評価:65/100
放送期間(アメリカ) | 2016年4月~10月 |
話数 | 全15話 |
国 | アメリカ |
ネットワーク | AMC |
ドラマの概要
この作品は、ドラマ『ウォーキング・デッド』の過去を描くスピンオフシリーズのシーズン2です。
シーズン1と比べ映像面は撮影の腕が格段に向上したことと、主要な舞台となるメキシコの広漠で乾いた風景がウォーキング・デッド本編の緑豊かなアメリカの田舎とはまた違った趣で楽しむ余地が生まれました。
ただ、シーズン1でも問題を多数抱えていた脚本面はより深刻さを増し、もはや会話の内容が噛み合っていない箇所だらけで、雰囲気と場当たり的な勢いだけで進むストーリーは見ていて苦痛です。
あらすじ
軍の施設からニックを救出する過程で出会った謎の男ビクター・ストランドの所有する大型クルーザーアビゲイル号で、太平洋へと逃れるマディソンたち一行。
当初はマディソンたちを信用せず目的地をはぐらかしていたビクターだったが、ついにメキシコのバハに崩壊後の世界でも安全に暮らせる秘密の場所があると告白し・・・。
シーズン1では息を潜めていた脚本の粗が噴出するシーズン2
始まって直後は、シーズン1に比べ遙かに撮影レベルが向上し映像の見映えが良くなったことと、序盤の海上が舞台という珍しい設定やアメリカの田舎とはまた趣の異なるメキシコの景色が新鮮など、要領を得ない脚本に不満を覚えつつも、そこそこ楽しめていました。
しかし、回が進むごとに脚本からもたらされる微量の違和感は徐々に、しかし確実に蓄積されていき、終わりが近づく頃には我慢の限界に達します。
登場人物同士の会話はほとんどまともに成立しておらず、見ているとあまりの会話の噛み合わなさに頭が段々おかしくなってくるような気分で、中盤以降はかなりキツかったです(アニメで言うと『ギルティクラウン』や『Gのレコンギスタ』を見ているような気分です)。
シーズン1も同じような違和感はあったものの、ゾンビものではありがちなウィルスの感染が拡大していくという展開が大半を占めていたのと、プロローグ的な短めの全6話構成なため化けの皮が剥がれる前にさっと終わってしまったことで本質的な問題には気付けませんでした。
しかし、シーズン2は全15話と長丁場で、出来損ないの脚本から生じる問題に否応なく直面させられます。
会話も起こる出来事も表面上の雰囲気だけで流れていきほとんどまともに成立しておらず、サスペンス的な展開もバカな人物の軽率さが事態を悪化させるとか、人の話をまるで聞かない人間が暴走するなど二流以下なものばかりで、見ていると段々疲れが溜まってきます。
しかも粗いのは脚本だけに留まりません。
カモフラージュのためゾンビの血を全身に塗りたくっている相手に抱きついたり、顔にゾンビの血がべったり付いている人の頬にキスをしたりと常識的に考えたらありえない行動を取り興ざめする場面が散見されます。
もはや、誰も作品の仕上がりをチェックしていないんじゃないかという疑念すら抱くほどノイズを除去できておらず、一本の作品としてボロボロもいいところ。
突飛な行動ばかり取り続ける変人の奇行に付き合わされ、バカがひたすら軽率な行動で起こすトラブルに巻き込まれ続け、誰と誰が会話しても内容がイマイチ噛み合わない要領を得ないやり取りを延々聞かされ続け、どこに向かっているのか分からない深みも何もない場当たり的な展開に翻弄され続けと、途中からこれは一体何の苦行なんだろうと思うほど作品がぶっ壊れており、シーズン1と同じでウォーキング・デッドのスピンオフでなかったら絶対に見ないと思うような完成度の低さでした。
ほとんどの展開がなんとなくの雰囲気や、その場で思いついたような雑なアイデア(ニックが不自然極まりなく崖から落下して崖下にいるゾンビに襲われそうになる、など)だけで出来ている本作を見ると、普段当たり前のように見ている海外ドラマがいかに脚本に労力を割き、違和感を覚えるようなヘタな演出を避けているのか痛感させられます。
最後に
今作は不満だらけなものの、それでもゾンビものでは珍しい序盤の船での航海シーンはワクワクするし、終盤のトラヴィスと息子であるクリスの親子間のすれ違いを容赦なく描く展開など、見応えがあるシーンはそこそこあります。
特に、トラヴィスとクリスの話は、ウォーキング・デッドのリックとカールの父子関係がダブるので、より悲痛さが堪え、終盤はこの二人の話から目が離せなくなる程度には夢中になりました。
しかし、細部の絶望的なまでのネジの緩さがたたって、全体としては終始締まりのない印象しか受けず満足度は極めて低いです。
もはやこのシリーズの最大の謎は、なぜ打ち切られないのかという疑問です。
フィアー ザ ウォーキングデッドシリーズ
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