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【#14】月刊ミニ・ブックレビュー 2021年10月号

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はじめに

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 今回のミニ・ブックレビューは2021年10月に読破した本をブログでのレビュー記事あり・なし問わず紹介します。
 
 今月はゲームの『アサシンクリード オリジンズ』をトロコンするまでやり、その後も気が済むまで古代エジプトを駆け回っていました。
 

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 月の後半は『フォールアウト4』にハマり、今度はエジプトから核戦争後のアメリカへ舞台を移しあちこち散策しているとあっという間に10月が終了しました。
 
 『フォールアウト4』はPC(steam)版をクリア済みですが、まっさらな状態でやり直したいと思い、PS4版を再び最初からプレイすることに。結局インスティチュート、B.O.S.(ブラザーフッド・オブ・スティール)、レールロードと三つの勢力のルートを全てクリアしました。
 
 しかし本番はここからで、PC版では未プレイだったDLCで新たに追加された新エリアに激ハマりすることに。新エリアは、“ファー・ハーバー”という町を中心とし、島全体が独立した別エリアとなっています。
 
 この新エリアの何が凄いかというと、島全体がクトゥルフ神話の生みの親でお馴染みの作家H・P・ラブクラフト作品へのオマージュが強いことです。
 
 島全体が放射能を含んだ謎のきりに覆われ、ポストアポカリプス世界である連邦(本編マップ)とは異なる妖しい雰囲気が漂い、新武器ももりやハープーンガンといったラブクラフトの『インスマウスの影』を思わせるさびれた漁村のような雰囲気を強化するものが追加されと、楽しすぎて島をずっと歩き回っていました。
 

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 ファストトラベルを使えば連邦と簡単に行き来ができ、しかも新エリアで追加される武器やアイテムを連邦内でもそのまま使えます。そのため、DLCながら本編のサイドクエストのように馴染んでおり、ほぼDLCと意識せずプレイできました。
 
 ただ、PS4スリムだと霧の処理が重いのか、この新エリアに行くとフレームレートがガタガタでまともに動かなくなることが多々あります。それに、狂気を売りにするラブクラフトのホラー要素とフォールアウトシリーズ特有のブラックユーモアがあまり綺麗に融合しておらず、ややチグハグ感もありました。
 

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この“ファー・ハーバー”のミッションで登場するマインクラフト風のサンドボックスパズルは中毒性があり楽しいものの、もはやラブクラフト感は皆無

 それでも自分がこれまでプレイしたゲームの追加DLCの中でも“ファー・ハーバー”はベスト3に入るほど気に入りました。

 
 本編と雰囲気が差別化され新鮮な気分で挑める新エリアの存在や、DLC単体で独立させず本編から自然にゲームプレイを繋げる構造と、DLCとしては理想の形でした。
 

ゲーム本編とセーブデータを共有しない独立したDLCはそもそもやる気が起きません

 
 久しぶりにフォールアウトをプレイするとその研ぎ澄まされたゲームデザインの美しさに惚れ惚れしました。
 
 核戦争以前の文明社会の遺物がクラフト素材として転がっており、紙幣がただの布素材としての価値しかないことで資本主義の終焉を実感させるアート的な皮肉の効かせ方や、巨大ゴキブリのクリーチャーを倒すとゴキブリの肉が手に入りそれを料理して食べさせるという突き抜けた悪趣味ぶりなど、システムとストーリーテリングを乖離させないセンスは他のポストアポカリプスゲームとは一線を画する魅力があります。
 

小説 2冊

 
・『上弦の月を喰べる獅子 上・下』 著者:夢枕獏
 

 

 
 日常風景に螺旋を幻視してしまう螺旋コレクターのカメラマン三島草平と、なぜか岩手を代表する詩人・童話作家の宮沢賢治が一つの肉体に宿り、この世ならざる世界を旅するSF小説です。
 
 不思議なタイトルの由来は、美術館で運命的に出会い一目惚れした『上弦の月を喰べる獅子』という、インドの絵画が元ネタとのこと。
 
 この小説は、全体が禅問答のような抽象的な内容のため何を書いていいのか分からず、レビューを書き始めるのに丸一日かかりました。このブログで過去にレビューした中では『テンダーワールド』や『妖都』に近く、この手の抽象的な小説が最もレビューを書くのに手こずります。
 
 映画だと逆にシュールレアリスム系の作品は映像的な取っかかりがあるので撮影や演出を切り口に出来るため書きやすく、なぜ活字になると途端にレビューの難易度が跳ね上がるのかと不思議な気分です。
 
 抽象的で難解な物語は意図を読み解く楽しみが味わえ大好きなので、本作も読み始めたら止まらなくなり、ほとんど一気読みしてしまいました。
 

 
・『天璋院てんしょういん篤姫あつひめ 上・下』 著者:宮尾登美子
 

 

