本作は多彩なスーパーロボットが大集合して共闘するというこの手のゲームにしては珍しい、時系列を前後させるストーリーテリングを採用しており並々ならぬ気合いを感じさせます。
 
ラー・カイラム隊が民間人の乗っているシャトルを撃墜し、90万人のスペースノイド(宇宙に暮らす人々)を虐殺したという衝撃的なOPから始まり、なぜそのような凶行に及んだのかという経緯が語られていくというスタイルです。
 
正直、ラー・カイラム隊がそんなことをするはずがないことはどのプレイヤーも分かっており予定調和感は否めません。それでも「これは普通のスパロボ系のよくあるゲーム群とはひと味違うぞ」と見せつけるには十分なインパクトがあり期待値がぐっと上がりました。
 
ただ、結局ストーリーはまったくと言っていいほど盛り上がらないので、話のつまらなさを誤魔化すためのこけおどし程度の役割しか果たせていません。
 
奇抜なスタイルを採用している割に、プレイヤーが想像する結末を裏切るようなサスペンスフルな展開もなく、ただ一直線にOPで見せられた場面に収束されていくためこの方式を最大限生かしきれているとは思えませんでした。
 
もっとプレイヤーの想像を先読みして小刻みに裏切り、動揺させないと、未来に起こることを明示した意味がありません。
 
例えば、ラー・カイラム隊にスペースノイドに対する恨みを抱くような事件を体験させるとか、似たようなもう少し小規模な事件を起こさせるなど「もしかして、この人たちならあの事件をやりかねない」という疑念をプレイヤーに抱かせるような工夫が一つもないため、ただ時系列を前後させるストーリーテリングが目的化しただけの内容にしかなっていません。
 
雰囲気を出すのは得意でも、このような真っ当なストーリーテリングがいつもド下手くそなフロムらしいと言えばらしい内容でした。
 

原作感が希薄すぎて盛り上がらない本編

 
ストーリーのつまらなさに関連するのが、参戦作品の各原作キャラがほとんど空気のような扱いなことです。
 
多分スパロボのような立ち絵(もしくはキャラの顔のアップ絵)と会話ウィンドウでのストーリー説明やキャラ同士のやり取りは凡庸すぎて避けたかったのだと思います。
 
ただ、そのせいでラー・カイラム隊に加わっているキャラ達の背景が一つも描かれないため、原作を知らないとどのキャラとどの敵に因縁があるのかすらも分からないような有様です。
 
原作を知っている前提で話が進むため、原作を知っているorスパロボをやり慣れていると特に困りはしません。そうでない場合は終始謎な人たちが謎なことをやり続けているようにしか映らないであろう不親切さで配慮が欠けています。
 
それに、原作再現度も薄いため原作ファンも納得できるとは言えない不完全さです。そのため原作未見だと意味が分からないし、原作ファンも再現度が低くて味気ないと全方位的に物足りなさだけが残ります。
 

カスタマイズ感が希薄

 
本作には申し訳程度に機体のカスタマイズ要素が用意されています。
 
しかし、これが何かの能力を上げると、対になる能力が下がるタイプのもので、スパロボのような一方的に能力が上昇するようなシステムに慣れていると、非常に不満を覚える内容です。
 

昔はスパロボも装甲を上げると運動性が落ちるなどマイナス要素がありました

 
そのせいで、せっかく稼いだポイントで能力のバランス調整のようなものをさせられるだけなので、機体強化がインセンティブとして機能しておらずカスタマイズする楽しさが希薄です。
 

エースパイロット感が希薄

 
このゲーム最大の問題点は極悪な操作性です。人をイラつかせたいのかと思うほどのストレスゲーで、まともにプレイヤーの要求通りに機体が動いてくれません。
 
まずロックオンシステムが中途半端で、ロックオンしている敵に対して攻撃時の補正がありません。少しでも自機の角度が明後日の方向を向いていればそちら側に向かって射撃するので、一発限りの強力な攻撃など、高確率で外れるため本気で腹が立ちます。
 
