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この中毒度、未知の世界! ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン1 〈レビュー・感想〉

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トレーラー

 
評価:90/100
 
作品情報
配信日 2016年7月5日
話数 全8話
アメリカ
映像配信サービス ネットフリックス

短評

 
 『E.T.』や『グーニーズ』、『スタンドバイミー』などジュブナイル映画を中心とし、あらゆる80年代カルチャーへのオマージュで溢れ返る、作り手の好みがだだ洩れな内容なものの、ただの懐古に陥らずその時代に思い入れのない人間でも熱中できる作品に仕上げて見せた手腕が見事。
 
 数あるアメリカドラマの中でも出色の出来である脚本を始め、80年代にタイムスリップしたかのような舞台となるホーキンスの町並みや主役である子役たちの存在感、トリップするような幻想的なシンセサイザーのBGMなど、作品を構成するあらゆる要素の完成度がおしなべて高い大傑作。
 

あらすじ

 
 1983年、アメリカインディアナ州にある平和な田舎町ホーキンスで一人の少年が謎の失踪を遂げる。その事件を皮切りに平和なはずのホーキンスの町ではなぜか奇妙な出来事が立て続けに発生するようになった。
 
 失踪した少年ウィルの友人であるマイク、ダスティン、ルーカスらは、大人たちに隠れ独自にウィルの捜索を開始する。しかし、マイクらはこの事件の裏側に国家規模の巨大な陰謀が関わっていることなど知るよしもなく・・・・・・。
 

無駄を削り、美しく磨き上げられた高密度の脚本

 
 本作を見る前は、正直80年代のジュブナイル映画は一応勉強がてら一通り見てはいるものの、特に何の思い入れも興味もないので、コンセプトが肌に合うかなぁと不安でした。
 
 しかし、ひとたび物語の幕が上がるとその圧倒的なストーリーの面白さに瞬く間に魅了され、合う合わないという相性の問題は杞憂に終わりました。
 
 本作の魅力は数え切れないほど存在し、挙げ出すとキリがありません。
 
 作り手の80年代の様々なジャンル映画への尊敬の念と温かい眼差しがこもった惜しみない愛情。その愛が詰まったホーキンスの町並みや、そこに暮らす人々に説得力を持たせる一軒一軒の家々の作り込み。作品に命を吹き込む子役たちの名演や、幻想的でうっとりさせられるシンセサイザーの音色など、美点は数限りなくあります。
 
 ただ、数ある要素の中でも特に印象的なのはその超高密度の脚本の完成度です。
 
 本作は、アメリカドラマにありがちな基本となる設定やキャラクターだけを先に考え、話の展開自体は出たとこ勝負で転がしていくという定番な作り方とはやや異なり、シーズン全体の構成を徹底して作り込み、伏線を敷いては絶妙な間隔で回収していくという繊細な作りをしています。
 
 そのため、シーンごとの密度が非常に濃く、他愛もないやり取りに見える会話の中にもキャラクターの掘り下げ描写や後に伏線だったと分かる一言が大量に散りばめられており油断できません。
 
 視点の置き所も話の中心となる子供たちやその親、警察など序盤からあちこちに飛ぶものの、この全ての視点が同じ事件を別々の角度で追い、それぞれのパートで得た情報が他の視点と密接に繋がっていくという非常に有機的な作りのため、見ていて単調にならず、ストーリーへの興味も尽きません。
 
 アメリカドラマでここまでストーリー進行の軸がぶれず、今何をやっているのかを一瞬たりとも見失わない、整理整頓が行き届いた脚本を見るのは初めてかもしれません。
 
 登場人物は軒並み魅力的で、脚本の完成度も恐ろしく高いため、先が気になるストーリーに一切の懸念なく集中でき、見始めると勢いが止まらず最終話までほとんど一気見してしまいました。
 
 基本である脚本が良くできているとここまで心地よく物語に夢中になれるのかと、改めて脚本の重要性を思い知らされました。
 

脚本同様に切れ味鋭い編集

 
 ネットフリックスのオリジナルドラマは映画志向がやたら強く、映像にこだわりを感じる反面、全話ディレクターズカット版を見ているような、ちんたら間延びしがちな傾向が気になることが多くあります。
 
