はじめに
今回は2022年10月に読破した本をブログでのレビュー記事あり・なし問わず紹介します。
今月はBS-TBSで放送された『ヒロシのぼっちキャンプ』という、お笑い芸人のヒロシがソロキャンプをするだけのゆるいTV番組に大ハマリし、暇さえあればAmazonプライムで見ていました。
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この番組は毎回ただヒロシが大好きなキャンプをするだけの地味な内容で、起承転結も無ければ事件も起こらず、ただただ自然と戯れるヒロシを見守るだけで、見ているとほんわか癒されます。
このような世間と歩調を合わせず、自分の歩幅で生きる人を見ると元気がもらえ、生きる気力が湧いてきます。
ヒロシ以外にもたむけんのようなTVという他の共演者と足並みを合わせることを強要される場では本領を発揮できず一人になって自分のペースを取り戻すと確かな個性が見えてくるお笑い芸人をネットで発見しやすくなったのもいい時代になったなと思います。
そもそも本来芸人になるような人は他者と足並みを合わせるのが苦手で、笑いが好きというより、笑いで苦しみを緩和しないと人生が辛すぎて生きていけない人たちのほうが多く、TVが作り出した明るいお笑い芸人像のほうが歪んでおり、こちらがあるべき姿だと思います。
ヒロシにとって無になれる癒しの時間がソロキャンプなら自分にとってそれは何だろうと考えると、スーファミが真っ先に思い浮かびました。
あらゆるゲームハードの中で一番好きなものは何かと聞かれたら間違いなくスーファミで、自分のゲーム観はスーファミで作られていると言っても過言ではありません。
これまではスーファミを所有していても過去の思い出に逃避するのは毒だと考え意識的に距離を取っていたものの、ここ数ヶ月自分だけの幸福とは何かを真剣に考え続けた結果、ふと過去の思い出は他者と共有していない自分独自のものだと気付き、思い出に浸ることへの罪悪感を捨てようと決意しました。
結果スーファミをやり出すと楽しすぎて止まらなくなり、あっという間に10月が過ぎ去りました。
元々ゲームはスケールが大きくカタルシスのあるストーリーが堪能できるRPGや、バトルの完成度が高いRPGやシミュレーションRPGを好んでいました。それなのに途中からハードやテクノロジーの進化に追いつき適応することが目的化し、どこかで自分のペースを捨てゲーム側に合わせたためオープンワールドゲームのような移動がかったるいだけのゲームをひたすら苦痛に耐えながらプレイし続けるなど、付き合い方を誤ってしまいました。
それがスーファミになると無駄なものが削ぎ落とされアイデアが剥き出しのためゲームの技術自慢合戦に付き合う必要がなく、単純にゲーム性が合う合わないでプレイすればいいだけで、最近のインディーズゲームはこの時代のゲームへ回帰しようとする流れであることがよく分かります。
『シャイニングスコーピオン』や『聖剣伝説3』、『ファイナルファンタジー5』、『クロノトリガー』、『天地創造』、『ドラゴンボール 超サイヤ伝説』、『マザー2』、『バハムートラグーン』、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』と色々なタイトルを片っ端からプレイしましたが、特に驚かされたのが『バハムートラグーン』です。
このゲームは、ゲーム内の全アイテムがドラゴンのエサであり、エサを与えドラゴンを育成し、育てたドラゴンとブリーダーのような存在であるドラグナーが協力して戦うというシミュレーションRPGです。
ドラゴンとコンビを組むのがドラグナーだと勘違いしていました。ゲームを進めたらドラグナーは特別な存在であると分かり訂正します
特徴的なのがドラゴンがAIで動くためプレイヤーが操作できないことです。このせいで勝手にフィールドを動き回るドラゴンをプレイヤーがフォローするように立ち回るため、普通のシミュレーションRPGとは感触が異なり新鮮でした。
このドラゴンが全てAIで動くというアイデアのおかげで、ドラゴンは自分の感情や意志を持ち協力はしてもらえるが完全に支配することは出来ないという生き物っぽさを演出できており、ゲームの核となるドラゴンという存在をシステムレベルで表現出来ていることに感心しました。
現在なら絶対に見た目をリアルにしてアニメーションをやたらモサモサにするとか視覚に訴えるのに対し、システムだけでこの生物感を出せているのは凄く、プレイしていると敵に突撃して孤立してしまったドラゴンを助けなければと焦り、たまにドラゴンが追撃してくれると共闘感が生まれよりドラゴンが愛おしくなるなど、やはりゲームってアイデアで作る物なのだと痛感します。
何本かのゲームはクリアしたのでレビューを書こうかと悩みましたが、現代はレビューはテキストより動画がメインでゲーム系YouTuberもたくさんいるため、もはや自分が書いても意味がなく今後はゲームレビューはやらないと思います。