 
 幕末薩摩さつま藩主である島津しまづ斉彬なりあきらの養女を経て、江戸幕府の13代将軍・徳川家定いえさだの元に嫁ぎ、その後は大奥のトップとして生涯を徳川家に捧げた篤姫の波乱に満ちた人生が描かれる歴史小説です。
 
 2008年に放映されたNHKの大河ドラマ『篤姫』の原作でもあります。
 
 大河ドラマ版を先に見たため歴史上の偉人が次々と登場する群像劇なのかと思いきや、基本は姑・篤姫と嫁・和宮かずのみやの嫁姑問題という小さい話で、ドラマから入るとそのギャップに驚きます。
 
 史料を徹底的に読み込んでから執筆に入る宮尾登美子さんらしく、篤姫が将軍家へ輿入れする際の描写の細やかさや、武家出身という身分の低さによって被る数々の苦労。身分が上の嫁との確執を経て、滅びゆく徳川家の儚さを描きつつ、最後は共に徳川に嫁いできた者同士心が通じ合う篤姫と和宮の穏やかな晩年という、山あり谷ありの女の生涯を描き抜いた傑作でした。
 

書籍 3冊

 
・『おとなの教養3 -私たちは、どんな未来を生きるのか?-』 著者:池上彰
 

 
 ジャーナリストの池上彰さんが、政治・経済・歴史・宗教・科学など、多岐に渡る分野の基礎知識や最新情報を解説する『おとなの教養』シリーズの3巻目です。
 
 今回は、コロナウイルスの最新情報や、感染症がどれほど世界を一変させてきたのかという歴史の解説。政治・経済・日常生活が全てデジタル化するDX(デジタル・トランスフォーメーション)についての解説。アメリカと中国の米中新冷戦や、人種差別、環境問題についてが主です。
 
 中でも、印象的なのが経済に関する話題でした。
 
 コロナ禍でリモートワークに移行する選択肢がある富裕層と、過密状態の場所で働かされる貧困層では、貧困層のほうが圧倒的にコロナウイルスに感染する率が高いという痛ましい統計。
 
 そして、トマス・ピケティの『21世紀の資本』という本が示す、資本主義社会では富裕層が資産を運用して得られる収益に対し、GDPの伸び率が低い、つまり金持ちが所有する資産を資産運用で増やすスピードが国全体の経済成長率を超えており何もしなくても貧富の差は開く一方という絶望的な状況など、中間層が消え富裕層と貧困層の二極化がより深刻化していく未来が理解できます。
 
 貧困層は便利だからとGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)など大企業のサービスを利用することで能動的に経済格差を広げる手伝いをし、大企業は自分たちのサービスや商品を買ってくれる中間層を破壊することで結局は自分たちの未来の客を縮小させと、現代社会を一歩引いて眺めると人類全体が自分で自分の首を絞めているだけにしか見えない奇妙な光景が浮かび上がってきます。
 
 
・『知らないと恥をかく世界の大問題12 -世界のリーダー、決断の行方-』 著者:池上彰
 

 
 同じくジャーナリスト池上彰さんが、世界中の時事問題を根っこまで遡って懇切丁寧に解説する『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズの12巻目です。
 
 今巻はコロナ禍という未曾有の危機的状況において、各国リーダーがどのように振る舞い支持を獲得した、もしくは失ったのかが主に紹介されます。
 
 正直、これまでのシリーズと比べ特に新鮮味はありません。それでも、現代の時事問題の解説としては安定した面白さで読んで損はありませんでした。
 

 
・『世界史の極意』 著者:佐藤優
 

 
 元外務相の外交官だった佐藤優さんが、世界史をアナロジカル(類比的)に捉え、過去の歴史から現代や未来を予測するためのヒントを探り出すという主旨の本です。
 
 2015年とやや古い本ですが、過去の歴史を分析することで現在と共通するアナロジーを発見する訓練という内容なため、いつの時代に読んでも通じる普遍性があります。
 
 20世紀と現代の世界情勢の恐ろしい類似や、ナショナリズムとは大学の同じ地方出身者のグループが発祥であるという歴史や、ナショナリズムは都合良く後から発見されるというナショナリズム論など、どれも読んでいて刺激的な話ばかりでした。
 
 この本は一回読んでもうまく要点が掴めずもう一度最初から読み直し、二回目にしてようやく作者の主張が手に取るように理解できました。新書にしては読み応えがあり、その分学べることも多くあります。
 

最後に

 
 今月は大河ドラマ『篤姫』も全話見ましたが、コチラは脚本がイマイチなため大河ドラマの命とも言える終盤のカタルシスが弱く、心地良い余韻が残りませんでした。
 

全50話のドラマを見てラストがさほど盛り上がらないまま終わるというのは費やした時間を思うと辛いものがあります

 
 あともう少しで『フォールアウト4』もトロコン出来そうなので、11月もまた読書よりゲーム漬けの日々になりそうな予感がします。
 
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