PV
評価:80/100
放送期間
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2015年10月~2016年3月
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話数
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全24話
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アニメ制作会社
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J.C.STAFF
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3DCG制作
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サンジゲン
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- アニメの概要
- あらすじ
- 工兵vs巨大兵器オブジェクト
- 『アーマードコア フォーアンサー』のアームズフォートvsアームズフォートな、巨大兵器がぶつかり合うことが日常の世界
- てんでバラバラで焦点が定まっていない設定群
- 最後に
- 原作小説
アニメの概要
この作品は、ライトノベル『ヘヴィーオブジェクト』を原作とするTVアニメで、原作小説の1~3巻までの内容となっています。
アニメ版は原作小説に忠実で、アニメだけ見ても内容が完璧に理解できるほど丁寧に映像化されており、ライトノベルの映像化作品としては完成度が非常に高く申し分ありません。
ストーリーは、真っ向勝負では勝ち目のない局地戦に特化した最新の第二世代オブジェクトに対し、旧式のオールラウンド型第一世代オブジェクトの性能不足を工兵が工作戦でサポートしながら世界中の戦場を転戦していくという内容です。
そして最大の見所は、工兵が生身で巨大兵器オブジェクトに挑むという斬新なアイデアで、圧倒的戦力差を覆すカタルシスが味わえます。
アイデアの一つ一つは若干物足りないですが、物量で畳みかけてくる特殊なシチュエーションの豊富さと、サンジゲンが手掛けた巨大兵器オブジェクトの迫力は圧巻でした。
あらすじ
国連が崩壊し、国家が破綻し、国境が消滅した近未来。
世界は正統王国、資本企業、情報同盟、信心組織の四大勢力に別れ、互いの支配権を奪い合う戦争が常態化していた。
オブジェクトという従来の兵器を超越し、核攻撃の直撃にすら耐え抜く巨大兵器の登場が、戦争をオブジェクト同士だけをぶつけ合い無駄な戦死者を出さないクリーンな戦争へと変貌させる。
そんなクリーンな戦争に慣れ、弛緩し切った戦場で、正統王国軍に所属する怠け者コンビ、エンジニアを目指す派遣学生クウェンサーと、レーダー分析官であるヘイヴィアの二人は、図らずも生身でオブジェクトという怪物兵器と対峙する羽目になり・・・・・・。
工兵vs巨大兵器オブジェクト
本作の正面からぶつかっても100%勝ち目のない敵に機転で挑むというコンセプトは『アルドノア・ゼロ』を思い出します(原作小説は『アルドノア・ゼロ』よりも遥か以前に書かれています)。
しかし、『アルドノア・ゼロ』のような月と火星で発見された古代文明の技術を兵器に転用した、現代科学を遥かに超越する魔法のような技術(次元バリアで機体を覆い全物理攻撃を完全遮断するとか、半径1キロメートル以内の分子運動を停止させあらゆる物質を凍らせる能力、など)を持った『エヴァンゲリオン』の使徒のような化け物ロボットは出てきません。
オブジェクトという巨大兵器の設計者を目指すエンジニアであり工兵でもある主人公が、あくまで現代科学の延長で作られた敵オブジェクトの構造上の欠陥を見抜き、的確な工作活動によって弱点を攻撃し倒していくという一応地に足がついた内容です。
本作が面白いのは、主眼の置き場所がオブジェクト同士の戦いではなく、あくまでエンジニアであり工兵の主人公の工作戦に置くという見所のズラし方です。
直接視認できない遮蔽物だらけの地形を移動する敵オブジェクトへ長距離砲撃を加えるためいかに工兵が相手の座標を正確に味方オブジェクトに伝えられるかという駆け引き。
