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奪われし玉座 ウィッチャーテイルズ(PS4版) 〈レビュー・感想〉 神話のごとき死と再生の旅

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トレーラー

 
評価:80/100
 
作品情報
ジャンル
シングルプレイ用カードゲーム
発売日(日本国内)
PC版 2018年10月23日
PS4版 2018年12月4日
開発(デベロッパー)
CD Projekt RED
開発国
ポーランド
ゲームエンジン
Unity

短評

 
 ウィッチャー3に収録されていたミニゲームを利用してスピンオフを作るという一見安易そうなコンセプトとは裏腹に、内容はCD Projekt RED作品らしく非常に硬派で妥協のない完成度の高さ。
 
 シングルプレイ用カードゲームとしては破格なまでのシナリオの作り込みと、長編ゲームに匹敵するほどのボリュームで、質・量ともに備えた贅沢な一作。
 
 ただ、カードゲーム部分はデッキ編成の自由度が低く、ほとんど似たようなデッキで戦い続けるため早々にマンネリ化しやすいという欠点も抱える。
 

オマケのミニゲームから本格的な対戦仕様へと生まれ変わったグウェント

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 本作は、ウィッチャー3に収録されていたカードゲーム型のミニゲームであるグウェントを本編から抜き出し、一本のゲームに仕上げたようなウィッチャーシリーズのスピンオフタイトルです。
 
 グウェントは、最初に引いた手札を変えず連続で3ラウンド戦い、2ラウンドを先取すれば勝利という変わったルールなため、自分に有利な状況を作ってわざと敗北し、次のラウンドに戦力(手札)を温存するという駆け引きがあり、シンプルながら奥深く大変魅力的なミニゲームでした。
 
 しかし、本作のグウェントはオンライン対戦用に作られた『グウェント ウィッチャーカードゲーム』のほうをベースにしているため、シングルプレイ用だったウィッチャー3のミニゲーム版とは比べものにならないほどルールが複雑化し、難易度が上がっています。
 
 自分と対戦相手が毎ターンカードを出し合い、場に出されたカードの合計戦力ポイントが高い方が勝ちという基本ルールは同じです。それ意外に、ほぼ全カードに固有のアビリティ(カードを場に出す際に発動するものや、任意のタイミングで発動するものなど)が設定されたせいで、膨大な数のアビリティを把握しなくてはならず、ミニゲーム版とはほとんど別のゲームと言ってもいいほど感触が異なります。
 
 そのせいで『ハースストーン』のように、予期せずアビリティが他のアビリティを誘発し、何重にも重なって発動する状況が頻発するため、どのアビリティがどのカードと呼応しているのか確認しなければならず、常に忙しないです。
 
 その分、ただ強力なカードを集めて強い順にデッキに組み込めば良かった3のミニゲーム版と比べ、アビリティ同士のコンボを考え、デッキのコンセプトを練る面白味が生まれたため、最終的な面白さではこちらのほうが勝ります。
 

シングルプレイ用カードゲームの常識を超えた神話的ストーリー

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 ウィッチャーシリーズの年表で言うと本作は1267年と原作小説版と同じ時代で、ゲーム本編から見ると過去のエピソードとなります(ゲームの前日譚というよりは、原作小説版のサイドストーリーと言った感じ)。
 
 ちなみに、ゲーム版のウィッチャー本編は年表で言うと一作目が1270年、2が1271年、3が1272年の話なため、1の3年前(3からだと5年前)の出来事です。
 
 ゲームをやる前は主人公がゲラルトどころかウィッチャーですらないスピンオフということもあり、ほとんどグウェントのほうが目当てでストーリーにはまったく期待してはいませんでした。
 
 しかし、蓋を開けてみるとテーブルトークRPG風の語り口(『ドラゴンズクラウン』のようなスタイル)ながら、そこらの大作ゲームと比較してもなんら見劣りしない堂々たる内容で、良い意味で予想を裏切られました。
 
 

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 まず、主人公である北方諸国に属する小国ライリア&リヴィアの女王メーヴが家臣の反乱によって祖国を追われ、北方諸国の各地を流浪しながら戦力を蓄え、自らの祖国を反逆者から奪還するという貴種流離譚きしゅりゅうりたん的な基本部分が丁寧で、ここの時点でぐっと話に引き込まれてしまいます(吹き替えを担当している朴ロ美さんの演技力も素晴らしすぎる)。
 