あと、ヒロシのキャンプ番組やスーファミ三昧の日々以外で印象的だったのがAmazonプライムで偶然発見した『白く濁る家』という短編ホラー映画です。
この映画はクラウドファンディングで資金を集めて作られた超低予算の映画ですが、是枝 監督の『歩いても歩いても』の設定をド直球にホラーに直したような設定で、個人的にツボでした。
是枝監督の映画の中でもホームドラマに偽装したホラーのような『歩いても歩いても』が一番好きなので、それをそのままストレートにホラーにしたら面白いに決まっており、この作品も概ね好意的に見ることができました。
ただ、終盤にホラーからコメディに変わり果て緊張感のある雰囲気が壊れてしまうのが唯一残念で、もっと救いのない苦い終わり方をしてくれたほうが好みです。
このようなギクシャクした家族がなぜそうなってしまったのか理由が徐々に明らかになっていく過程でホラー化していくようなアプローチの作品は“歩いても歩いても系ホラー”としてジャンル化して欲しいと思います。
小説 1冊
・『雷の季節の終わりに』 著者:恒川光太郎
冬と春の間に雷季 という雷の季節がある異界の村“穏 ”を舞台に、徐々に村の暗い因習や主人公の出生の秘密が明らかになっていくファンタジー小説です。
ファンタジー小説としてはディテールがユルユルで若干物足りないものの、異界の穏と現実の日本が交互する先が気になるミステリアスなストーリーや、主人公とヒロインの甘酸っぱい関係性が魅力のジュブナイル要素など、読み始めると止まらなくなる面白さでした。
本格的な長篇ファンタジーと言うよりは、短篇の数珠つなぎのような作風で、期待しすぎなければ十分楽しめます。
書籍 5冊
・『感じる経済学 コンビニでコーヒーが成功して、ドーナッツがダメな理由』 著者:加谷珪一
経済学という日常生活と馴染みのない学問を日々の営みと重ね自分事として考えるという主旨の経済学の本です。
この本は、一見軽そうな内容に見えて、実際は日本経済の構造的な欠陥というハードな問題に踏み込んでいくため日本の未来に絶望し、読んでいて気が滅入ってきます。
広く浅くですが、この本を一冊読むと日本経済の問題点がぼんやり見えてくるため読んで損はありません。
・『知ってそうで知らなかった ほんとうの株のしくみ』 著者:山口揚平
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感情で株を売買することを戒め、合理的な判断のみで株取引に挑むことの大切さを説く投資本です。特にバリュー株投資(企業の価値に対して割安な株に投資する手法)に対する心構えが中心となっています。
投資に感情を持ち込むなという警告はあらゆる投資本で見かけますが、この本はその解説のキレが良く、読んでいてスッと腑に落ちました。
全体的に解説が理路整然としているのが特徴で、投資とは今ある資産をより価値ある資産に交換する交換作業にすぎないという話や、株式投資とは結局のところ価値と価格の差を見抜くゲームでしかないなど、投資とはただ資産を増やすための手段にすぎず徹底的に理論だけで物を考えろという教えが貫かれています。
中でもなぜ買った株価の上下がやたら気になるのかという悩みに対して、その株を買う根拠がないのに買っているからという解答はグサッときました。その株を買う根拠があって買っているなら所有する株の株価が上昇することに疑いを持つはずがなく、株価の上下が気になるということは株を買う際の根拠が乏しいだけという指摘はまさに自分自身の現状そのものでした。
この本が言いたいことは、投資とは自分が算定した価値より低い価格の時だけ買えばいいというただそれだけの話で、このシンプルさのおかげで読んでいると頭が整理されるような快感があります。
・『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術』 著者:高橋ダン
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ウォール街で投資銀行(モルガン・スタンレー)に勤務したのち、ヘッジファンドを共同設立した経歴を持つ著者が、ライオン投資という長期投資と短期投資を組み合わせる投資術を紹介する投資本です。
この本は読んでいて楽しいものの、一冊の本としてはバランスが悪くあまり出来がいいとは思えません。と言うのも、かなりのページが著者の自伝に割かれ、ライオン投資という投資術に関する記述があっさりで、しかもテクニカル分析についてもそこそこ触れるなど、投資を広く浅く紹介しすぎるあまり初心者向けとしては説明がまるで足りず、中級者向けとしては内容が薄すぎると、誰に向けて書かれた本なのか曖昧です。
しかも、本の中で紹介される投資手法について詳しく知りたい人は著者のYouTube動画を見て欲しいという箇所だらけで、正直YouTubeに誘導するために書かれた本という印象が拭えません。
