えんみゅ~ -えんためみゅーじあむ-

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CHAOS;CHILD(カオス チャイルド)(PS4版)〈レビュー・感想〉 幼き妄想に突き付けられる罪と罰

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トレーラー

 
評価:80/100
 
作品情報
ジャンル
アドベンチャー
発売日(日本国内)
2014年12月18日(XBOX ONE版)
2015年6月25日(PS4版)
開発(デベロッパー)
MAGES.(5pb.Games)
開発国
日本

短評

 
 科学アドベンチャーシリーズの中では巨大な陰謀がほぼ登場しないこじんまりとしたストーリーで、かつ前作のサイコホラーテイストも薄まったため、プレイ中はやや物足りなさを感じる瞬間が多い。
 
 陰謀よりも登場人物の成長を軸とする姿勢が功を奏し、前作よりはまとまりがあるストーリーになったものの、まるで『サイレントヒル2』を思わせるような、科学アドベンチャーシリーズの中でも群を抜いて救いの無い、苦い余韻が強烈な存在感を放つのが特徴。
 
 

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あらすじ

 
 2009年に渋谷で起こった不可解な災害である渋谷地震から6年が経った2015年。地震からの復興も一段落した矢先、かつて世間を騒がせた連続猟奇殺人事件、通称ニュージェネレーションの狂気に酷似した連続猟奇事件が再び渋谷で発生し、人々の関心を集めていた。
 
 碧朋(へきほう)学園の新聞部部長である宮代 拓留(みやしろ たくる)は、子供の頃に夢中になったニュージェネ事件の再来のような猟奇的な事件に浮かれ、部を挙げてこの事件の真相解明に乗り出そうと躍起になる。
 
 当初はニュージェネの再来事件を他人事として面白がっていた拓留だったが、事件を追ううちに徐々にこの事件が不思議と自分たち碧朋学園新聞部を中心に起こっているかのような奇妙な感覚に囚われ始め・・・・・・。
 

前作と打って変わり長い長い上り坂の序盤~中盤

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 前作のカオスヘッドは序盤から主人公をパラノイア的な恐怖で駆り立て続ける怒涛の勢いだったのに対し、今作はほぼ真逆です。あまり科学アドベンチャーシリーズでは見かけない学園祭の準備で慌ただしい学校生活を延々と描き続けるなど、割とありふれたシーンが続くためやや退屈です。
 
 

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 前作をクリア済みだともちろんギガロマニアックス能力者やディソード、300人委員会は絶対に登場するのが分かり切っているためいつ出てくるのか今か今かと心待ちにしていると、ようやくお披露目されるのがなんとプレイ開始から5、6時間経ってから。
 
 

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 どう見ても『仮面ライダー アギト』まんまな、何か特殊な能力に目覚めた者たちが次から次に謎の存在に抹殺されているらしいという展開で延々ともったいぶった挙句ようやくギガロマニアックスが登場してカオスシリーズらしくなってきたと思うと、また停滞。
 
 なんだかんだで自分の体感では先が気になり物語から目が離せなくなったのはプレイ開始から10時間以上も経過してからでした。
 
 冒頭から一切の出し惜しみをせず奇抜なアイデアを全開していた前作に比べ、何度も何度も退屈でプレイを中断しては休憩を挟みまた我慢して読み進めるを繰り返したので、序盤は正直ただの失敗作にしか見えませんでした。
 
 この点は初見時は分からなくとも、クリアすると「あぁ、終盤のこの展開を際立たせるためにあえて序盤は退屈に感じかねない描写を丁寧に積み重ねていたんだな」という意図を察することができるため、遡って評価は向上します。
 
 それでも今までプレイした科学アドベンチャーシリーズの中でも序盤の退屈さはワースト級で、この長い長い坂を昇り終え、下りに転じるまでに多少の忍耐を要求してきます。
 
 しかし、終盤科学アドベンチャーシリーズの中でも最もえげつない目を背けたくなるような凶悪な真実が明らかになるため、単純な物語としての面白さで言ったらシリーズでもトップクラスなのが救いです。
 
 

