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テイルズ オブ ゼスティリア ザ・クロス 〈レビュー・感想〉 圧巻の映像美とベルセリアとのクロスも虚しく、名作になり損ねた惜しい作品

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PV

 
評価:75/100
 
作品情報
放送期間 前半:2016年7月~9月
後半:2017年1月~3月(分割2クール)
話数 前半:13話
後半:13話 全26話
アニメ制作会社 ufotable

短評

 
 ufotable作品らしく、相変わらず演出もストーリーも堅めでテイルズオブシリーズの持ち味である親しみやすさ・可愛らしさは削がれているものの、映像は常に劇場用アニメレベルを維持し、ほとんど絵的に物足りなさを覚える箇所はない。全体的にアニメーション作品としては超一級の出来に仕上がっている。
 
 ただ、そもそもゲーム版ゼスティリアのシナリオの完成度が低い上に、アニメ版も素人が書いたような未熟な脚本と構成で、物語的な盛り上がりはほぼなく、見終わった後は虚無感に襲われるほど内容が薄っぺらい。
 
 ゼスティリアの約1000年前?を描いたゲーム『テイルズ オブ ベルセリア』の内容をゼスティリア本編に加えたことで、原作であるゲーム版ゼスティリアより物語的に深みが増している箇所もあるものの、映像面以外は話も退屈でキャラクターも弱く、魅力に乏しい。
 

ベルセリアとゼスティリアの物語がクロスする、アニメオリジナル展開

 
 本作は原作であるゲーム版テイルズ オブ ゼスティリアの忠実な映像化ではなく、そこにゼスティリアの過去を描いたゲームであるテイルズ オブ ベルセリアの内容も加えており、作品から受ける印象はゲーム版と大きく異なります。
 
 同じufotableの作品で言うと、本編である『Fate/stay night』の前日譚である『Fate/Zero』の内容をある程度踏まえて作られた、同じく原作のゲーム版とは印象が異なる『Fate/stay night アンリミテッドブレイドワークス』と似たような作りです。
 
 このため、ベルセリアをプレイしているのであれば、ゲーム版のゼスティリアをクリア済みでも、新鮮な気分で楽しめます。
 
 自分の場合は、ベルセリアの流れから8話でアイゼンが変わり果てた姿で登場し、あんなに大切に思っていた妹のエドナを殺そうとする光景を見せられたら悲しくて泣いてしまいました。
 
 それに、ベルセリアをプレイした後だと、人間から感情を消し去り世界中のけがれを一掃しようとしたアルトリウスに対して、人間らしく、自分らしく生きるため全力で抗ったベルベットたちの戦いの記憶がある分、荒れ果てた災厄の時代であっても世界が輝いて見えます(ちなみに、アニメ版を見ている最中にベルセリアのメッセージは漫画版の『風の谷のナウシカ』と同じなんだなと唐突に気付いた)。
 
 それ以外にも、導師や災禍さいか顕主けんしゅという言葉から受け取るイメージが変質し表面上の話とはまた異なる視点で物語を捉えられる楽しさや、終盤にベルセリアゆかりの場所やキャラクターがそのままの姿で登場するサプライズ的な展開があるなど、ベルセリアをプレイしているとより驚くような作りになっています。
 
 ただ、唐突に始まるベルセリアの序盤のエピソードが描かれる5話と6話は多分ゲームの宣伝用のためだけの回でほぼ蛇足でした。タイタニアからの脱獄シーンなんて描いたところでゼスティリアと何の関係もなく、これなら8話のエドナの回想にアイゼンがちょこっと登場する場面のほうが双方の繋がりが端的に分かり効果的です。5話と6話は2話丸々かけて8話の1秒未満のアイゼン登場シーンに完敗しています(しかも2話しかないのにすでにロクロウがキャラ崩壊気味で雑すぎる)。
 

キャラクターを脇に押しのけてまで目立つ豪華な背景とエフェクト

 
 本作で最も優れているのは、何と言ってもパッと見で分かる、もはや劇場アニメレベルにまで作り込まれた画面の情報量です。
 
 冗談抜きで1ショットたりとも背景がしょぼい箇所がなく、しかもCGで描かれるエフェクトの美しさがもはやTVアニメの水準を大幅に超えており、優しい陽光も、ランプなどの落ち着いた室内照明も、緩やかな川のせせらぎも、窓をしたたり落ちる水滴も、激しく荒れ狂う竜巻も暴風雨も、画面の豪華さが飛び抜けています。
 
 ただ、その分エフェクトの自己主張があまりにも強烈すぎて、手前のキャラクターよりも画面の隅でちらつくだけのエフェクトのほうが目立つなど、視線を独り占めしてしまい画面のバランスが崩れている箇所も多くあります。
 
 しかも、あまりにもCGの暴風雨が激しいのに、奥の背景の木々はまったく揺れていないとか、地面の草が風でなびかないなど、作画部分と調和が取れていない場所もあり、画面からちぐはぐな印象を受ける箇所も目立ちました。
 
 ちぐはぐと言えば、暗い世界観のわりに武器や鎧、日用品にウェザリングがされておらず、わりと何でも小綺麗すぎるのも気になります。
 
 背景やエフェクトの美しさは非常に豪華で、本作の最大の魅力と言っても過言ではないものの、やや視線を画面の四方に散らしてしまう厄介な作用もあり、そこまでうまく画面に溶け込んでいるとは思えませんでした。
 

