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【劇場アニメ】父から子へ受け継がれる寛容の精神 |『青の祓魔師(エクソシスト) 劇場版』| 感想 レビュー 評価

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PV

評価:80/100
作品情報
公開日 2012年12月28日
上映時間 88分
アニメ制作会社 A-1 Pictures

アニメの概要

 
この作品は、漫画『青のエクソシスト』のTVアニメ版1期のその後を描く劇場用アニメです。
 
『青のエクソシスト』という作品のテーマ性を凝縮しコンパクトに語って見せる脚本の手腕が見事で、少年マンガ原作アニメの劇場版としてはこの上ないお手本のような完成度でした。
 
一本のアクションアニメとして見るとやや欠点が多いものの、見る前と後で『青のエクソシスト』という作品への印象を大幅に向上させることに成功しており、作られた意義は十分あります。
 

少年漫画原作の劇場作品としてはお手本のような脚本

 
本作の最大の魅力は『青のエクソシスト』という作品の持つテーマ性を洗い出し、それをもう一度反復して見せることで主人公の成長を際立たせるコンセプトの確かさです。
 
かつて悪魔の血が流れているという理由で差別され虐げられた主人公が育ての親である藤本獅郎に救われたように、今度は成長した主人公がかつての自分と似たような境遇にいる者に救いの手を差し伸べ、同じ苦難を経験した者同士理解者として寄り添ってあげるという話の構造に胸が熱くなりました。
 
「そうだよ、『青のエクソシスト』はそもそもこういうテーマ性を持つ素晴らしい作品だよね」と、TVシリーズを見ている最中は別段言語化することもなかったような作品の根幹部分に改めて気付かされ、観終わった後は作品への印象が大幅に上向きます。
 
ここまで作品の勘所だけを抜き出し物語として再構築する手腕に感服させられ、誰がこんな見事な脚本を書いているのかと思ったら『ガールズ&パンツァー』の吉田玲子さんで納得しました。
 
アニメを見ていて脚本がいいと感じたら大体吉田玲子さんというパターンもお馴染みとなりすっかり慣れました。
 
最近のアニメは脚本がぶっ壊れたものだらけで辟易させられることが多いものの、毎度毎度作品に合わせプロの仕事をきっちりこなす吉田玲子さんはアニメ界の宝だよなと思います。
 

アクションアニメとしてはあらゆる部分がずさん

 
本作は、核である主人公の成長を見事に際立たせるゲストキャラクターとの掛け合い部分は素晴らしいのに、アクションアニメとして見たら欠陥だらけで正直退屈でした。
 
一応ボス的な存在の悪魔なんて、序盤で登場した後はほぼ放置で、終盤別件で街を駆け回っていると偶然発見し、そのままなんとなくの流れで倒すというご都合主義の極みのような決着の付け方でずさん過ぎて呆れます。
 
終始メインのドラマとアクション部分が噛み合っておらず、ド派手なアクションシーンの大半は単に派手なだけで中身が皆無で退屈です。
 
シナリオ上の問題で一番気になったのは、序盤に主人公たちが悪魔に囚われてしまった哀れな魂を救おうと命令違反をしたせいで街に被害が出るという展開があるのに、その件がうやむやなまま進み、うやむやなまま終わることです。
 
ここにしっかり落とし前をつけないせいで、人に迷惑をかけているのに知らんぷりな理想主義な主人公と、あくまで現実主義のプロフェッショナルとして振る舞うエクソシストたちとの対比がうまくされず、最終的に理想主義が現実主義に勝るというオチがイマイチ活きません。
 
それに、街が祭りの最中ということもあり、押井守監督の『イノセンス』とまではいかなくても、とんでもない物量の山車が登場し画面が華やかなのに、実はあまりアクションと関係なく拍子抜けさせられます。
 
序盤、列車の上で敵との戦闘があり、今度は祭りと並行してアクション展開になるのかと思いきや、また終盤に列車の上でアクションを繰り返すため「それは序盤に見たよ!?」とツッコミたくなりました。
 

高橋敦史監督の狂気性の片鱗

 
本作の高橋監督は非常にセンスが良く、他にどんなアニメを作っているのか視聴後に調べると、なんと『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の監督だと分かり衝撃でした。
 
のび太が太古に宇宙から地球へ飛来した古代人たちが作った古代文明の遺物を発見するという、ドラえもんの世界にラヴクラフトのクトゥルフ神話のようなコズミックホラーテイストを入れ、子供向けアニメに狂気を忍ばせるというとち狂った作品を作った人だと分かり、本作の一部演出や設定に合点がいきました。
 
この作品でも狂気性を出そうと試みてはいるのにうまくいってはおらず、後に少年漫画原作アニメで狂気の追求をするという思惑をドラえもんでリベンジしたのかなと妄想してしまいます。
 

高橋監督の本当のセンスは本作よりも南極カチコチ大冒険のほうで大爆発しています

最後に

 
ドラマパートは優れているのにアクションパートはずさんで、ややバランスが悪く手放しで褒められるような作品ではありません。
 
それでも、この劇場版を見ることで『青のエクソシスト』という作品が秘める魅力を再発見でき、よりこの作品が好きになれます。
 
 
 
 
 
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