 それに、ニルフガード帝国の侵略行為で国土を焼かれ、屍肉目当ての怪物で溢れ返る国や、怪物と疫病に支配され兵士が奇病で死んでいくおぞましい湿地帯など、メーヴが辿る過酷な旅を、神話において英雄へ課される怪物退治の試練に見立てているため、カードゲームのシナリオとは思えないほど威厳と厚みがあり圧倒されました。
 
 メーヴの旅の面白さ意外でも、ウィッチャーがこの世界ではどれほど異端な存在なのかが自然と理解できる話の構成も非常に良くできています。
 
 本編シリーズでも遺伝子が変異し、身体能力が異様に高く、人間には毒である霊薬を飲んで肉体を強化し怪物と戦うウィッチャーたちがどれほど人間離れした奇妙な存在なのかをムービーで見せたり、アニメーションで説明したりと、何とかイメージを固めようと工夫していました。
 
 それに対し本作は、最初にメーヴたち怪物退治の素人が怪物たちにほぼ無策で挑む様をしつこく体験させることで、プレイヤーに染みつく異形の存在と戦い慣れたウィッチャー視点を一端洗い落とし、無知な一般人の視点に戻します。
 
 その過程を経てからようやく怪物の生態や弱点に精通するウィッチャーが登場するため、「なるほど、ウィッチャーってこの世界の人間の目にはこんなに頼もしくて博識に映るんだ!」と、怪物に対して何ら知識を持たない一般人の視点から怪物を知り尽くしたウィッチャーたちを観察するという貴重な体験ができます。
 
 ここら辺の見せ方は非常にスマートで、メーヴ率いる一団は人間相手の戦には非常に長けているものの、怪物相手だと素人同然という対比がされるため、そんな戦争のプロであるメーヴすら尻込みする怪物にまったく臆すことのないウィッチャーの異常さが際立ち、初めてウィッチャーというもののイメージを明確に捉えられました。
 
 さらに、他国を侵略するニルフガード帝国が、侵略先の国で怪物と遭遇し、兵の消耗を避けるためにウィッチャーを金で雇い退治させるという、見方によってはウィッチャーが侵略の手伝いをしているようにも取れる話の展開にすることで、怪物退治のプロとして頼りになるのと同時に、やはり金さえ貰えばどんな汚い仕事でも請け負うウィッチャーはこの世界で忌み嫌われる存在でもあるという点もすんなり納得がいきます。
 
 本作は、このようなあらゆる国や組織、人物の表と裏を描き相対化させることが徹底されています。メーヴの祖国ですらニルフガードの侵略の被害者であるという側面と、エルフやドワーフなど非人間族に対して比較的寛容なニルフガードよりも差別が酷く人権意識が低いという加害者の側面、その両面が情け容赦なく描かれ、旅を通じて様々な価値観に触れる度、この世界の見え方が次々と変容し非常に刺激的でした。
 

ウィッチャー本編より洗練された選択肢の重み

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 本作はウィッチャーシリーズのスピンオフということで、ゲーム版の本編にある多数の要素(マップを散策可能なことや、ファストトラベルポイントを見つけながら進んでいく作り、など)が再現されているものの、中でも一際存在感があるのが、正解も不正解もない選択肢の重みです。
 
 ウィッチャーの本編はモンスタースレイヤーであるゲラルト視点の話なので、基本的には政治・軍事に影響が大きい選択肢は希です。しかし、こちらは女王であり、かつ大軍を率いる将という重責を担う立場なため、選択肢が常に自軍全体に影響する重要なものだらけで、ハッキリ言って本編よりも遙かに選択肢の作りが洗練されています
 
 本作は、敵に慈悲を与えるとか、この世界で差別される非人間族であるエルフやドワーフに同情するといった選択肢を選んだとしてもほとんど報われません。それどころか、ヘタをすると寝首をかかれ自軍に被害が出るという、恩を仇で返されるような最悪な結果を招く局面も多く、選択がどう転ぶのかまるで予測できません
 
 そのような善行・悪行にさして正解を決めず、全てをプレイヤーの選択に委ねるという態度が最も強くゲーム的に現れているのは、味方のユニットが自軍に残るか去るか、選択肢に絡める手法です。
 
 このゲーム内では、カードは全てこの世界の人間や兵器とイコールという体なので、主人公であるメーヴに味方してくれる固有の名前が設定されている人物は、ストーリー展開上自軍から去ると同じ名前のカードも使えなくなります。
 