派手さだけが先行するアクションシーンと、天族の存在感の薄さ

 
 本作の最大の見せ所が画面の美しさなら、泣き所は素人が書いたような脚本のお粗末さです。元々シナリオの完成度が低い原作ゲーム版ゼスティリアをさらにごちゃごちゃこねくり回したせいで、もはやまともな物語として成立すらしておらず、何気ないシーンから見せ場まで欠点が見当たらない場面のほうが希なほどです。
 
 その脚本の悪影響をもろに受けているのが非常にアクション作画に力が入っているバトルシーン全般です。バトルでも最大の見所である主人公スレイが天族と一体となり大幅に身体能力が強化される神依カムイ化に意味を与えられず、ただ無闇に暴れる様を見せられるだけで映像の豪華さのわりに淡白です。
 
 スレイが単独で戦っても勝てない敵に対し神依で挑むという当たり前の手順など一切無視するため、たとえ勝利を納めても手応えがまったくありません。
 
 一部、攻撃が届かない遙か上空の敵に対して主要武器が弓であるミクリオと神依し遠距離攻撃をするなど、特性を生かしたような戦いもあるものの、基本はなぜこの敵に対して地・水・火・風どの天族と神依して戦うのかという理屈は存在しません(『仮面ライダー ウィザード』の地・水・火・風エレンメントのフォームチェンジがほぼ無意味なのと同じ)。
 
 それに、神依(変身)する際に変身シーンを挟まずいきなり神依状態に移行してしまうのも味気なく、散々焦らされてからの変身でないため、待ってましたというような待望感が希薄で、盛り上がりに欠けます。
 
 さらに、神依の物足りなさが大きく影響しているのが、天族たちの空気のような存在の乏しさです。普通なら天族から信用を勝ち取って初めて力を貸して貰えるとか、共に死線をくぐることで信頼を深めるなどのプロセスがありそうなものの、ただ出会っていきなり神依させて貰え、しかも神依を用いる戦闘はただ勝手に暴れ回るだけと、スレイと天族との間でドラマが一つたりとも生じません。
 
 この天族との仲間意識という点は、原作ではバトルで何度も何度も神依するので、ある程度ゲームをやっていれば勝手に芽生えます。しかし、アニメ版はこの部分が微塵も描かれず、ただ一緒に旅に同行し、たまに神依するだけで、天族が旅の同行者を超えて仲間には見えません。
 
 そのため、最後の最後まで天族たちがどんな性格で何を考えているのか、そもそも天族ってどんな存在なのかすらハッキリしません。結果、人間と天族が共に手を取り合って生きることができる世界を作りたいというスレイやアリーシャの願いに見る側が感情移入することなど不可能という悲惨な状態に陥っています。
 

お粗末脚本 物語編

 
 脚本の不出来さのしわ寄せで最も甚大な被害をこうむっているのが肝心の物語です。
 
 本作は、ベルセリアの内容が新たに加えられている他にも、原作のゲーム版ゼスティリアから大きく改変されており、その中でも最も大きな違いと言っても過言ではないのがアリーシャ姫とロゼの描かれ方です。
 
 特にアリーシャはもはやスレイよりも好待遇で、実質主人公はアリーシャと言ってもいいほどです。ゲーム版では信じていた者に裏切られ心をズタズタに引き裂かれ酷い目ばかりに遭っていたアリーシャがアニメ版では部下からの信頼も厚く、ハイランドの民にも愛され、ロゼからも一目置かれ、神依を体得しスレイと共に前線で戦いと真逆の扱いなので、このアニメ版自体が原作で虐げられたアリーシャに夢を見させてあげるためだけに作られたような印象すら受けます
 
 ただ、そのせいでテイルズオブシリーズでよくある、とにかくみんな仲良しにしてハッピーエンドにすればいいという安易な改変に走っている部分も多く、あまり喜べませんでした。
 
 テイルズオブシリーズは後に作られる移植版やリメイク版で元のキャラクターの信念までねじ曲げてハッピーエンドに改変する悪い癖があります。そのせいでそのキャラクターがなぜ主人公たちと対立したのかという、その根幹の動機まで崩れてしまい、キャラがただのハッピーエンドを演出するための道具にされ、そのキャラらしさを殺されることもありました。
 
 本作もスレイやアリーシャと対立するはずの人間の動機をより丁寧に描くという方向ではなく、ただ善人にさせられるだけなど、そのキャラクターの牙ごと引き抜かれているケースもあり、好ましいとは思えません。
 
 ベルセリアで自分らしく生きることが大事と言った後で、ただみんな仲良しこよしな様を見せるというしょうもない理由でスレイたちとは異なる理想を持つキャラを人格矯正するのは不快でした。
 
 漫画の『ジョジョの奇妙な冒険』だったら、悪人たちは全員独自の美学や哲学を有し、信念を持って悪の道を突き進んでいるのでこんなことはあり得ません。
 
 ハッピーエンドのために適当にキャラを改変してしまうため、余計ゼスティリアの芯の通っていない薄っぺらさだけが際立ち、ストーリーから受ける印象は最悪でした。
 
 それ以外も、とにかく構成も脚本もずさん極まりなく、ベルセリアとクロスする終盤の展開までやや滑り気味など、脚本まわりは褒めるところがほぼありません。
 

最後に

 
 最近の日本のアニメに多い超絶キレイな映像と、作品の足を全力で引っ張るお粗末過ぎて話にもならない脚本という、アニメーターの人たちが不憫になる典型的な一作。
 
 ベルセリアとの繋がり部分でぐっとくる場面もあったので全部が全部ダメとは言わないものの、全体としては終始話が退屈なだけで全26話見終わった後の余韻はただただ空虚でしかありませんでした。
 
 
第1話 #00 災厄の時代

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