普通のアクションゲームだと多少自機が横を向いていようがロックオンした敵のいる方角のほうが優先順位が高く、敵側に勝手に向いて攻撃してくれるのにこのゲームは自機が向いている方角のほうが優先なのかまともに攻撃が当たりません。
 
だったら、最初から同社のゲームである『アーマードコア』のように敵を常に正面に捉えていないとロックオンが外れるシステムにしてくれたほうが遙かにマシでした。
 
これだとロックオンはしているのにロックオンしているほうに攻撃してくれないというバカみたいな状況が頻発するのみで意味が分かりません。ロックオンした上にロックオンした敵がいる方角を向いていないといけないため、目に見えない透明なロックオンがもう一つあるような感覚です。
 
さらにロックオンしたとしても攻撃がまったく当たりません。偏差射撃をしてくれないため、少しでも敵が移動するとほとんどの直線的な攻撃が外れ非常にイライラします。弾速も遅いため、敵にスイスイ回避されストレス上昇の拍車が止まりません。
 
そのせいでこのゲームは異常にホーミング系(自動追尾系)の武器が使いやすく、ほとんどホーミング系の武器だけでクリア可能です。
 
攻撃ボタンも遠距離攻撃と近距離攻撃が同じボタンで、距離によって勝手に切り替わるため、遠距離攻撃がしたいのに敵が接近してくると勝手に近接攻撃に切り替わり鬱陶しい限りでした。
 
遠距離攻撃が得意な機体だと、ザコ敵がわらわら群がってきて乱戦になるステージなどはストレス地獄と化します。
 
ただでさえイラつく要素だらけなのに、さらに地上戦では高度、宇宙戦では軸合わせという要素が加わりイライラ地獄の極致に。少しでも角度が異なるとまともに敵に向かって攻撃してくれないため常に高度合わせや軸合わせをさせられ、しかもこの作業に面白味は皆無です。
 
A.C.E.(エース)というタイトルとは裏腹に、エースパイロット感を与えさせないために作ったかのようなゲーム性が皮肉にしか見えません。
 

その他もろもろガッカリなシステム群

 
本作は複数のミッションが束になるブロック制になっており、一度撃破されたユニットは同一ブロック内で使用できなくなるという『スーパーロボット大戦 スクランブルコマンダー』のようなペナルティが課せられます。
 
その性で、強力なユニット(ホーミング系の武器を積んだ機体)やお気に入りのユニットが一度やられると次のブロックまで使用不可能になり、攻略が困難になるorやる気がダウンします。
 
その他にも、強い機体と弱い機体の差が激しすぎるため、お気に入りの機体を自由に使い辛いという点もマイナスでした。
 

最後に

 
凝ったストーリーテリングを採用する攻めたアプローチは悪くはないものの、操作性の極悪さのせいでマイナスの印象しかありません。
 
フロム・ソフトウェアのような何でも無駄に高難易度にしたがる会社に、この手のファンアイテムのようなゲームを任せるとロクなことにならないというお手本のような一作でした。
 

余談

 
ゲームの完成度は酷いのに、ミッション中の斬新なアイデアはさすがフロムといったものが多く、ここは評価できます。
 
・演説中にマスコミのヘリから隠れて敵を迎撃しないといけない
・マスドライバーの攻撃を避けながら戦う(喰らうと一撃死)
・特攻してくる自爆艦から逃げながら戦う(接触すると一撃死)
 
などなど、初回プレイは戦闘で死ぬよりギミックで死ぬほうが多いのもフロムらしいです。
 
フィールドを観察させ、強力な攻撃に対してどう対処すればいいのかをプレイヤーに考えさせようとする作りもフロム的でここは好感が持てました。
 

A.C.E.シリーズ

 
 
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