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ギガロマニアックス能力者の弱体化の功罪

 
 前述した序盤の退屈さの大きな要因の一つでもあるのがギガロマニアックスという妄想を現実化させる、ほぼ何でもありな設定の置き所の変化です。
 
 ギガロマニアックスの扱いで今作が前作と決定的に異なるのが、前作が謎の組織の人体実験の理由など、どちらかというと危険な陰謀に関係したものだったのが、今作は人間ドラマをより深めるための用途に変更されたこと。
 
 全員ほぼ共通の能力を使い回していた前作と違い、今作は発現する能力がそれぞれの登場人物の最も切実な願望を象徴するものへと変えられたため、能力を見るとその者が抱える心の問題を垣間見ることが出来るという、シュールレアリスティックな役割を果たすようになりました。
 
 このせいで、ノーマルエンドクリア後に解放されるなぜそんな能力に目覚めたのかが吐露されていくヒロイン個別ルートの魅力がより増し、話の主眼が謎の組織の巨大な陰謀論から登場人物の内面の掘り下げにスライドした感があります。
 
 ただ、その弊害もバカにならず、主な問題点は二つ。
 
 一つ目は、ギガロマニアックスを利用した何者かに命を狙われているのではないかというパラノイア的な恐怖演出が大幅に削られ、サイコホラーとしての魅力をほぼ失ってしまった点。
 
 ですが、前作は次から次に常軌を逸した事態が起こり、それらは全てギガロマニアックスが見せる妄想でしたという、なんでもかんでも妄想で片付けられてバカバカしくて呆れるだけだったのに対して、ご都合主義要素が減ったため、一概に退化したとは言えません。
 
 二つ目は、ギガロマニアックスの能力が弱体化したことで戦闘が簡素になってしまった点。
 
 前作の万能な能力者に対して今作は能力が極端に限定された不完全な能力者という設定なため、前作で当たり前に出来た、敵のトラウマを調べそれを凶悪な妄想として相手の脳に叩き込み、心の傷をえぐり精神を破壊し合うというギガロマニアックス同士の標準的な戦闘自体が成立しなくなりました
 
 そのせいで、戦闘がただのデバイスであるはずのディソードで物理的に斬り合うだけという、何一つ面白味もないものに成り下がってしまい、イマイチ盛り上がりません。
 
 今作のギガロマニアックスを陰謀や戦闘ではなくキャラクターの成長や魅力強化、ちょっとしたミステリー的な謎として用いるという方向性は至極正しく、成功していると思います。
 
 ただ、どうしても前作の記憶が色濃く残っていたため、最初は比べ物にならないほど控え目なサイコホラー展開や、ディソードでカンカン斬り合うだけのぎこちない戦闘など、今作の地味さに慣れるまでが大変でした。
 
 しかし、ギガロマニアックスの使い方が大幅に変更された分、前作の設定を覚えている必要がなく、今作から始めても大して理解に支障をきたさないのは長所かもしれません。
 

惜しいマッピングトリガー

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 通常のノベルゲーで言う選択肢代わりとなる妄想トリガーは前作からそのまま受け継ぎつつ、今作からイベント的側面が強いマッピングトリガーという要素が追加されました。
 
 マッピングトリガーはボードにニュージェネの再来事件に関する的確な写真を貼り付けるとか、その都度事件に対して適切な情報が書かれたふせんを選ばされるなど、誰がどう見ても分かりやすくアドベンチャーゲーム的でパッと見はワクワクするものの、ほとんどただのイベント扱いで、ゲームシステムとしてはほぼ機能していません。
 
 一箇所だけ選択肢を間違えるとゲームオーバーになるものの、それ以外は特にペナルティもなく何度でも選びたい放題なので単に総当たりで片付けられ、ゲーム性はほぼ皆無です。
 
 趣旨としては事件発生場所を地図を用いて整理させるというものでしょうが、地図を見せられても街の地理がまったくピンときません。
 
 これは科学アドベンチャーシリーズ全般に存在する問題で、例えばタイプムーンの『Fate/stay night』などは何度も舞台となる冬木市をしつこく徒歩移動する描写が挟まれ、プレイしていると自然に街の地理が頭に入ってきて、どことどこのエリアが繋がっているのか把握できるものの、科学アドベンチャーシリーズは移動描写をほとんど省略してしまうので、街の地形がまるで頭に入ってきません。
 
