えんみゅ~ -えんためみゅーじあむ-

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[読書]沈没船が教える世界史 〈レビュー・感想〉 海底から覗く世界史

沈没船という補助線が浮上させる歴史のドラマ性

 
 沈没船・世界史という、この上なく親和性が高そうな二つの単語が並ぶタイトルだけである程度面白さは予想できるものの、実際読むと想像を超えて知的な興奮を味わえる素晴らしい本でした。
 
 最初は考古学者が自ら海にダイビングし、沈没船を調査したことで歴史的な発見がされたというような考古学的な内容なのかと思っていました。ですが、読んでみるとストレートに世界史が主で、沈没船は世界史の面白さをより後押しするための補助線のような働きがほとんど
 
 例えばローマ帝国の全盛期は非常に海上貿易が盛んで、そのせいでこの時代は大量の商船が地中海を行き交いその結果として海上での事故も多発し、沈没船の量も非常に多く、あちこちで発見される。しかし、ローマ帝国が分裂した後は内戦や小競り合いが多発し、政情が不安定で外国との海上貿易が下火になり、逆にこの時代の沈没船は滅多に発見されないなど。
 
 この沈没船の発見量や、沈没船から引き上げられた遺物、沈没船の船体構造を世界史と絡めて見せるというアプローチが非常に面白く、単体なら退屈で眠気を催しそうな世界史を見事にエンタメ化することに成功しています。
 
 絵画から作者の人間性だけでなく、その奥に潜む絵が描かれた時代の風俗や価値観、空気をも読み取り、読む前と後でその絵の見え方を変質させてしまう中野京子さんの怖い絵シリーズと同じように、その時代の技術や人々の生活の記憶を濃密に焼き付け、パッケージしている沈没船から歴史という物語を浮上させる本書も、やはり読む前と後で世界史の捉え方が変わります。
 

最後に

 
 世界史・・・・・・というよりも勉強関連は基本的に全て大嫌いですが、世界史がドラマチックに感じられる本書は非常に楽しく読めました。
 
 
沈没船が教える世界史 (メディアファクトリー新書)

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