えんみゅ~ -えんためみゅーじあむ-

アニメ、映画、海外ドラマ、ゲームなどの、エンタメ作品総合レビューブログ

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 〈レビュー・感想〉 人の感情を可視化する経済

資本主義から価値主義へ

 
 本の内容は、資本主義というお金を基準に物の価値を計るしかない時代はもう古く、これからは資本主義では無価値と見なされた影響力、信用、共感、好意、感謝など、お金に換算できない内面的な価値がテクノロジーの発達で可視化される時代となり、お金を貯めるよりも自身の価値を高めるほうが有利となる価値主義の時代が訪れるというものです。
 
 正直、岡田斗司夫さんが言う評価経済の評価部分を価値という言葉に置き換えたようなもので、主張にそれほど新鮮味はありません。
 
 ただ、作者自身がIT企業の経営者であるという立場を生かした、SNSなどのテクノロジーの発達が人間の内側に眠っている自覚なき欲求を掘り起こし、それを満たすための価値もテクノロジーの進歩によって次から次に生み出されていくという話のくだりは、現代の話なのにどこか未来的で、SF小説を読んでいるような知的な興奮が味わえました。
 
 価値というものが自分が考えているような、良いものは評価され、ダメなものは淘汰されるという単純で画一的なものでなく、今後テクノロジーと連携し価値が多様化していくという話を読むと、最近やたら気になる、創作物のクオリティと評価の落差という違和感が多少納得できます。
 
 これまで漠然と思っていたクオリティが高いものが正しいという考え方は時代遅れで、クオリティの高さも変わらず大切なものの、それはもはや価値を決めるイチ要素に過ぎず、作り手を応援したいという好意や、その作品の話題に触れて楽しいかどうかなど、これまでは軽視されていた感情面の価値を大切にするような変化が起こっており、自分の考え方は今の時代にはもう通用しないのだと改めて気付かされました。
 

中央集権から分散化へ

 
 本の中で、資本主義は中央集権的に一部の企業や人間が力を持ち全体を管理していたのに対し、今後は経済の大半の仕組みが分散化し、ハブとなるような存在がいなくなるという話があり、今まで分散化という言葉自体は何度も本やネットで見掛けてきたものの、この本の内容が一番しっくりきました。
 
 分散化の例としては、今までメディアが独占していた影響力がネットによって個人に分散化。国家の発行する通貨が独占していた価値が、ビットコインなどのトークンエコノミーで分散化、などなど。
 
 これまでは分散化とはネットワークなど、テクノロジー関連の話題だと思っていましたが、テクノロジーの発達は人間の隠された欲求を刺激し、社会はそれに影響を受けるため、結局それは社会全体を変容させるのだと、この本を読むとすんなり理解できます。
 
 よく現代は価値観が多様化していると言われるのも、現代は情報革命によるパラダイムシフトのまっただ中なのだというのも、実は世界の分散化の影響があるのではないかと考えると、身の回りで起こっている急激な変化にはほとんどこの分散化が潜んでいるのではという視点を持て、現象をぐっと自分に引き寄せて考えられるようになりました。
 
 今まで色々な本で重要な問題として何度も目にしてきたはずの分散化というキーワードがこの本を読むことでなんとなく輪郭を掴めました。
 

最後に

 
 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本を読んだ際も思いましたが、お金の影響力だけが強くなり、資本主義が暴走した結果、今度は社会全体で価値を重視するという強力な揺り戻しが起こっており、ここでこの流れに適応できるかどうかが今後の人生を左右する重要な局面になるなと強く感じます。
 
 
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)