お互い敵オブジェクトの装甲を撃ち抜ける主砲が同時に故障し、主砲交換が早く終わったほうが勝つという状況下での、相手陣営の主砲交換作業への妨害工作。
敵オブジェクトのAIへの命令条件を逆手にとって思考ルーチンを無限ループ状態に陥らせるといったアイザック・アシモフのSF小説『アイ・ロボット』に出てくるアイデアを彷彿とさせるような話もあり、シチュエーションの作り方が多種多様です。
原作小説が長編ではなく短編に近い形式ということもあり、世界中の戦場を転戦していく各エピソードは大体2・3話ごとであっという間に終わるため、一つ一つのアイデアがやや物足りなくても次から次にテンポよく戦場が移り飽きる隙を与えません。
この引き延ばしが一切無い物量攻勢は、原作のライトノベルの巻数がかなり溜まっていてそれを一気に消費していくという反則技が使用できるという理由もあると思います。
『アーマードコア フォーアンサー』のアームズフォートvsアームズフォートな、巨大兵器がぶつかり合うことが日常の世界
本作の目玉でもある巨大兵器オブジェクトは、デザイン的にはファーストガンダムに出てくるボールを巨大化したようなカッコ良さとは無縁の外見にも関わらず、3DCGを担当しているサンジゲンが非常に良い仕事をしており動いている勇姿を拝むだけでゾクゾクする興奮が味わえます。
それに、手描きのキャラクターたちとそれほど違和感もなく画面に納まるため、画面から浮くこともありません。
後、これは単なる好みですが、終盤『Re:ゼロから始める異世界生活』でもやっていた、敵が超巨体であるという映像的な圧力を利用した、楽勝ムードからの一転絶望のどん底に突き落とされるという展開があり、ここは単純に痺れました。
オブジェクトは映像化の恩恵を100%受けており、原作小説をアニメ化した意義はこれだけで十分あると言えます。
てんでバラバラで焦点が定まっていない設定群
本作は全体としては長所が勝りますが、原作小説に忠実ゆえの短所や、アニメ版で生じた問題など、欠点も目立ちます。
まず、ほとんど全編に渡って繰り返される古臭いセクハラ的なやり取りはいくら何でも下品すぎて不快でした。これはアニメ版でより酷くなっています。
他にも不満点は山のようにあります。
CM明けのアイキャッチに流れるSEがマヌケ過ぎて本編の緊迫感がイチイチ削がれることや、ゲームの『フロントミッション』風のミクロの戦場のドラマよりマクロな戦争のメカニズムを描く乾いたタッチの世界観なのに、ドSの巨乳の上官が登場するなど、映像で見ると珍妙な組み合わせにより違和感を覚えます。
後、マジメな不満としては『アルドノア・ゼロ』でも感じた、この手の主人公の機転で圧倒的な戦力差をひっくり返すというアプローチの作品にはありがちな、いち学生が少し観察して気付く程度の欠陥をなぜ敵が放置しているのかという違和感がどうしても拭い切れないことです。
このやり方だと、結局主人公が賢いというよりも、巨額を投じて建造した兵器というわりにはずさんな設計という問題のほうが際立って見えます。
敵オブジェクトの設計図やスペック、不審な挙動から弱点を割り出すというアプローチはいいですが、これをやるなら主人公が最初に思いつく程度のアイデアはすでに敵が対処済みで、それよりも鋭いアイデアをいくつも積み重ねてようやく敵を出し抜けるくらいのハードルを設定しないと到底納得出来ません。
最初に思い付いたアイデアであっさり撃破してしまえるためオブジェクトが欠陥兵器にしか見えないという点は原作小説からある問題で、出来ればアニメ版で修正してくれれば最高でした。
まだまだ他にも不満はあります。
ブリーフィングのみでオブジェクトの強さを具体的に見せないため、出来れば毎回いかに生身で敵に接近することが危険なのか端折らずきちんと描写して欲しいとか、もう少し爆破工作を説明的でなく爆薬の設置や起爆をスタイリッシュに見せて欲しいなど、映像化する際にこだわって欲しいポイントはいくつかありました。
最後に
原作小説に忠実ゆえに原作の良さがそのまま堪能できる点と、原作に忠実ゆえに原作の欠陥がそのまま残ってしまっている点、その両方がありここはまだまだ改善の余地があると思います。
しかし、オブジェクトは映像化の恩恵を最大限受けており、原作では到底味わえない大迫力を堪能でき、これだけでも見る価値はあります。
原作小説
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