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ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン3 〈レビュー・感想〉 ショッピングモールという名の侵略者

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トレーラー

 
評価:90/100
 
作品情報
配信日 2019年7月4日
話数 全8話
アメリカ
動画配信サービス ネットフリックス

短評

 
 相変わらず最後まで飽きることがない大安定の面白さは健在で、娯楽作品としては超一級。
 
 シーズン2に引き続き細かい不満は多数あるものの、それでも回想が多くテンポが悪いなどの欠点はあらかた克服してしまい、シーズン1同様の気付いたらあっという間に全話見終えてしまう中毒性が回復した。
 

あらすじ

 
 時代はシーズン2の終わりから一年が経過した1985年の夏。ホーキンスの町の住民たちは買い物も食事も映画も一度に楽しめるショッピングモール、スターコートの虜になっていた。
 
 そんなオープンしたばかりのショッピングモールに湧くホーキンスの住民を余所に、町のあちこちで再び奇妙な現象が起こり始める。突如、磁力を失い落下するマグネット。凶暴化しなぜかエサでもない肥料を大量に食い散らかすネズミたち。そして、ダスティンが受信したロシア語による謎の暗号通信
 
 事件の謎を追うと、それらの現象にはショッピングモールが深く関わっていることが分かっていき・・・・・・。
 

ホーキンスの町やウィルの自宅を脇役に追いやってしまうショッピングモールの存在感

 
 今シーズンは子供たちが夏休み中なのか、ほとんどショッピングモールに入り浸っているため、ホーキンスの町というよりも、ほとんどショッピングモールが話の中心で、これまでのシリーズとやや雰囲気が異なります。
 
 ただ、画面を占領する時間が長い分、スターコートモールのセットの作り込みは細部まで緻密で、シーズン2のCG臭い画面だらけという不満はあらかた消え失せました。
 
 それに、ショッピングモールそのものを陰謀の中心に据えてしまうという奇抜なアイデアのおかげで、80年代をややノスタルジックに描くと同時にやはり現代のセンスも混じり、懐かしさだけに溺れず、新鮮さも感じさせる理想的なバランスになっています。
 
 ドラマ部分も、ずっと孤独に生きてきてあまり外の世界を知らないエルが、自分を束縛しようとするマイクに対しモールで自由気ままにショッピングすることで、恋人の好みの女になるのではなく、好きなファッションを楽しみ自分らしさを獲得していくという成長と連動させており、このドラマを作っている人たちは本当にセンスが良いなと感心させられました。
 
 しかし、モールを魅力的に描く分、やはり地元の商店が潰れて失業者が溢れかえるというショッピングモールがアメリカの各地にもたらした負の側面の描写がやや弱く感じ、こちらは物足りなかったです。
 
 1987年に公開されたオリバー・ストーン監督の映画ウォール街でも描かれるように、この頃はそろそろ金融バブルでアメリカが致命的に壊れ始める時代でもあり、せっかくモールをホーキンスの町に対する侵略者的に描くという寓話構造を成立させているのに、もう少しそれが町にもたらす光と影を極端に際立たせても良かったかなと思います。
 

ジュブナイルとしての爽やかな成長物語

 
 今シーズンも、シーズン1、2と同様、中毒性の高い先が気になるストーリーでグイグイ引っ張り続ける作りは同じなものの、同時にシーズンを重ねるごとに子供たちが人間的に成長しているのが手に取るように分かり、見れば見るほどキャラクターへの愛着が深まっていきます。
 
 今回もやはりシーズン終盤になると序盤に比べ、他者への思いやりや理解度が増し、一回り人間的に成長している様が実感でき、また次のシーズンも見たいと思わせてくれます。
 
 ウォーキング・デッドのような1シーズンが16話あり、ある程度登場人物の葛藤などに時間を割けるようなシリーズならまだしも、8話や9話程度のボリュームでここまで話を盛り上げながらキャラクターの成長も描いて見せる、ダファー兄弟のバランス感覚の冴えに改めて驚かされました。
 
 ナンシーやスティーブは、シーズン1からほとんど別人のような人の痛みが分かる青年へと成長しており、このナンシーたちやや年長のグループと、マイクたち年少のグループが二つ存在することで、マジメになりすぎず、かつバカ騒ぎするだけでも終わらない、苦い成長もしっかり描く青春ドラマとして誠実な作風になっていると思います。
 

不満あれこれ(※ネタバレあり)

 
 これまでもずっと抱えていたものの、今シーズンでついに問題が表面化してきたなと感じたのは、デモゴルゴンやマインド・フレイヤーたちがこちら側の世界にちょっかいを出してくる動機の不明さ。
 
 そろそろただ単にホーキンスの町に危機的な状況をもたらす便利な存在にしか見えず、「そもそもなんでこの異形の怪物と戦ってるんだっけ?」と疑問に感じる瞬間が増えてきました。
 
 シーズン1はまだ裏側の世界に迷い込んだウィルを救出するという明確な動機があって動いていたため特に疑問もなかったものの、さすがにもう何かしら敵側の最終目的を明かしてくれないと、ストーリーの都合だけで動いているようにしか見えず、イマイチ話にのめり込めません。
 
 敵の動機が分からないという不満と関連するのが、今シーズンのマインド・フレイヤーに体を乗っ取られた人間がホーキンスの住民に紛れ込み、工作活動をしているというホラー的な設定の弱さ。
 
 てっきり、話が進むと町の人間が次から次に意識を乗っ取られてパッと見誰が普通の人間で誰がマインド・フレイヤーに操られているのか区別できないという、映画の遊星からの物体Xのようなシチュエーションが生じるのかとおもいきや、別段そんな展開にならず設定が不発のまま終わるので肩透かしでした。
 
 すでにコチラ側が意識を乗っ取られていると分かりきった人間を捕まえて人間かどうかテストをしてもサスペンスになるはずもなく、やりようによってはいくらでも面白くできたのに、勿体ないです。
 
 それに、シーズン1からずっと気になっていた、肝心な部分が説明不足な点や、やや全体的にディテールの詰め方が甘い点が増えました。
 
 特にシーズン1のある組織の描き方と同様にソ連の描写がずさんで、ただのマヌケな集団として描いたせいで怖くも何ともない、ユルユルなコメディのようになってしまい、次のシーズンにこれを引っ張るのには抵抗があります(どうやって冷戦時代にアメリカ国内にこれほど大量のソ連兵を潜り込ませ、同時にソ連製の武器も持ち込んだのか説明もないし、敵地なのにロシア語で通信しているのも迂闊だし、撤退時に施設を証拠ごと破壊しないのも謎)。
 

最後に

 
 シーズン1、2の感想とほぼ同じ、細かい不満は無数にあるものの、意表を突くような冷戦とショッピングモールを掛け合わせる大胆なアイデアや、変わらず画面に映るだけで癒されるキャラクターたちのおかげで最終的には魅力が大幅に勝り、非常に楽しめました。