 5pbのゲームは一見街を丁寧に描いているようでこういう細かい演出は手抜きなため、マッピングトリガーを入れしつこく地図を見せられてもエリアの繋がりがまったくピンとこず、ただの何となく調査している風の雰囲気止まりです。
 
 プレイヤーに事件の発生場所や日時、概要を逐一整理させるという趣旨は素晴らしいため、マッピングトリガー自体はわりと好印象なものの、正直やるならもう少しゲーム性を足すとか、街を歩かせて地理を理解することで何かの謎が解けるなどの工夫が欲しかったです。
 

不満あれこれ

 
 まず、5pbのゲームにしてはメニュー画面が凝っておらず凡庸なことです。
 
 『シュタインズゲート』は携帯電話の画面、『ロボティクスノーツ』はポケコンというスマホとタブレットの中間くらいの端末の画面と、細部にも工夫が行き届いていたのに対して、今作ではメニュー画面がただの無機質なメニュー画面でしかなくガッカリさせられました。
 
 

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 主人公が情強を自称し、情弱を見下してバカにしているデジタルネイティブ世代という設定なため、常時ネットに繋がった高機能な情報端末を肌身離さず持ち歩くのは常識というスタンスをメニュー画面で表現するという工夫は絶対に入れて欲しかったです(出来ればTIPSを参照する際も何かの端末かアプリでデータを閲覧している風の処理をして欲しかった)。
 
 

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 このメニュー画面に工夫がないという点以外も、独自の癖の強めなビジュアルセンスを発揮していた過去作に比べると、本作はパッと見は普通のノベルゲーっぽく見えるなど、どうしても全体的に凝った画面演出やデザイン周りが垢抜けなく、ビジュアル的な押しが弱く感じます
 
 後は、本作で最もイライラさせられた、前作から引き続きの文章のスキップの異常な遅さ。
 
 ヒロインの個別ルート回収のために6、7時間ほど延々とスキップ待ちをさせられたので、もうほとほと疲れ果てました。明らかにトータルでは個別ルートのテキストを読んでいる時間よりスキップで待たされている時間のほうが長く、周回プレイがただの拷問です。
 
 最後に、これは微々たるものですが、ある特定の箇所で地図にマーキングをするというイベントが発生するものの、地図の文字が豆粒のようなサイズでまったく読めない点。
 
 新聞部メンバーの話から位置を推理して地図にマークを付けるという割とイベントとしてはベタなタイプなものの、選ぶ際に一瞬ズームになる以外は任意で拡大することも出来ず、画面に顔をくっつけるくらい近づかないと文字が見えないため、推理が外れるのではなく、文字の見分けが付かないというだけで自分の場合は10回ほどゲームオーバーになりました。
 
 

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こんな豆粒みたいな文字読めるか!

最後に

 
 ノーマルエンドクリアまで約18時間ほど。ヒロイン個別ルートに約13時間ほど。トゥルーエンドルートに約2時間30分ほど。そこから約1時間ほどかけてトロフィーを回収し、トロフィーコンプリートまでに掛かった時間が本編と合わせて約35時間ほど(トロフィーを意識してプレイしていなかったため、効率的にプレイすればもっと短縮可能)。
 
 序盤が看過しがたいほど退屈といったシナリオの欠点や、スキップが遅すぎて周回プレイが苦痛など、問題が山積しており手放しで絶賛という完成度ではありません。
 
 ただ、キャラクターの掘り下げが前作に比べたら遥かに丁寧でほぼ全ヒロイン魅力的なのと、ラストに待ち受ける一人の人間が一生かけても償い切れない、あまりにも重すぎる罪を背負うこととなる過酷な展開が否が応でも強烈すぎて記憶に残るなど、カオスシリーズの設定でないと表現できない物語を描いており、最終的には好印象でした。
 

TVアニメ版

 

5pbの科学アドベンチャーシリーズ