トレーラー
評価:75/100
ジャンル | アクションRPG アドベンチャー |
発売日(日本国内) | 2014年2月22日 |
開発(デベロッパー) | セガゲームス |
開発国 | 日本 |
ゲームの概要
この作品は、極道の世界を描くゲーム『龍が如く』シリーズの番外編です。『龍が如く 見参』と同様にシリーズの歴代キャラクターたちが歴史上の人物に扮する時代劇となっています。
謎の刺客に恩人を殺害され、その犯人に仕立て上げられた坂本龍馬が、新選組内部にいるとされる殺害犯を捜すため、斎藤一 という偽名で新選組に潜り込み、犯人を追うというストーリーです。
『龍が如く 見参』と似た箇所が多いため街並みやプレイスポットにさほど目新しさはありませんが、細部まで配慮が行き届いた遊びやすさは秀逸でした。
新選組という組織をヤクザ集団として描くというこのシリーズならではの斬新なアプローチもあり、序盤から中盤にかけてはシリーズでも上位の面白さです。
しかし、相変わらずストーリーは終盤で破綻して余韻が最悪なため、クリアしてしまうと作品への興味があらかた失せてしまうのは毎度お馴染みでした。
新選組という名のヤクザ集団
まず、このゲームが他の新選組を題材とする作品と一線を画するのが、新選組という組織を柄 の悪いヤクザ集団として描いていること。
組内の権力争いや、隊長同士の手柄の奪い合い、局長である近藤勇を親分のように慕う隊士たち、さらに見参と同様に本編の極道たちをそのままの姿で役名だけ変えて出演させるという手法も相まって、剣客集団というよりはほとんどヤクザにしか見えませんでした。
終盤で真相が語られるものの、当初は新選組の前身である壬生浪士 組時代の近藤勇派による芹沢鴨派の粛清は、新選組局長の座を巡る血みどろの派閥争いのように描かれ、ここはさすがにヤクザ設定がハマり過ぎで笑ってしまいました。
本編で言うと、新選組が堂島組で、徳川幕府が東城会のような描かれ方なのもツボでした
この新選組をヤクザとして描くという大胆なアイデアは見慣れた新選組という組織が新鮮に映り愉快でした。
しかし、それ以外はあまり褒める部分のない散々な内容でした。
連続シナリオ破綻記録を更新
主人公は一応坂本龍馬という体なものの、本作においてはほぼ新選組の斎藤一 としての面のほうが強調され、あまり坂本龍馬感はありませんでした。
物語の展開上、坂本龍馬が歴史上やったとされる出来事(海援隊を組織するなど)はほぼ別人の仕業として描かれるため、途中から主人公が坂本龍馬という設定自体忘れてしまうほどこの部分は薄めです。
そもそも坂本龍馬と新選組三番隊組長斎藤一 が同一人物という設定に土台無理があり過ぎて、途中からこの設定からもたらされる潜入の緊張よりも歴史との辻褄の合わなさのほうが遙かに目立ちます。
冒頭の坂本龍馬が新選組隊士として近江屋に踏み込み自分ではないもう一人の坂本龍馬を殺害するという龍馬が龍馬を殺す衝撃展開を思い付いたという以上の意味がありません。
しかも、坂本龍馬以外の部分も史実を完全無視しており、あまつさえ歴史上の人物をことごとく悪人として描くので、歴史にも新選組にも愛が感じられず、ストーリーは途中から興味が失せました(勝海舟や一部新選組隊士が本当にただの悪人として描かれるなど、改変の度が過ぎる)。
幕末という激動の時代を駆け抜けた一癖も二癖もある人物たちの魅力を伸ばすどころかヘタなサスペンス性を盛り込むため善人と悪人とに単純化して描くという、この時代の白と黒が曖昧な面白さを根こそぎ殺してしまうような改悪がされており本末転倒でした。
坂本龍馬に無理のある状況を設定するなら、せめて他の部分は徹底してディテールを固めないと、どこもかしこも歴史を軽視しているだけで時代劇としての最低限の説得力すら欠いています。
