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【PS4】見た目は最新でも中身はいつものCoD |『コール オブ デューティ WW(ワールドウォー)II』(※キャンペーンモードのみ)| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:75/100
作品情報
ジャンル FPS
発売日(日本国内) 2017年11月3日
開発(デベロッパー) Sledgehammer Games
開発国 アメリカ

ゲームの概要

 
このゲームは、『CoD(コールオブデューティ)』シリーズの一作です。
 
今作は長らく宇宙や近未来を舞台に架空の銃で戦うSFに寄っていたシリーズを原点である第二次世界大戦(以下、WWⅡ)に回帰させた作品です。
 
FPSとしては、シリーズの定番である体力の自動回復制が廃止され、分隊行動を意識させるため分隊アビリティという仲間が戦闘をサポートしてくれる新システムを採用するなど、これまでのマンネリから脱却を図ろうとした跡が窺えます。
 
しかし、ゲームの根幹部分が悪い意味でいつもの『コール・オブ・デューティ』すぎてせっかく第二次世界大戦に回帰したのにも関わらずゲームとしての新鮮さはありません。
 

頼れる戦友たちと駆け抜ける西部戦線

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今作は久しぶりに第二次世界大戦に回帰しており、ワクワクしながらゲームを始めると最初のチャプターがWWⅡを題材にしたゲームのド定番であるノルマンディー上陸作戦だったので「また『プライベートライアン』か・・・」と失望しました。
 
何回ゲームの冒頭でオマハビーチに上陸してトーチカを破壊して回らなければならないのかと、正直既視感しか覚えない序盤は、画面のド派手さとは裏腹にテンションがまったく上がりませんでした。
 

 
しかし、今作は『モダンウォーフェア』の一作目で主人公が所属するSASのように、ゲームの初めから終わりまで常に同じメンバーと作戦行動を共にし続けるため、後ろに行けば行くほど当初は顔と名前が一致しなかった仲間に徐々に思い入れが生じ評価が向上します。
 
 

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戦友の中でも特に好きだったのがカメラマン志望のスタイルズ。インテリなのに天然で知的なボケを披露する小隊のユーモア担当。
語りの視点も戦況に応じて主人公のダニエルズから戦車の操縦士や戦闘機のパイロット、フランスのレジスタンスメンバーなどに移ることはあるものの、話の軸は常に小隊に置かれています。
 
 

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そのため、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を俯瞰するのではなく、上陸地点であるフランスからドイツに向かい進軍していく小隊(アメリカ陸軍第1歩兵師団)の視点に寄り添い語られていくという作りで、ブレの無い一つの物語として堪能できました。
 
ただ、視点が固定され過ぎている分、ヨーロッパにいる連合軍の軍隊はアメリカ軍だけのようにも見えるという弊害もあります。
 
一周目は良くも悪くもCoDらしい怒涛の展開に流され過ぎてやや物足りなさを感じましたが、トロフィーの回収がてら二周目をすると、一周目の序盤には誰が誰だか見分けが付かなかった仲間の細かいやり取りが把握できるようになるため、ぐっと印象が良くなります。
 
多少のワガママを言えば、個々の人物が戦争後に何をしたいのかという夢や希望を丁寧に語らせて、終盤の主人公の決断に重みを持たせるなどの工夫がもう少し欲しかったくらいです。
 
ストーリー部分だけでなく、システム的にも分隊アビリティという、敵を倒すごとに溜まっていくゲージが一定量に達すると、仲間が弾薬や各種グレネードを補給してくれたり、体力を回復する救急キットをくれたり、敵の位置を分かりやすくハイライト表示してくれるといった要素が存在します。
 
これはシンプルながらもプレイ中は常に仲間の存在を意識させる工夫として機能しており好ましかったです。
 

・・・とは言っても、結局派手さだけが先行しがちないつものCoD

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仲間との絆を中心とするコンセプト自体は好みでした。
 
しかし、それを否応なくプレイヤーに鮮烈なゲーム体験として刻ませるほどの濃さはなく、どうしてもただ言われた通り敵を全滅させ続けるだけの変わり映えしないCoDの範疇を出ません。
 
パッと見のテクスチャやライティングなどは最先端のゲームに比べても遜色がないほど美しいのに、キャラクターの挙動は不自然で、そこらに置かれているオブジェも本当に作り物感が丸出しなものも多くあります。
 
