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【#23】お金に始まりお金に終わる・・・ | 今月読んだ本紹介 2022年7月号

はじめに

 
今回は2022年7月に読破した本をブログでのレビュー記事あり・なし問わず紹介します。
 
今月は投資の勉強に明け暮れながら、投資関連の本やお金を哲学するような本を読み漁りました。
 
6月から高配当株を中心とした投資を始めたため毎日購入する銘柄選びや株を長期保有する企業の財政状態を把握するため様々な投資指標を調べ続けるなど、投資に始まり投資に終わった月でした。
 
意外だったのが投資が楽しく普通に趣味として継続できると分かったことです。むしろ楽しすぎて株についてあれこれ調べ出すとあっという間に一日が終わってしまうため時間がまるで足りません。
 
銘柄選びは楽しく、企業の決算書や様々なデータに目を通すことも大して苦にならず、なぜ投資をもっと早くに始めなかったのかと後悔しました。
 
今月は投資にお金、テクノロジーに関する本ばかり読み、そのどれもが刺激的で、かつテクノロジーの本は未来予測に繋がりそのまま投資に応用できと、ここ数年の読書が一気に投資に結びつき本当に読書中心の生活に切り替えて良かったと思える月でした。
 

小説 1冊(マンガ 1冊)

 
・『序の舞』 著者:宮尾登美子
 

 
明治~昭和にかけて活躍した日本画家・上村松園しょうえんをモデルとした津也つやと、松園を支え続けた母・勢以せい、女性画家に対する画壇や世間の激しい差別に抗い続けた二人の母子の生涯を描く小説です。
 
『一絃の琴』と同じように実在する偉人をモデルとした小説ながら、作者が自分自身が経験した女性差別の苦しみを主人公に重ねており、より宮尾さん自身が濃く刻まれた作品でした。
 
宮尾小説で描かれる人間の一生はどれも大河ドラマ級の重さなので一ヶ月に一作読むくらいで丁度よく、今月もこれ一作だけで普通の小説数冊分の人間の業を堪能できました。
 

 
・『35歳で夢をつかんだ「資産家」シンさんの教え
 

 
投資家の園原新矢をモデルとした資産家シンさんが、お金の稼ぎ方のコツや、お金持ちになったあとに資産を減らさずその状態をどう維持していくのかをレクチャーするマンガです。
 
地道な貯蓄や投資でコツコツと資産を築くことの大切さと同時に、基本はホリエモンと似た自己投資が最大の投資であり、自分の資産価値を最大まで高める生き方を推奨しています。
 
並外れた行動力があり自分に自信がある人は堅実な貯蓄より派手に散財する自己投資を勧める傾向が強めですが、このマンガは投資家がモデルのためか自己投資に寄ってはいるものの最終的には貯蓄や投資とのバランス型に落ち着いており自己投資に全振りのホリエモンに比べるとマイルドです。
 
実体験をベースに書かれた本なので具体的であるのと同時に、お金を通して結局自分とは何なのか、本当の幸福とは何か、自由に生きるとはどのようなことか、お金の哲学が絡んでくる内容でかなり自分好みな作品でした。
 
このマンガが肌に合えば後述する『お金を持ち続けられる人になるための「自分資産化計画」』というシンさんのモデルとなった投資家が執筆した本もオススメです。
 

書籍 10冊

 
・『DXの思考法 -日本経済復活への最強戦略-』 著者:西山圭太
 

 
企業のIT(デジタル)化など様々な意味を含むDX(デジタル・トランスフォーメーション)のノウハウではなく、その根っこにあたる思考法について解説するという一風変わったアプローチの本です。
 
この『DXの思考法』は、今月読んだ本の中ではダントツの満足度でした。この本たった一冊を熟読するだけでどんな場面でも一生使えるであろう思考法が身に付くので本当にお得です。
 
あまりにものめり込み過ぎて2回、3回と読み直し、この本に書かれているデジタル的思考法というものを自分なりに腹落ちさせるため何十ページもノートに自分なりの仮説を書き続けるなど、ここ数ヶ月のうちに読んだ本の中では最も価値ある一冊でした。
 
これまで様々なビジネス書やテクノロジーに関する本を読んでぼんやりとしていたアナログ時代とデジタル時代の思考の決定的な違いとは何かという問いがこの本の主旨と結びつき重要なヒントが掴めた気がします。
 