 そのため、編集のメスが入りテンポが良い地上波のドラマに比べ、連続して視聴しようとすると体力的な負担がやや大きく感じます。
 
 それに対し、本作は無駄のない脚本同様、編集もほとんど地上波のドラマと見紛うほど余計な部分を刈り込んでおり、ラストにいちいちクリフハンガーのような衝撃的な展開を置かずとも、その抜群のテンポに釣られて自然と何話も見続けてしまいます
 
 この見やすさを優先するような編集テンポがストーリーの中毒性をより強化する相乗効果を発揮し、大変好ましかったです。
 

不満あれこれ

 
 不満と言っても、本作の完成度の高さに比べれば微々たるものの、それでも気になる部分はいくつかありました。
 
 まず、予算が足りないのか、主人公たちの前に立ちはだかる組織のスケールの出し方がやや物足りない点。これは、現代で80年代を再現するという企画上、多分80年代っぽさを出すための美術などに多くの予算を費やしたため、巨大な組織を映像的に説得力を持たせて描けるほどの余裕がなかったためだと思います。
 
 この組織は邪魔者を排除したり、ホーキンスの住人を監視していたり、州警察を手駒として動かしたりと、一応恐ろしい相手として描こうとはしているものの、わりと最初から自分たちがしでかしたことの収拾がつかずゴタゴタしている場面を何度も見せてしまうため、ただのトラブっている集団にしか見えず、正直あまり脅威に感じません。
 
 後、これは長所と短所両方の成分を含んでいるため一概に不満とも言えないのが、まるでライトノベルのように、見ているコチラ側が知っている知識は作中の人物も知っている、もしくは不自然なほど瞬時に理解するなど、説明描写を大胆に省略しがちなこと。
 
 子供たちはどんな超常現象を目撃しても全てマンガの『X-MEN』に登場するミュータントの能力や、テーブルトークRPGの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』といったフィクション内の設定で理解してしまい、非科学的なことにまったく疑問を持ちません。
 
 大人たちも最初は超常現象を主張する人間に対して疑いの眼差しを向けるものの、子供たちと同じようにわりとあっさり納得して事態を受け入れてしまうので、確かにサクサク話は進むものの、「そんなに物分かりが良すぎて大丈夫なのか・・・・・・」と若干未知のものに対して疑いを持たない警戒心の無さに呆れもします。
 
 このありえない現象を受け入れる過程が性急なせいで、それまで当然と信じていた常識が未知の世界がもたらす非常識によって否定され、現実への認識がひっくり返されるというカタルシスがほとんどなく、終盤は物足りなさを覚える場面が多かったです。
 
 ただ、その分説明を省くことでテンポの良さを確保することには成功しており、テンポのためにカタルシスをやや犠牲にしたと思えばとりあえず納得はできます。
 
 日本のアニメも異世界で突然ゲーム用語が出てきてもまったく説明がないとか、この本来必要な説明をムダとして省略するというラノベ化現象は世界的な流れなのかなぁと複雑な気分になりました。
 

最後に

 
 ごくごく僅かな不満はあるものの、とにかく視聴者を楽しませることだけに特化したようなドラマなため、見ている間中はずっと至福でした。
 
 アメリカドラマにしては珍しい少年少女の友情や恋心といった青春ドラマがそのまま世界の危機と結びつくストレートにセカイ系のような話のため、普段海外ドラマを見る習慣がなくとも、マンガやアニメが好きだったら入り込みやすい作風です(後、5pbのゲームと好みの方向がどんぴしゃなので、科学アドベンチャーシリーズのコンセプトが肌に合うなら高確率で楽しめます)。
 
 このドラマを見るためだけにネットフリックスと契約しても釣り合うほどの大傑作中の大傑作!
 

余談(※ややネタバレ)

 
 異次元空間を水が張られている真っ黒な部屋で表現するという手法に見覚えがあるなと思いずっともやもやしていたら、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』という映画で見た光景だということを唐突に思い出しました。
 
 そんな映画完全に存在を忘れていたので、このドラマを見なかったら死ぬまで思い出さなかったかも。
 

ストレンジャー・シングス 各シーズン

ST シリーズ
話数
シーズン2 9
シーズン3 8
 
Stranger Things 1

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