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携帯ゲーム機向けのお手軽さが足枷に 『ゴッドイーター2 レイジバースト』(PS4版) 〈レビュー・感想〉

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トレーラー

評価:75/100
作品情報
ジャンル アクションゲーム
発売日(日本国内) 無印版:2013年11月14日
レイジバースト:2015年2月19日
開発(デベロッパー) シフト
開発国 日本

短評

 
 まだまだ発展途上なものの、いつでも剣と銃形態を切り替えられる神機じんきという変形武器を使う戦闘はスタイリッシュで可能性を感じます。
 
 しかし、手軽さを重視する携帯ゲーム機用のゲームデザインに対し、ストーリーや世界観設定が極端にスケール重視のためまるで噛み合っておらずそこはイマイチでした。
 
 ミッション内容も単調な水増しだらけの酷いありさまで、改善の余地があります。
 

歯ごたえよりも手軽さを優先する携帯ゲーム機向けの調整

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 本作は傑作ハンティングゲームである『モンスターハンター』の影響を強く受けており、ゲーム内容は酷似しています。
 
 ゲームの基本の流れは、アラガミというモンスターを狩るミッションを受注し、ひたすらアラガミを狩ってはそのアラガミから入手する素材で新しい武器を作り、その武器でより強力なアラガミを狩り、またその素材で新しい武器を作る、というモンハンそのものな内容です。
 
 ただ、高難易度仕様のモンハンと大きく異なり、こちらは変形武器を用いるアクションの爽快感を重視するスタイルなので難易度は極端に低めです。
 
 ストーリーミッションだけならハッキリ言って難易度はゼロに近く、誰がやってもクリアまで一回たりともゲームオーバーにならないほどユルめです。敵にやられても耐久力(リスポーンすると消費する数値)が尽きない限りミッション中は何度でも味方のNPCに復活させて貰えるため、ミッションが失敗することはほぼあり得ません
 
 そのため、アクションゲームとしては攻守のバランスが取れているモンハンに比べやや大雑把な印象を受けます。
 
 特に守りのほうは被ダメージ量が多く機敏な立ち回りを要求されるモンハンとは比べものにならないほど簡素で、ガードはそれほど使わず、ステップ回避だけでなんとかなってしまうほどでした。しかも、味方NPCが常時3人同行し、敵の攻撃も分散するため気を付けていれば攻撃を喰らうことすらほとんどありません。
 
 難易度が低い上にミッションは長くても10分ほどで終了するため、達成感はあまりなくどうしても単調になりがちです(ただし、エンディングを見た後に受注可能となるミッションから難易度が跳ね上がります)。
 

斬ってよし、撃ってよしの万能な変形武器、神機

 
 本作の最大の魅力はなんといってもビジュアル的にもゲーム的にも存在感を放つ近接武器・銃形態をいつでも瞬時に切り替えられる神機という大型変形武器です。
 
 ギミック的に似ているのはアニメの『魔法少女リリカルなのは』のインテリジェント・デバイスやアームド・デバイスで、特にブースト機能が内蔵されているハンマーはヴィータのグラーフアイゼンそっくりで、リリカルなのはが好きなら即馴染めると思います。
 
 

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 しかも神機は見た目だけでなく機能性にも優れており、いつでも変形可能な近接武器と銃形態の役割分担の機能美は感心しました。
 
 アクションゲームとして、モンハンは良くも悪くも武器ごとの癖が強く武器を一度交換するとボスごとの立ち回りまで覚え直さなくてはならず、安易に武器を変えることが出来ません。本作はその点、守りより攻撃に重点が置かれており、防御・回避が全武器で共有なため立ち回りを覚え直す必要はなく、敵との相性やその時々の気分だけで武器を選べます。
 
 近接戦用のブレードには小回りの効くショートブレードや溜め攻撃が出来るバスターブレード、銃には狙撃用のスナイパー、連射に特化したアサルトなど種類が複数用意され、好みの武器を使ってもいいし、敵に応じて使い分けてもいいしとプレイヤーの判断に任されています。
 
 銃は弾数制ではなくOP(オラクルポイント)というゲージを消費して弾丸を発射する仕組みで、主に近接攻撃で回復します(一応、アイテムでも回復は可能)。
 
 このため銃を撃つにはまず接近して攻撃することでOPゲージを溜め、OPゲージが溜まったら今度は銃形態による射撃という流れに。射撃はTPSのようにエイムで敵の体のどの部位でも自由に狙えるため、近接武器では届かない高い位置にある弱点でも攻撃が可能になります。
 
 

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 そのため戦闘の流れは、
 
近接攻撃を当てる
OPゲージが溜まったら今度は銃形態に変形させエイムで弱点への強力な一撃を叩き込む
OPゲージを使い切ったらまた近接武器へ変形し接近して攻める
OPゲージが溜まったらまた銃に変形し特定の弱点部位をピンポイント攻撃
 