 この固有の名前を持つキャラクターカード(呼び名はゴールドカード、通常のカードはブロンズカード)は、たった一枚で危機的な状況をひっくり返せるほどの優れた性能を有する者もおり、戦闘では大変重宝します。
 
 しかし、このあまりにも強力過ぎるという特徴はただカードバトルで有利に働くだけでは終わりません。強い人物はその強さに比例するように強固な信条や、国家や種族、血筋への揺るがない帰属意識を持っており、それに反するような言動を取ると即自軍を去ってしまいます。
 
 そして、最悪なのがそのような信条に触れるような状況というのがほとんどの場合、捕虜や罪なき者への虐殺のような倫理的・道徳的に許されないような局面が多いこと
 
 今までそのユニットに何度も窮地を救われ、いつしか自軍の中核にまでなっていたのに、ある時虐殺や倫理に反するような行動を要求(または関与)し、その提案を断ったり罰したりすると自軍を去ってしまうという展開は、精神的にかなりキツイものがありました。
 
 現状の戦力を維持しようとすると非人道的な行いに目をつぶる必要に迫られ、かと言って断罪すると戦力が激減するという、強力なユニットを人質に、意に沿わない選択を強要してくる本作のえげつなさは本編のウィッチャーシリーズを軽々と凌駕しています。
 
 このような派手な選択肢のえぐさはもちろん、マップのそこらに転がっているサブイベントにすら倫理感を揺さぶるような状況設定が徹底されており、改めて本編同様、CD Projekt REDのシナリオライターの優秀さに感激させられるばかりでした。
 

不満あれこれ

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 本作で一番不満を覚えたのは、ストーリーに凝りに凝りまくっている弊害で、デッキ編成の自由度がほとんど存在しない点。
 
 本作は、3のように作中の人物たちがグウェントというカードゲームで遊んでいるのではなく、ウィッチャーの世界で起こる戦争をグウェントで再現するという主旨なので、厳密にはカードゲームですらありません。
 
 そのため、カードは全て実際の人間や兵器という体で、基本的に敵勢力のカードは使用ができず、好きな勢力でデッキを組むこともできません。なので、終始同じようなカードを使い、中盤くらいで必勝の戦略も固定され、それ以降はひたすら同じようなカードで同じような戦い方を繰り返す作業と化します。
 
 デッキに組み込むカードも、特殊なルールが課されるイベントバトルではどうしても相手の場に出されたカードを攻撃する必要があり、攻撃用のアビリティを持ったカードで固めないと、そもそもゲームを先に進めることすら出来ません。この、攻撃アビリティを持ったキャラを強制的に使わされるという点もデッキ編成の幅を狭める原因の一つになっています。
 
 戦闘はほとんど作業な上に、対戦中の処理もやや重く、度々処理落ちするなど、あまり戦闘のテンポがよくありません(プラス、フィールドで地図を開く際のレスポンスもやや悪い)。
 
 さらに、意味がまったく分からない不具合は、デッキ編成画面で十字キーでカーソルを操作しようとするとデタラメな挙動をするという謎の現象です。十字キーを押すと突然カーソルが消えて、遠くに移動したり、下のカードを選ぼうとしてもカーソルがてこでも動かなくなったりと、きちんとテストプレイしたのか疑問に思うほどです。
 
 多分、元がPC用のゲームでマウス操作を前提としているのを無理矢理ゲームパッド用に変換しているため、不具合が発生しているのだと思います。
 
 この不具合は致命的な問題とまではいかないものの、デッキ編成する度に軽度のストレスに悩まされるので、なぜ改善しないのか謎です。
 
 それに、選択肢が大量にある割に、二周目への引き継ぎはなく、周回プレイをしようとしても、デッキ編成の自由度がほとんどないことと相まって、モチベーションが上がりません。
 

最後に

 
 クリアまで約32時間ほど(途中のメインストーリーと関係ないサブイベントをあらかた飛ばせば30時間もかかりません)。
 
 最初はグウェント目当てで始めるとそちらはイマイチで、むしろスピンオフなのにも関わらず妥協無く作り込まれたシナリオと、本編を凌駕するほど厳しい、選ぶのに常に苦痛がともなう選択肢作りのセンスのほうにこそ魅了されました。
 
 ゲラルトが主人公ではなく、アクションゲームですらないスピンオフタイトルなどと侮っているとCD Projekt REDの圧巻のシナリオ力に打ちのめされる地味な名作です。
 

ウィッチャーシリーズ

タイトル
ハード
ウィッチャー2 王の暗殺者 PC
ウィッチャー3 ワイルドハント PS4