 

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おまけに銃撃の迫力が今一つなため、まるで基本のグラフィックはPS4なのに、ところどころPS3など旧世代機レベルの素材が混じり込んでいるようなちぐはぐさを覚えました。
 
どう見ても過去に他のゲーム用に作った素材をほぼそのまま流用しているのだと丸分かりな安っぽさは、WWⅡの迫撃砲や機銃の雨の中を身を屈めて進む泥臭いシチュエーションとの相性がすこぶる悪く、軽さが異様に浮いて見えます。
 
結局、CoDシリーズの量産体制と、準備不足なままいきなり近未来や宇宙からWWⅡに回帰するという強引さのせいで、どうしても間に合わせで作ったようなやっつけ感が強い一作と言った印象を拭えませんでした。
 

第二次世界大戦のテンプレ感

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素材を使い回しているような安っぽさにも通じるのが、どうしてもプレイ中拭うことのできない第二次世界大戦を題材としたゲームのテンプレ臭です。
 
ヘタをしたらPS2時代の『メダル・オブ・オナー』やCoDシリーズ初期の頃のほうがチャレンジ精神に溢れていたのではないかと思うほど、どこかで見たことがあるようシチュエーションを凄いグラフィックで派手に作り直しただけのような空虚さで、まるで新鮮さがありません。
 
念のため手元にあったXbox360版のCoD2、3をプレイし直すと、さすがに今作の操作性の快適さやグラフィックの凄まじいまでの進化ぶりに驚かされるのと同時に、やはり競争相手が多かった昔のほうがWWⅡの描き方のバリエーションやアイデアが豊富で、物足りなさの理由が分かりました。
 
シングルプレイ用ゲームが盛んで、ライバルが大量に存在し切磋琢磨していたからこそ尖ることも許されていた過去作と比べるのはさすがに可哀そうですが、どうしても見た目がキレイになっただけにしか見えず、新しいWWⅡの世界に触れているというワクワク感は希薄でした。
 

不満あれこれ

 
まず、分隊行動を意識させる分隊アビリティはコンセプトとしては好きなものの、実際ゲームをやると問題が山積みであまり手放しで褒められません。
 
特定の仲間の近くにいかないと分隊アビリティが使えないという仕様は、基本は屋外の広めなマップが多く、仲間があちこちに散りやすい状態とうまく噛み合っておらず非常に面倒です。このせいで敵と交戦中に体力を回復させる救急キットがなくなり、補給しようと仲間の元へ向かう途中、キットで回復できる回復量より多く被弾してしまうという本末転倒なこともざらに起こります。
 
 

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便利な反面やや回復するまで待ち時間が発生する自動回復に対し、物陰に隠れてさっと回復して即戦闘に復帰できる手動回復制もスピーディでこれはこれで良い
それに、分隊アビリティの一つである敵を分かりやすくハイライト表示してくれるという機能も、ただ単に敵が背景に溶け込んで視認し辛いから効果があるだけで、ハッキリ言ってここまで敵が見辛いならアビリティを入れるよりも視認性を最初から向上させるほうがマシです。
 
このような仕様は、本作を開発しているSledgehammer Games(スレッジハンマー ゲームズ)が一つ前に手掛けた『アドバンスド ウォーフェア』も敵をハイライト表示させる機能を際立たせるためにわざと敵を視認し辛く作ってあったので、この開発会社の悪癖だと思います。
 
後、ローカライズの不満としては文字のフォントがいくら何でも丸っこくて可愛すぎるという点。海外のゲームの雰囲気が日本語のフォントで台無しになっている光景は慣れっこなものの、本作も戦争ゲームとは思えないような丸みのある優しそうな文字が表示されズッコケそうになりました。
 
 

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もう少し堅めのフォントでないと雰囲気が台無し

最後に

 
クリアまで約8~9時間ほど。
 
ダメと切り捨てるほど粗悪なわけでもなく、名作と呼べるほどのポテンシャルもないという無難という他ない煮え切らない完成度でした。
 
ただ、ゲーム全体が仲間を柱とするコンセプトで一貫性がある点は非常に好みで、マルチモードのチュートリアルやオマケには決して留まらない魅力は確実にあります。
 

CoDシリーズ

 

 
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