明らかにこの本を読んだ後はDX系の本への読解力が飛躍的に向上したので本当に読んで良かったと思える一冊です。
 

 
・『仮想通貨とフィンテック』 著者:苫米地英人
 

 
タイトル通り、仮想通貨(主にビットコイン)とフィンテック(ファイナンス・テクノロジーの略、金融のオンライン・デジタル化)について解説される本です。
 
この本はフィンテックのことを詳しく知りたいという動機で読みましたが、内容は8割が仮想通貨やブロックチェーン技術の解説で、求めていた内容とは異なりました。
 
それでも、フィンテックは銀行やクレジットカード会社という既存の産業に大打撃を与える存在であるという解説が分かりやすく、お金がデジタル化していくと世の中のどの産業が影響を受けるのか何となく想像できるようになります。
 
ただ、出版されたのが2017年とテクノロジーに関する本にしては賞味期限切れに近く今読んでも最新の情報は学べないため読む価値はさほどないと思います。
 

解説は面白いため読んでムダということはありません。ただやたら過去の功績に関する自画自賛が多く若干うさん臭さもあります

 
 
・『デジタルマネー戦争』 著者:房広治
 

 
GVEというDX(デジタル・トランスフォーメーション)・プラットフォーム(デジタルマネーに関するセキュリティ全般)の事業を行う企業の代表取締役である著者がDXやフィンテック、全てのお金がデジタル化する未来に関して語る本です。
 
まずこの本は『仮想通貨とフィンテック』の内容と3~4割くらい解説が被っており、最初は間違って同じ本を読んでしまったのかと勘違いするほどでした。
 
その件以外は概ねまともで、現金を世の中に流通させ続けるにはATMや現金輸送のガソリン代、人件費など莫大なコストが掛かるため、お金をデジタル化することでコストが抑えられるという、なぜお金をデジタル化するべきなのかという主張が分かりやすく解説されており大変勉強になりました。
 
ただ、メンタリストDaiGoがホームレスや生活保護受給者の人権を軽視するような発言をして炎上する前に出版された本なので、メンタリストDaiGoをやたら大絶賛している点だけ今読むと不快です。
 
 
・『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』 著者:小宮一慶
 

 
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)やROA(資産利益率)といった、投資をする際に絶対に理解しておかなければならない指標について解説する本です。
 
投資指標は長期投資をする上では必須の知識であり難解であろうが無理をしてでも覚える必要があります。そのため書いてあることを頭に叩き込むべく3回読み直しました。
 
どれも株を発行する会社の経営状態が健全かどうか決算書から読み取るためには必須の知識なため株を長期保有する前提で買う場合は有益な情報が書いてあり読んで損はありません。
 
具体的な会社の決算書を例に説明してくれるため、最初は難しくても複数回読むとおおよそ内容が頭に入ってきます。
 
そして本の中で紹介される相場格言「頭と尻尾(しっぽ)はくれてやれ」(一番安い株価で買えなくても、一番高い株価で売れなくても細かい損得は気にするな)という言葉と出会えたのは有益でした。
 
この格言は投資以外の場面でも応用できるため一生胸に刻みたいと思います。
 
 
・『FIREを目指せ』 著者:スコット・リーケンズ
 

 
アメリカのドキュメンタリー作家がFIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指す様をコミカルな文章で綴るエッセイです。
 
タイトルにFIREとありますが、単純に消費にどっぷり浸かり贅沢三昧の暮らしを送る夫婦が本当の幸せとは何かを真剣に考え生活態度を改める話でもあり、FIREに興味があろうがなかろうが楽しく読めます
 

 
・『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』 著者:山崎俊輔
 

 
日本の制度上FIREを目指す場合に気を付けなければならないことをFP(ファイナンシャルプランナー)がアドバイスするという内容の本です。
 
コチラもFIREを抜きにしてもサラリーマンの保険や税制など計画的な人生設計をおさらいする本としても読めるため、FIREに興味がなくてもお得な情報が詰まっています。
 
ただ、FIREを真剣に目指す人が読む本としては実体験ではないためやや具体性に欠けるという不満も残ります。
 

と言うか、この本を読んだらFIRE達成できる気がしなくなりました

 
・『60歳から10万円で始める「高配当株」投資術』 著者:坂本彰
 

 
高齢者こそ高配当株(通常の株より利回りが高めの株)投資を始めるべきという主旨の投資本です。
 
人生経験が豊富で長く政治や経済の浮き沈みを眺めてきた高齢者のほうが投資に向いているという主張はまさにその通りだと思います。
 
高配当株投資は株価上昇時はキャピタルゲインを狙え、暴落時は配当利回りが高くなった高配当株を狙えばよく、市場がどのような状態でも対応できるなど、高配当株投資の利点も一通り解説されており、読むと確実に勉強になります。
 
