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[アニメ]オーバーロード(1期) 〈感想・レビュー〉 ダークファンタジーのフリをした哀愁漂う異世界悲喜劇

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PV

 

評価:80/100
 
作品情報
放送期間 2015年7月~9月
話数 全13話
アニメ制作会社 マッドハウス

短評

 
 単純なアニメ作品としては動きに軽快さを欠き物足りなさを覚えるものの、オンラインゲーム風異世界で繰り広げられる、見る者の思考を促すメタ要素を含んだ苦味のある渋いコメディとしては秀逸。
 
 あらゆる設定が相互作用し合い、時に可笑しく、時に切なく、様々な表情を浮かべる構造は、この作品でないと絶対に味わえない独自の趣がある。
 

あらすじ

 
 かつては一世を風靡した大人気DMMO-RPGユグドラシルがついに長きに渡る運営を終え、静かにサービス終了の時を迎えようとしていた。
 
 人生の大半をこのゲームに費やした主人公モモンガ(ゲーム内ハンドルネーム)は、一緒にプレイした仲間のほとんどがゲームを引退しても皆で作ったギルドアインズ・ウール・ゴウンをサービス終了まで一人守り続けた。
 
 仲間と共にゲームに熱中していた昔を懐かしみながら、ギルドメンバーと一緒に作ったNPCたちと静かにゲーム内でサービス終了の瞬間を迎えるモモンガ。しかし、サービス終了の時刻を過ぎてもゲームからログアウトされないどころか、NPCたちが突然意志を持ち、指示もなく勝手に動き始める。
 
 どうやらユグドラシルのサービス終了と同時に、ゲーム内の設定を受け継いだままどこか見知らぬ異世界に転移してしまったらしいと気付くモモンガ。
 
 最初はゲームからログアウト出来ないことに焦るモモンガだったが、無味乾燥な味気ない現実に帰るよりも、ユグドラシルでトップクラスのプレイヤーとして君臨していたように、この見知らぬ異世界も征服できたら面白いのではないかという考えが頭をよぎり・・・・・・。
 

大好きなオンラインゲームに囚われたいという歪んだ願望の成就

 
 いきなり冒頭から大好きなオンラインゲームのサービス終了を自分たちのギルドの拠点でしめやかに待ち続けるという、何かの話の最終回か、もしくは誰かの葬儀なのかというトーンで始まる構成に呆気に取られました。
 
 異世界に飛ばされるローファンタジー系の作品にしては異質極まりない作りで、似たような雰囲気の作品は何かと考えたら、押井守監督のオンラインゲームにとり憑かれゲームの奥深くに潜っていく実写映画のアヴァロンか、もしくは細田守監督のすでに存在しない仲間たちと永遠に終わらない祭りを繰り返す劇場版ワンピース オマツリ男爵と秘密の島なんじゃないかと思うくらい、作品自体が何か病的な香りを発しており、表面上のコミカルさとのギャップが不気味ですらあります。
 
 ドイツの作家であるミヒャエル・エンデのはてしない物語(映画名はネバーエンディングストーリー)の主人公バスチアンと似たような、現実が辛くて他の人間より虚構にしがみついてしまがちという設定が一つ入っているせいで、オンラインゲームなのか異世界なのか、はたまたただの主人公の妄想なのか分からない曖昧で得体の知れない世界に緊張が生じ、細かい設定の矛盾などはほとんど気にすらなりません。
 
 この世界そのものが主人公の願望に近いというだけで、主人公が無敵の魔法使いでも、部下の美女たちからハーレム状態でモテモテでもむしろ憐みしか覚えません。無敵な主人公とか、ハーレム状態とか、普通の異世界ものにとって欠点としてカウントされるような部分が本作では真逆で、全てが薄気味悪さを醸す因子として機能するため、うまい設定を思い付いたなと感心させられました。
 

笑いと悲しみを両立させる高度な悲喜劇(コメディ)

 
 コメディと一口で言っても、通常の美女に迫られて慌てるなどのラブコメのようなお決まりのスタイルから、チャップリンの映画やダウンタウンの松本人志さんのコントのような笑いと悲しみがほとんど区別なく並べられる高度な笑わせ方までバリエーションが豊富です。
 
 本作の最大の持ち味はシニカルな笑いを強化するように主人公の願望そのもののような歪な異世界や、輝かしい過去への未練といった設定がそれぞれ相互に作用するような絶妙な配置のされ方をしている点。
 
 仲間たちと共にギルドを作り仲良くゲームに熱中していた黄金時代はとうの昔に過ぎ去った後という設定のせいで、何度もことあるごとに昔の輝かしい思い出がフラッシュバックし、その都度表面上の話としてはコミカルなのにその話から受ける印象は常に切ないという相反する感情に苛まれます。
 
 この表面上のやり取りによって生じる笑いと、その裏に存在し続ける二度と昔に戻ることは叶わないという寂しさをうまく交錯させる構造は、がっこうぐらしの視点が入り組んだ会話劇のように常に思考を促され続け、刺激が途絶えません。
 
 

 
 面白いのに胸が締め付けられるように切ない、切ないのにどうしてもやり取りの滑稽さから笑いが漏れるという非常に高度な悲喜劇を見やすいトーンで語られるため無類の中毒性があり、途中から先が気になって視聴を止められなくなりました。
 

不満あれこれ

 
 作画に勢いが足りないという点も含め、全体的にここを何がなんでも映像で表現したいという作り手側の気合いがあまり感じられないこと。
 
 面白さがほとんど映像面ではなく設定に依存しているため、どうやってもアニメーション作品としては物足りなさが残ります。
 
 後、声優さんの演技力なのか、演技指導が足りていないのか、ところどころモブなど脇のキャラのセリフに素人が喋っているのかと思うような箇所があり、かなりノイズでした。
 

最後に

 
 一応ジャンルとしてはローファンタジーなのに、普通の異世界に飛ばされるローファンタジーとは根本的に何もかもが歪に異なる非常に特異な作品で、無類の魅力があります。
 
 

 

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