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[アニメ]ソードアート・オンライン アリシゼーション(3期 前半)〈レビュー・感想〉 アンダーワールドで繰り広げられる猛烈な睡魔との戦い

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トレーラー

 

評価:75/100
 
作品情報
放送期間 前半:2018年10月~2019年3月(分割4クール)
話数 前半:全24話+総集編1話
アニメ制作会社 A-1 Pictures

短評

 
 まったくメリハリのないシリーズ構成の平板さ。毎話退屈過ぎて眠気を堪えるのに必死な間延びし放題の締まりのない脚本。シリーズで最も大雑把なキャラクターへの演技の付け方など、数々の問題を抱えSAOテレビシリーズではワーストの退屈さ。
 
 絵の質感など、静止画の美しさを重視するあまり、キャラクターが生きているように感じさせるアニメーションとしての基本がガタガタになってしまい、手描きアニメの温かみが薄れてしまった。
 
 ただ、ヒロインのアリス始め一部のキャラの豪華すぎるキャラデザや、背景の作り込み、絵の質感へのこだわりや色彩の情報量など、数あるテレビアニメの中でも最上級の画面の美しさにうっとりさせられる瞬間も多く、一概にダメとも言い切れない判断が難しい出来。
 

あらすじ

 
 人間の脳神経内に存在する、人の魂とされる無数の光の集合体フラクトライト
 
 ベンチャー企業ラースは、フラクトライトに直接アクセスすることで既存のあらゆるフルダイブ型VRマシンを凌駕する臨場感を持ち、実際のダイブ時間よりも遥かに長く仮想世界で過ごすことが可能な新型VRマシン、STL(ソウル・トランスレーター)を開発する。
 
 ラースのSTLテストプレイに参加したキリトは、STLが作り出す仮想世界アンダーワールド内でアリスという少女とユージオという少年とともに子供時代を過ごす奇妙な体験をする。
 
 ある日、キリトは現実世界で暴漢の襲撃から恋人のアスナを庇い重傷を負うも、目覚めるとなぜかそこは見覚えのある仮想世界アンダーワールドだった。仮想世界からログアウトを試みるもうまくいかず、アンダーワールドを彷徨うキリトは、いつか見た少年ユージオと再会し・・・・・・。
 

最大の敵として立ちはだかるのはアドミニストレータではなく睡魔

 
 本作の感想を端的に言うと退屈で眠いです。
 
 シリーズ構成が死んでいるのではないかと思うほど、普通テレビアニメだったら当たり前にある各話ごとの波のような心地良い起伏が存在せず、最初から最後まで平板で、いつまで経っても盛り上がる気配が皆無。
 
 しかも、ほぼ全話と言っていいほど話がダラダラ間延びしてテンポが完全に殺されているせいで、あらゆる会話シーンやバトルシーンが退屈そのもの。
 
 たとえ今起こっていることが地味でも、この地味な描写の蓄積が後々の展開に生かされるのだろうという、盛り上がりそうな気配すらまるで漂わず、前半はひたすら分割4クールの後半戦に向けての準備に淡々と費やされるのみで面白味がありません。
 
 何かが積み上がっているという実感は湧かず、キャラクターの演技も表情もマネキン人形みたいでまったく生気が感じられず、毎話毎話眠気を堪え続けないといけないという、これは本当にSAOなのかと疑うほどの出来。
 
 さらに、全編通して重要となるフラクトライトという設定の説明がわりと一話であっさり片付けられてしまい、ここを聞き逃してしまうと中盤以降の展開に対して理解に支障をきたします。もう少し映像を交えて丁寧に説明するとか、途中途中で軽くおさらいするなどしないと、やや不親切です。
 
 フラクトライトの意味をきちんと理解しておかないと中盤以降のアドミニストレータ関連の会話がまったく理解できず、高確率で話に置いて行かれます。こんなに無駄にグダグダ間延びしまくっているのになぜ最重要な設定は丁寧に時間をかけて説明しないのか意味が分かりません。
 
 全体的にいらない部分の描写はダラダラ長く、必要な部分はまるで足りていないため、終始話し運びのピントのズレが気になり続けます。
 
 後半は、幼馴染のアリスを奪還するため敵の本拠地に少数で殴り込みをかけるという、どう見ても漫画のBLEACH(ブリーチ)の尸魂界(ソウル・ソサエティ)編まんまの展開が用意されており、前半よりはわずかに見やすくなります。
 
 ただ、ブリーチの護廷十三隊(ごていじゅうさんたい)の副隊長・隊長クラスの死神との連戦を整合騎士との連戦に雑に置き換えただけで、やはりどうやっても白熱した戦いとはならず。
 
 ルキア奪還作戦という個性的な死神たちが次から次に登場する、ブリーチで最も面白いエピソードに影響を受けているのに、なぜこれほどまでに退屈になるのか理解に苦しみます。
 

キリトとアスナのように相互に魅力を高め合えないキリトとユージオのW主人公制

 
 元々キリトという主人公自体がそれほど活発に動くほうではなく、どちらかというとやや受け身で話の流れに身を任せるタイプなのに、今作から登場するユージオはさらに輪を掛けて内気で受け身なので、ユージオをサポートしなければならない分キリト一人の状態よりも話に勢いがありません。
 