そして、案の上奇抜なアイデア先行で作った代償か、終盤はシリーズ超恒例のストーリーが破綻するという展開を迎え、余韻が最悪な状態で終わります。
見参、3、4、オブ・ジ・エンド、5、維新となんと6作品連続で話が破綻するという同一シリーズではギネス級なんじゃないかと思うような大記録を打ち立てる様はもはや笑えすらしません。
話を無難に着地させればいいだけなのに、一体なぜこうまで毎回墜落して大惨事を繰り返すのかいよいよ謎です。もはや、ここまで来ると1、2だけ話がまともだったことのほうが異常に見えてきます。
見参と同様、龍が如くシリーズ特有のやや芝居がかった古めかしい作風が時代劇と相性が良く、やりようによってはいくらでも面白く出来るのに、結局過去作同様に大失敗に終わっただけでした。
シリーズぶっちぎりの遊びやすさを実現
ストーリーは中盤以降退屈なだけですが、もろもろの細かい操作周りやアイテム画面の取り回しの良さなど、細部のプレイユーザビリティは目に見えない部分で快適さが増しておりトータルで見ると優れた部分が勝ります。
ゲームを開始した直後は別段いつものシリーズの延長くらいの感触でしたが、過去作と比較して見るとその遊びやすさの劇的な進化ぶりに驚かされました。
まずダッシュ機能が追加されたことで、移動が快適になったこと。これを一度体験すると逆にダッシュできない過去作がストレスに感じてしまうほどです。
さらに徳ポイントという、ほぼゲーム内の全行動に対して報酬として支払われ、それを便利なゲーム内の機能(ダッシュ時間が伸びたり、アイテム所持量を増やしたり、など)と交換可能という要素が追加されたことで、ぐっとやり込み要素のボリュームが増えました。
それに一見地味なものの本作最大の発明と言ってもいいほど絶大な効果を上げているのが、食べ物系のアイテムを使用した際や、お店で食事をする際に、いつもシリーズで主人公桐生一馬(本作では坂本龍馬)の声を演じる黒田崇矢さんが一言ユーモラスなつぶやきを漏らすようになったことです。
このほんの少しの要素があると無いとでは作品全体の雰囲気が大幅に変わるので、本作をプレイした後に過去作をやると、店で一言つぶやかない食事シーンが全て味気なく見えてしまいます。
それ意外にも、ヘタをすると普通にプレイしているだけだと気付けないような細かい部分のブラッシュアップが素晴らしく、ゲームとしての遊びやすさは5から劇的に向上しています。
『牧場物語』が如く
様々なやり込み要素の中でも一際存在感を放つのが、『牧場物語』そっくりなオマケ要素です。別宅にある畑に種を蒔き農作物を収穫し、収穫した作物を納品して換金するという『牧場物語』風のオマケ要素は中毒性が強く、ゲームの合間合間に別宅に通いすぎて今何をやっているのか見失うほどでした。
この『牧場物語』(もしくは『スターデューバレー』)部分は、畑を耕すことや、種蒔き、水やり、収穫といった面倒な要素は全て自動化されており、野菜を自らの手で育てているという実感は乏しく単体でそれほど完成度が高いわけではありません。
しかし、これがただのオマケのやり込み要素の一つとして入っているという点が凶暴で『牧場物語』の面倒なルーチン作業部分だけ抜いているというお手軽仕様なことと相まって、ゲームクリアまで強力な中毒性を発揮し続けてくれました。
本作をやると『牧場物語』の農作物の収穫や納品、家畜の飼育要素などは、メインにするよりもむしろ片手間でやるサブ要素として取り入れたほうが中毒性という点においては遙かに強力なのではないかと思ってしまうほどです。
これ以外にも多数のやり込み要素があるものの、どうしてもこれに比べると弱く感じます。
ほぼ代わり映えしないお馴染みのバトル
バトルはもはやシリーズでは不動なヒートアクションというど派手な決め技の爽快感を頼りにする大味なもので、基本はこれまでのシリーズとほぼ変わりません。