 
 と、自然と変形武器を交互に使用するようなサイクルになっており、戦いに心地良いリズムが生じます。
 
 本作は接近戦だけだとアクションゲームとして特筆するほどの個性は感じません。しかし、そこに元がPSPとVITAの縦マルチタイトルとは思えない、エイムの精度が優秀で着弾時のSEやエフェクトもしっかりした射撃要素が加わると印象がグッと良くなります。
 
 前述した通り、どうやっても元がVITAどころかPSPとのマルチタイトルでもあるため、据え置き用のゲームに比べたら挙動が安っぽく、アクションゲームとしての完成度は高くありません。それでもハードスペックが低いなりに、武器の種類は豊富で、スキルを付加することで装備のカスタマイズも可能と、やれることは全てやり尽くしているという誠意は感じられ、プレイすると応援したい気分にさせるほど好感触なゲームに仕上がっています。
 
 

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発動条件を厳しくすればするほど強くなるブラッドレイジ。ただ、バースト状態の強化版くらいの印象であまりパッとしない

ゲームとまったく噛み合っていないただただスケール感だけ求める設定やストーリー

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 本作は非常に凝った世界観設定やストーリーが用意されているものの、これが作業的なミッションを繰り返すだけのゲーム部分と相性が最悪で、互いに足を引っ張り合うだけで何の相乗効果も生んでいません。
 
 特にダメなのが、アラガミを討伐するだけのミッション内容がストーリー進行とまったく関係していないことです。
 
 特に酷いと思ったのが、ストーリーの核心に触れるような会話イベントを見ている最中に不自然に会話が中断され、何の関係もないアラガミを討伐するミッションが間に挟まれることでした。こっちは早く会話の先が聞きたいのに、ただただボリュームの水増しのためだけに今狩る必要もないアラガミを狩りに行かされ、戻ってきて会話が再開されたかと思いきや、また中断され再び無意味な討伐ミッションに行かされと、ふざけているのかと思うほど話を不自然に引っ張られ、ストレスばかり溜まります。
 
 せめて話の展開に則したアラガミ討伐であればまだ納得する余地もあるものの、話が進みそうになると無意味なアラガミ討伐ミッションが挟まれ続け、中盤以降は心底呆れました。
 
 ストーリーや設定もとにかく携帯ゲーム機の限界を無視してスケールばかり重視しており、地球が生み出した世界規模の浄化システムと人類の存亡をかけて戦う終盤の展開も、とにかく土台がグラグラでまともに盛り上がりません。
 
 全体的に設定周りは『新世紀エヴァンゲリオン』の影響が強く窺えます。ネルフ風の秘密主義の組織が裏で人類の行く末に関して様々な陰謀を巡らしているとか、エヴァのチルドレンたちのように神機に適合した少年少女たちが人間兵器として前線でアラガミと戦わされているなど、やりたいことは分かるものの、どうやっても携帯ゲーム機でこのスケールを表現するには無理があるものばかりで、印象はあまりよくありませんでした。
 

『アルトネリコ』感が漂う多重録音BGM

 
 本作はBGMが特殊でアクションゲームというよりはRPGに近いような情緒があります。
 
 特に多重録音を多用するクワイアのようなボーカル付きのBGMは個人的に『アルトネリコ』シリーズの志方あきこさんを思い出しました(ただ、ケルティックではない)。
 
 そのため、巨大なアラガミとの戦闘中にクワイアのようなBGMが流れると「アルトネリコのボス戦っぽい!」と興奮する瞬間が何度かありました。
 
 このバックでクワイア風の幻想的なBGMが流れる中、人類の命運を賭け巨大アラガミに挑むという、国産RPGのボス戦のカタルシスに近いゲーム体験はもっともっと突き詰めて欲しかったです。
 

不満あれこれ

 
 本作で一番気になったのは新種のアラガミが登場する際にムービーが流れないこと。
 
 どうでもいいキャラクター同士の会話シーンには頻繁にカットシーンが挿入されるのに、一番大事な初めて未知のアラガミと遭遇するシーンは単にフィールドで出会うだけでまったくドラマチックに盛り上げようとせず意味が分かりません。
 
 そのせいでアラガミの存在感が弱々しく、人類の脅威として大して恐ろしく見えませんでした。元々携帯ゲーム機向けでグラフィックやモーションが安っぽく、ただ単にフィールド上で遭遇するだけだと大きいザコモンスター程度にしか見えず完全に名前負けしています。
 

最後に

 
 クリア(エンドロールが流れる)まで約29時間ほど。それ以外もDLCや追加エピソードなども多量に含まれ、やり込もうと思うとストーリーミッションだけで40時間は軽くオーバーします。
 
 このゲームの不満点はほとんど携帯ゲーム機用のじっくり腰を据えてプレイするよりも手軽に中断できることを優先する作りに集約されます。
 
 アクションゲームとしてのポテンシャルの高さも物語のスケールもどう考えても据え置き機向けで、携帯ゲーム機用の作りではこのゲームの魅力の半分も引き出せていません。
 
 それでも良いゲームを作ろうという熱意はシステムの端々やバランス調整の手応えから感じ取れ、プレイしていると自然と好感を抱き、応援したくなる作品でした。
 

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