 これまでならキリトかアスナが動いてさっさと解決するような案件も、腰の重めなユージオに解決させようとするため、余計手間がかかるので、頭が切れて抜群の行動力のアスナはパートナーとしていかに優秀だったのか痛感させられます。
 
 しかも、ユージオの成長を丁寧に描くというよりは、ただ単にキリトの引き立て役に利用される箇所も多く、ただ単にキリトよりも劣るキャラを出して「キリトは凄い」と言わせ続けるのはキリトの印象まで悪くなるので、あまり気分がよくありません。
 
 そもそも、子供の頃に禁忌を犯し公理教会に連れていかれるアリスを助けようとしたのに体が動かなかったという、ユージオの動機付けが弱すぎて、途中からほとんど空気に近くイマイチ乗れません。これならユージオが何か重大なミスをしてアリスがそれを庇ったせいで連れていかれたなど、ユージオ側にある程度罪を設定しないと、ユージオの罪悪感に感情移入できません。
 
 大切な人が酷い目にあっているのに身がすくんで動けなかった己を深く恥じているという悩みは理屈としては分かるものの、どうやってもそれだけで延々と引っ張り続けるには無理があります。
 
 ただのアンダーワールドのNPCで、与えられた天職をひたすらこなすことに疑問すら抱かなかったユージオが、徐々に自我に目覚めやるべきことを悟り、自分たちを理不尽な禁忌で縛り、支配するアドミニストレータに対して革命を起こすという、あらすじだけ書くと燃えそうなのに、受ける印象はただただ退屈で眠いです。
 

一人クイーンズブレイドなドジっ子アドミニストレータ

 
 前半のラスボスであるアドミニストレータは、重要な役なのにも関わらず、キャラの方向性がイマイチ掴めず、存在が宙ぶらりんにしか見えません。
 
 カーディナルシステムを乗っ取ろうとしたら失敗し、システムと融合してしまい人間でなくなってしまったとか、容量が一杯になった自分のフラクトライトを他人のフラクトライトに上書きコピーしようとしたらうっかり自分と同じ神のような力を持ったクローンを作ってしまい、200年間命を狙われ続ける羽目になったとか、ここぞというところでドジばかり踏んでおり、アンダーワールドの独裁者として威厳がありません。
 
 しかも、終盤はなぜか常に全裸で、長い髪で乳首と股間を隠し続けるという、SAOに一人だけクイーンズブレイドのキャラが混じったみたいな絵面で、何がしたいのかさっぱり意図が掴めません。
 
 仲間がキリトに想いを託して次から次に倒れていくのを悲壮なトーンで描くのに、敵は常に全裸で乳首と股間をちょっとした姿勢や髪の毛で隠し続けているので、泣かせたいのか笑わせたいのか意味が分かりません
 
 アニメ版のSAOシリーズでここまで珍妙なシーンは初めてで、なんでこんなものをよりにもよって前半の最終決戦に持ってきたのか謎です。
 

アリスの神々しい佇まい

 
 本作は問題点だらけなものの、例外的にヒロインアリス(整合騎士ver)のキャラデザと色彩の圧の強さには驚かされました。
 
 

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 ufotableのアニメ版Fateのセイバーや、甲鉄城のカバネリの無名、Re:ゼロから始める異世界生活のレム、ギルティクラウンのいのり、マクロスFのシェリルなど、登場するだけで通常シーンと比べ数十倍画面を輝かせるキャラクターは数多くいるものの、アリスの場合はテレビアニメの中に劇場アニメのキャラが迷い込んでしまったのかと思うほど、画面に映るだけで空気が変質し、絵の格調がいきなり跳ね上がるほど、本作の中では存在感が別格。
 
 デザイン的にはFateのセイバーやアポクリファのジャンヌっぽいものの、劇場アニメのさよならの朝に約束の花をかざろうのような髪の毛の輪郭線が黒ではなく金に近い色など、細かい部分がいちいち豪華で見入ってしまいます。
 
 A-1ピクチャーズはエロマンガ先生のメインヒロインの紗霧に専属アニメーターを割り当て演技の細かさをとことんこだわるとか、たまに狂ってるんじゃないかと思うほどヒロインの描写に力を注ぐものの、本作もアリス一人だけ浮いてしまって見えるほど強烈な印象を残します。
 

最後に

 
 これまでと違い舞台となるのがVRオンラインゲームではなくただのシミュレーターという設定上わりと普通の異世界っぽく見えてしまうビジュアルがやや凡庸な上に、シリーズ構成や脚本、コンテやキャラクターの演技の付け方など、アニメとして根本部分がガタガタで、退屈さのメーターの振り切れ具合が半端ではありません。
 
 一応退屈であることを理解した状態で二回目を見直すと初見時に比べ落ち着いて見られるので、複数回視聴することで多少評価は持ち直します。
 
 複数回の視聴に耐える絵のリッチさは過去シリーズとは比較にならないものの、後半は語り口を滑らかにし、シリーズ構成に抑揚をつけて、かつテンポアップしないと、この退屈さと眠さはキツ過ぎて話にすらなりません。
 

 SAOシリーズ

 

第1話 アンダーワールド

第1話 アンダーワールド