はじめに
今回の読書記録は2020年10月に読破した本をブログでのレビュー記事あり・なし問わず紹介します。
今月は読んだ本の大半が好みに合致するという読書の当たり月でした。そのせいで同じ作者の本を全部読みたいとか、関連する本もチェックしたいと、読みたい本が一気に数十冊単位で増えたため、パンパンだった読書リストがさらに膨れあがり読書スケジュールが数年先までビッシリ。
先月がAmazonのKindleを中心に電子書籍を読んでいたのが、今月は実際に書店を歩きフィーリング重視で本を選んだため、電子書籍と紙の本が半々くらいという珍しいバランスでした。
小説 合計3(上下巻をそれぞれ一巻として計算すると5)冊
今月も前月と同様たったの3冊のみ。原因は『光圀伝』で、このストーリーがほぼ存在しない上に、上・下巻合わせて1000ページ近いボリュームの小説を一冊読むだけで2週間ほどかかったので、他の作品に一切手が回りませんでした。
・天地明察 上・下巻 著者:冲方丁
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・光圀伝 上・下巻 著者:冲方丁
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10月は『天地明察』と『光圀伝』という最高の伝記&時代小説に出会えただけで大満足です。これを読んだおかげで歴史ブームが到来し、日本史に関する本を本棚から引っ張り出し読み返す時間が大幅に増えました。
冲方丁さんは『マルドゥック・スクランブル』という超傑作サイバーパンク小説から入ったのでどうしてもSFの人のイメージが先行し、時代小説を読む順番は後回しにしていました。しかし、実際に読んだらSFより時代小説のほうが得意なのではないかと思うほど作家イメージが激変します。
こんな並の作家が生涯を懸けても一冊たりとも書けないような傑作を立て続けに二冊も書いているとか、実は今まで冲方丁という作家の真の実力をまるで理解していなかったということに気付き恥ずかしくなりました。
・ぼっけえ、きょうてえ 著者:岩井志麻子
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こちらも人間の醜さを容赦なく炙り出す強烈な作風と文体に心を射貫かれました。作者が岡山の田舎出身なのに、自分の故郷をここまでおぞましい生き地獄として描いたら同郷の人に勧められないだろうと余計な心配をするほどの徹底ぶりで、岩井志麻子さんへのイメージがバラエティの人からえぐい作家へと変化しました。
『爆笑問題のススメ』など、子供の頃に爆笑問題の番組にゲストで出演していた作家の著作を読むと意外にハマることが多く、太田さんが大の文学好きなこともあり、ある程度は実力がある作家を厳選して番組に呼んでいたのかもと今更ながら気になり出しました。
その他書籍 合計5冊
・開運! 知っておきたい仏像の基本
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・池上彰と考える、仏教って何ですか? 著者:池上彰
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・教養として学んでおきたい仏教 著者:島田裕巳
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『開運! 知っておきたい仏像の基本』は最初に読んだ時は仏像に対する基本知識が平易に書かれており読みやすかった反面、内容の薄さに不満も覚えました。
しかし、次の『池上彰と考える、仏教って何ですか?』を読んだ時に最低限の仏像の知識を仕入れていたおかげで内容がすんなり頭に入ってきたため、先に仏像の本を読んでおいて良かったと印象が変化。
人々のどのような願いが仏像に込められているのかを理解すると仏教の歴史も自然に吸収でき、仏教の入り口を歴史より仏像に置くのもこれはこれでアリだなと思います。
ただ、この『仏像の基本』という本は、如来(にょらい)や菩薩(ぼさつ)の区別が付かない(阿弥陀(あみだ)様と観音(かんのん)様がそれぞれ如来なのか菩薩なのか分からない、など)本当に自分のような初心者向けの本のため、少しでも仏像への知識があれば物足りないと思います。
京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズの影響(特に『狂骨の夢』や『鉄鼠の檻』)で仏教の奥深さに惹かれ、色々と調べ始めると今までまったく区別が付いていなかった仏教の宗派や仏像が見分けられるようになり世界の見え方が変わります。
仏教の歴史を知ると、貴志祐介さんの『新世界より』は仏教の中でも密教色が強いとか、仏教を扱う他の作品への理解度が増すなど良いこと尽くしです。
『教養として学んでおきたい仏教』は、タイトルだけ見ると初心者向けに見えますが、ある程度仏教伝来の流れを知っている前提なので、最初に読む本には向かないと思います。それを理解していれば、インドから中国に仏教が伝わる過程で、中国の道教や儒教の影響によりどのように仏教の教えが歪んだのかといった事情が分かりとても勉強になります。
・三つの石で地球が分かる 著者:藤岡換太郞
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書店の回遊エリアの中でも、中の上くらいの優先度であるブルーバックスのコーナーで発見。なんとなくタイトルに三つの石と書かれ、表紙にも三つ石が並ぶシンプルさに惹かれ購入したらこれが大ヒット。自分の中で地学ブームが起こりそうなくらいハマってしまい、地学に関する本を浴びるほど読みたいという欲が生まれました。
やはりKindleで本を買うより、書店でタイトルを見て強く惹かれる紙の本のほうが琴線に触れる確率が高いということを実感した一冊でした。
・遠野物語remix(リミックス) 著者:京極夏彦×柳田国男
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これは10月最後に読んだ本ですが、下手をしたら今月読んだ本の中でも一番好きかもしれません。
異界のごとき遠野郷に魅せられ、柳田國男の文章に酔いしれ、意識が明治時代の遠野に飛びそうなほど惚れ込み、遠野への憧憬が止まらなくなります。
100年以上前の遠野と現代に生きる自分が活字を介して繋がる興奮はこれぞ読書の醍醐味であり、この上なく贅沢な時間でした。
最後に
10月は9月よりも遙かに良い本と出会え、しかも日本史や仏教、地学といったこれまであまり積極的に情報収集してこなかった分野に興味が湧き、知識の視野が広がった月でした。
ただ、今月はビジネス書や政治・経済系の本を一冊も読まず、情報もあまり仕入れなかったせいで若干時事ネタ全般が疎かになり、興味が過去(特に遠野)にばかり向き過ぎたなと反省も残ります。