強いて言うなら著者のファン向けの本です
ただ、投資本としては内容が薄いですが、著者の自伝部分であるウォール街で働くために大学時代に行った工夫やウォール街で働いた際の体験談は貴重な情報でした。
ウォール街とは漠然と金の亡者がうじゃうじゃいるといったイメージしかありませんでしたが、アメリカのエリートが集う大学の中でもさらに一握りの優秀な学生しか就職できない難関中の難関であり、ウォール街に就職することだけを考え大学時代の行動を全て綿密に組み立てていたという著者の実体験は驚きの連続でした。
しかも、ウォール街に就職すると今度は完全実力主義の世界で、会社から運用を任されるお金と自分のお金の境界も曖昧で、あまりに多くの損失を出して自分の資産が全て吹っ飛び精神が壊れてしまう人間もいるためほとんどの企業はカウンセラーを用意してメンタルのケアをしているなど、実際にウォール街で働いた人でないと経験できない過酷な話は貴重でした。
著者自身がヘッジファンドで10分で7億円もの損失を出してしまい数ヶ月間ショックで茫然自失とした話なども生々しく、投資術の本というより自伝として楽しめます。
・『三菱・三井・住友 「三大財閥」がわかる本』 著者:財閥研究会
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日本の三大財閥である三菱、三井、住友それぞれのグループに属する企業や、各財閥がどのような経緯で誕生したのかを解説する本です。
投資をしていると三菱やら三井やら住友やら安田やら財閥系のグループ企業の名前を毎日のように目にするため、キチンと日本の財閥に関して勉強したいと思いこの本を読みました。
ただ、この本は2016年出版なためアベノミクスの話題がちらほらあり、しかも世界情勢に関する情報も古く、今現在読んでもそれほど得るものはありません。
それに、各財閥ごとのグループに属する企業やその規模、企業ごとの売り上げや利益といった無味乾燥な情報の羅列が大半を占め、ハッキリ言って一冊の本としてはまったく面白くありません。
各財閥のグループ企業ごとの売り上げや利益の話が延々続くため頭に内容が何も入ってきません
しかも、一番知りたい各財閥がどのように誕生し成長していったのかという歴史の解説もあっさりしており、何もかも痒いところに手が届かない物足りない内容でした。
一応なんとなく各財閥ごとの色は分かりますが、到底この一冊を読んだだけで理解することは不可能です
・『最短でラクラク2000万 手堅く稼ぐ! 成長株集中投資術』 著者:株の買い時
投資系YouTuberでもある著者が、長きに渡って自分流に磨き上げた成長株(グロース株)投資のテクニックを解説する投資本です。
注意すべき点は、インデックス投資や高配当株投資のようなコツコツと積み上げる投資や、長期投資のようなじっくり腰を据えるような投資ではなく、リスクを取って短期間に大きな利益を狙う投資スタイルを推奨しており、他の比較的安定性の高い投資術を紹介する本を一通り読んでからのほうがいいと思います。
この本は、著者が長年実践し磨き上げた成長株投資術を事例を交えて細かく解説してくれるため具体的で読んでいて学びが多くありました。
個人的に最も影響を受けたのが、短期投資では同じ銘柄を何度も売買するべきという指摘です。
自分の場合、短期投資で株を買う時はその時々のトレンド寄り(新型コロナの再流行やインバウンド需要、大ヒットほぼ確実なゲームの発売前にゲーム会社の株を安く仕込んでおくなど)で銘柄を選んでいましたが、この本では同じ銘柄をずっと追い続けるほうが株価の動きの癖が読め勝率が上がるとあり、確かに言われてみると長期で株価の上がり下がりをチェックしている銘柄は動きの予想がしやすいと気付き、このやり方を今後は取り入れようと思います。
ちなみに『スプラトゥーン3』発売時は単元未満株で任天堂株を買ったら、(株式分割前で)約4500円も株価が上がり、100株買えていたら一週間で約45万円(税引き後だと36万円)儲けられたのにと僅かな利益が出たのにショックのほうが上でした
長期投資に比べると売買回数が増え時間拘束が長くなる短期投資で、かつ大幅な下落リスクもある成長株投資と、ある程度人を選ぶ投資スタイルで到底万人向けではありません。
ただ、この本に書かれた投資テクニックは即自分の投資に反映させたいと思うものばかりで読んで損はありませんでした。
最後に
来月も『ヒロシのぼっちキャンプ』を繰り返し見て、今度はYouTubeのキャンプ動画のほうも見る予定なので、当分はヒロシブームが続くと思います。
まさか自分に空前のヒロシブームが到来し、日々ヒロシに癒されるなんて一発屋としてTVに出ていた頃からは想像もつかず、人生とは何が起こるか分からないということを痛感した月でした。
「ヒロシです・・・」のネタはまったく面白くありませんが、ソロキャンプで見せる素のヒロシの表情は癒されて最高です