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【#17】オフライン生活の中『映像の世紀』に感動した1月

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はじめに

 
今回のミニ・ブックレビューは2022年1月に読破した本をブログでのレビュー記事あり・なし問わず紹介します。
 
今月は自宅のネット回線をIPv4からIPv6(IPoE)に改善しようとプロバイダと光回線を変更する作業に手こずり長期間PCがネットに繋がりませんでした。そのため月の大半ほぼオフライン状態で過ごすという貴重な経験が出来ました。
 
ネットから切り離された生活で強く感じたのは時間の流れの遅さです。
 
ここ数年は時間の流れがどこまでも加速し一日が極端に短いと感じる日ばかりでした。しかし、ネットから切り離されると途端に一日がスローに感じられ、自分のペースで生きているというのはただの錯覚でいつの間にか生活の主導権がネットに奪われネットの速度に引っ張られていたことに気付くことができ、日々の生活態度を見直す良い契機となりました。
 

ちなみに回線速度は下りが50Mbpsすら出なかったのが、改善後は有線だと350Mbps前後、無線でも200Mbps程度は安定して出るようになり満足です

インターネット回線の速度テスト | Fast.com

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1月はネットに繋がらないオフラインの時間を利用し、HDDレコーダーに録り溜めていたTV番組を片っ端から視聴しました。おかげでNHKの『映像の世紀』という大作歴史ドキュメンタリー番組に出会え、人生観が変わるほど多大な影響を受けました。
 

 

 
『映像の世紀』はTVのドキュメンタリー番組としては破格の完成度を誇り、これほどまでの域に達したTV番組は日本では今後二度と作られないのではないかと思うほどです
 

今年見る映像コンテンツは全部これ以下になりそうな予感がします

 
ネットから隔離された生活に最初は不満を覚えていたのに、結果的に傑作ドキュメンタリー番組に出会えるなど、回り道をすることの大切さを痛感した月でもあります。
 
ネットに繋がると今度は反動でサブスクを利用し映画ばかり見続けてしまい、結局今月もロクに本が読めませんでした。
 

小説 2冊

 
・『一絃の琴』 著者:宮尾登美子
 

 
一絃琴いちげんきんという楽器の普及に貢献した師匠である島田勝子と、その弟子である人間国宝、秋沢久寿栄くすえという実在の人物をモデルとした小説です。
 
優れたエンタメ小説に贈られる直木賞(第80回)を受賞した作品でもあり、単純な面白さで言えば宮尾小説の中でも上位に入る出来です。
 
宮尾登美子さんが最も得意とする人間同士の感情の摩擦やすれ違いがふんだんに盛り込まれた師匠と弟子の愛憎劇は絶品でした。
 
しかも、読みやすさと話の深みが見事に両立しているので難解な作品が多い宮尾小説の中では取っ付きやすい一作です。
 

 
・『鬼龍院花子の生涯』 著者:宮尾登美子
 

 
高知県の田舎ヤクザ鬼龍院政五郎こと鬼政が率いる鬼龍院一家の繁栄と没落を鬼龍院家の養女・松恵の視点で描く小説です。
 
前半の鬼龍院家が高知県内で影響力を拡大していく部分はダイジェストっぽく、そこそこ程度の面白さでしかありません。
 
しかし中盤以降、鬼龍院一族の手加減無しの転落劇が始まると、この人たちはどこまで不幸の坂を転げ落ちていくのだろうという興味で先が気になり続けほとんど一気読みしてしまうほど中毒性があります。
 
トータルの完成度で見ると他に優れた宮尾小説はいくらでもあるものの、繁栄した一族が転落していく様のえげつなさで言うとこの小説はトップクラスなので、人の人生が破滅する様にカタルシスを覚える人は楽しめると思います。
 
ちなみに、映画化もされておりそちらも原作小説に負けず劣らずの名作です。
 
宮尾小説に登場する侠客きょうかくとしては『岩伍覚え書』の岩伍という宮尾登美子さんの実の父親をモデルとした人物のほうが魅力的ですが、映画では名優・仲代達矢が演じる鬼政のほうが貫禄で勝り、存在感が見事に逆転しています。
 

今月見た映画の中ではぶっちぎりの面白さでした

書籍 1冊

 
・『現代語訳 論語と算盤そろばん』 著者:渋沢栄一 訳者:守屋淳
 

 
日本における“資本主義の父”と呼ばれる日本経済の基礎を築き上げた偉大なる実業家・渋沢栄一の講演をまとめた『論語と算盤そろばん』を、さらに読みやすいように現代語に訳した本です。
 
この本はHDDレコーダーに録り溜めていたNHKの『100分de名著』という番組で今更知りました。『100分de名著』を見て、これほど偉大な実業家がかつて日本にいた事実に衝撃を受け、番組を見終わると同時に元の本にも手を出しました。
 
ただ、正直言って『100分de名著』が非常にうまくまとめられているせいで、そちらの番組を見ているなら元の本を読んでも特に目新しい発見はありません。
 
基本は、武士に武士道という道徳があるように、商人(実業家)にも道徳が必要で、それが中国の思想家である孔子の教えが書かれた『論語』が最適という主張が書かれています。
 
論語(道徳)算盤(ビジネス)という、それぞれ一方だけでは不完全なものを互いに補い合うことで、競争を活発化させ成長を促進するとともに資本主義が内包する暴走の危険性にブレーキをかけることも出来るという発想はまさに現代社会にこそ求められるものであり、考え方自体には古さを微塵も感じません。
 
ただ、さすがに幕末生まれの元武士の人物だけに精神論的な部分は体育会系のノリで若干古くささはあります。
 
それでも、実業(ビジネス)には道徳が絶対に必要であり、目先の金儲けだけに走り心を置き去りにした商売では日本という国は発展しないと、まさに現代にそのまま通じる普遍性があります。
 
このような真に日本の発展を考え、生涯自分の志を貫き通した実業家が日本の基礎を築いたのだと思うと、読んでいて心底嬉しくなりました。
 
日本人は勤勉であれ、誠実であれという渋沢栄一の教えをすっかり忘れ、いつまでも金儲けにのみ邁進していると日本は滅ぶという教訓が詰まった一冊です。
 

最後に

 
1月はあまり本が読めなかった代わりに『映像の世紀』のような自らの血肉と化すような本物のコンテンツに出会えると視野が一気に広がると気付くことができ、やはり読書のみにこだわり自ら行動を縛ることは愚かであると教訓を得ることができました。
 
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