しかし、投資に関するオススメの情報収集が全て紙媒体など、さすがに今読むと時代遅れな部分も多く古くささは否めません。
 
 
・『オートモードで月に18.5万円が入ってくる「高配当」株投資』 著者:長期株式投資
 

 
現役サラリーマンでありながら高配当株投資で毎年200万円以上の配当金を獲得する著者が高配当株投資のノウハウを解説する投資本です。
 
この本は、景気の良いタイトルから勝手に高配当株での儲け方を指南する内容なのかと思っていたら実際は長期投資でダメージを最小限に抑えるテクニックを語る“ディフェンス”に関する本でした。
 
暴落時のパニックをどう乗り越えるのかや、長期投資家が絶対に守るべき常に冷静でいるための心得の数々など、どれも地味な内容です。
 
本の中で紹介されるオススメの優良銘柄もNTTやKDDI、花王、INPEXなどどちらかというと高い利回りよりも企業の安定性を重視するチョイスで、正直あっけないほど普通でした。
 
長期投資においてこれをしたら儲かるではなく、失敗を避けて避けて避け続けていればいつかは絶対に勝てるからそれまでひたすら耐え抜くというスタンスなので、派手さは皆無ですが書いてあることはどれも役に立つアドバイスばかりでした。
 
 
・『私の財産告白』 著者:本多静六
 

 
幕末生まれの投資家・本多静六が、自分の貯蓄・投資・仕事遍歴など、お金にまつわる様々なエピソードを告白するというエッセイのような本です。
 
まず貯蓄や投資といったお金の話以前に、本多静六の生きた時代や人生が波瀾万丈なので単純に読みものとして楽しく読めます。
 

『論語と算盤』でお馴染みの日本の資本主義の父・渋沢栄一も登場するなど、明治・大正・昭和の実業の世界が垣間見られるのも魅力です

 
肝心の貯蓄術や投資の極意なども今読んでも基本部分はまったく古びておらず、時代を超えて経済的な自由と本当の幸福を目指す者たちのバイブルとして愛読される理由が分かりました。
 

 
・『お金を持ち続けられる人になるための「自分資産化計画」』 著者:園原新矢
 

 
投資家の園原新矢が、お金持ちになるためのコツを伝授する自己啓発書です。
 
著者がモデルである『35歳で夢をつかんだ「資産家」シンさんの教え』というマンガをより深掘りしたような内容で、マンガを先に読んでおくと書いてあることがスラスラと頭に入ってきます。
 

マンガが入門編だとするとコチラは応用編です

 
基本は自己投資で自分自身の価値を上げ続けることで、金持ちになった後もあらゆるトラブルに対処できる柔軟性を獲得し、その状態を長く維持できるようにするべきという、マンガとほぼ同じような主張がより具体的な例を交えて解説されます。
 
例えば、自分のやる気を強化してくれる野望(夢)をしっかりと把握する、自分が日々どんな行動にどれくらい時間を使っているのかを書き出し時間をシビアに管理するなど、地味ながらどれも現実的なアイデアばかりです。
 
個人的に一番ハッとしたのが、やりたいことリストを作るのと同時に絶対にやりたくないリストも作るべきというアイデアでした。人間の欲望はやりたくないことに潜んでいる場合も多く、自分は何をやりたくないのかを的確に把握しておくと、実はそこに本当にやりたいことのヒントが隠されているという発想はこの本で最大の収穫でした。
 

最後に

 
前にも書いたとおりとにかく時間がまったく足りず、もっと投資の勉強がしたいもっと本を読みたいという焦りだけで過ぎ去った一ヶ月でした。
 
読書で得た知識がそのまま投資する際の判断材料として役立つため本を読むのがより楽しくなるなど、投資を始めたことで読書にも大幅にプラスの効果が生まれたのもラッキーでした。
 
ただ、問題は投資のお金を貯めるために厳しい節約を課すと今度は高価な本を買い辛くなり、どうしても読む本がKindle unlimitedで無料で読める本に偏ってしまうことです。
 
読書という自己投資にお金を使わないと知識が得られず、かといって節約しないと投資に回せるお金が作れないと、この問題だけは解決の目処が立ちません。
 
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