強いて本作の特徴を挙げるなら、『見参』と同じくバトル中に十字キーで戦闘スタイルを瞬時に変えられること(刀、銃、刀と銃の両手持ちスタイル、素手の4種)や、成長システムが『ファイナルファンタジー10』のスフィア盤のような、盤に空いた穴に球をはめていくことで能力が上昇していくものに変わった程度です。
坂本龍馬が主人公なので銃を使うという点は理解できるものの、銃は撃ち放題な上に威力も低く、攻撃してもほぼ爽快感もなく、これならまだ宮本武蔵ということで二刀流が使えた見参のほうがマシでした。
バトル中の敵のやられモーションも見参に出現する敵の一部は体をひねるように回転して倒れ込むという、刀で斬り倒しているという手応えがある凝った作りだったのに対して、こちらは単に普通に倒れるだけでイマイチです。
ただ、バトルでフィニッシュを決めるとリザルト画面が浮世絵?のように変化する粋な演出はど派手で、この部分だけはシリーズでも随一の快感があります。
この派手さは幕末の京の雰囲気を出す効果と、戦闘が終わって通常パートに戻る際の切れ目を隠す目くらましのような働きもしており好印象でした。
FF10のスフィア盤のような成長システムは好んで使用するスタイルを重点的に伸ばすか、全体的にバランス良く伸ばすのかを選べ、序盤はやりがいを感じるもののどうしてもバトルの単調さに引っ張られ中盤以降はただの惰性に感じました。
バトル部分はPS4版だと60フレームで快適に操作可能なためストレスはほとんどないものの、どうしてもこれまでのシリーズの中で突出した魅力はなく、可もなく不可もなくな無難な仕上がりでしかありません。
斎藤一なのに牙突が使えないなんて!!
不満あれこれ
地味ながら非常に問題なのが、クリア後に追加される幕末漫遊というフリープレイモードと、その他細かいモード以外はシェア機能に対応しておらず、スクリーンショットの撮影が出来ないことです。なので、京の街のあちこちを撮影して回るには一度クリアする必要があります(この記事内の画像も全てクリア後の幕末漫遊で撮ったものです)。
街をあちこち散策しては色々な街の表情と出会ったり、突発的に悪ノリが過ぎるコミカルなイベントと遭遇する『龍が如く』シリーズとスクリーンショット撮影の相性は抜群なのに、本編中何度もクセでPS4のコントローラに付いているシェアボタンを押しては撮影できないという反応にストレスを覚えました。
後、酷いのは街中で頻繁に遭遇するサブストーリーの中身が露骨に使い回しで安易なことです。イベントの外見だけ変えて中身は野菜が欲しいとか魚が欲しいという同一の内容のものが多く、これらのイベントに何度も出会うと途端にコピペ感が際立ってしまうので、これなら無いほうがまだマシでした。
最後に
クリアまで約33時間ほど。
ストーリーは終盤ぶっ壊れ、バトルも至って平凡、プレイスポットも控え目、キャラクターも特に印象にも残らないと、シリーズの中では取り立てて褒めるような部分がない非常に存在感が薄い軽めの作品でした。
ただ、全体的に遊びやすさが劇的に向上したおかげで、一定水準を超える面白さは確実にあり、トータルとしては楽しかった記憶のほうが勝ります。
龍が如くシリーズ
タイトル
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ハード
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龍が如く HDリマスター | PS3 |
龍が如く2 HDリマスター | PS3 |
龍が如く3 | PS3 |
龍が如く4 | PS3 |
龍が如く5 | PS3 |
龍が如く0 | PS4 |
龍が如く 見参! | PS3 |
龍が如く オブ ジ エンド | PS3 |
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