エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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トレイン・ミッション 〈感想・評価・レビュー〉

トレーラー

 
評価:80/100
 

あらすじ

 
 元警官の保険セールスマンであるマイケル・マコーリーは、ある日突然会社からリストラを通告される。
 
 絶望の中10年間乗り続けた通勤電車で帰路につくマイケルだったが、突然目の前の座席に座ってきた謎の女に声を掛けられた。女はいつもこの時間に通勤電車にいないはずのある人物を探し出せたら10万ドルの報酬を渡すと不可解な提案を持ちかけてくる。
 
 どう見ても怪しい依頼を訝しむマイケルだったが、息子の学費のためどうしても現金が入り用なため、女の指示通り見慣れない乗客探しを開始するのだが・・・・・・。
 

サスペンスに磨きをかける美しい編集

 
 映画の冒頭、いきなり度肝を抜かれるのが、10年という月日の移ろいを若いマイケルと現在のマイケルをカットバックさせることで表現する、大胆さと繊細さが入り混じる斬新なテンポの編集テクニックです。
 
 それもクレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲や、カールじいさんの空飛ぶ家のような月日の流れを説明するための時系列が整理されているものではなく、マイケルたち家族の10年の歩みを凝縮させ、今過去なのか現在なのか次第に時間感覚が麻痺し足元がおぼつかなくなるような、映画のメッセージにおける過去・現在・未来が同時に存在するようなトリッキーな編集。
 
 この編集テクニックがサスペンス映画としては極上の味わいで、マイケルの10年を追体験することで家族ドラマとしての上品さを確保し感傷的なムードを形成しながら、同時に時間感覚が狂うことで不穏な気配が作品に漂い、この後によからぬことが起こるであろうという心構えもさせるという役割を果たし、そのサスペンス的機能美に惚れ惚れさせられました。
 

フライトゲームの飛行機を電車に置き換えただけ

 
 作品の冒頭部分は、これまでのジャウム・コレット=セラ監督作品の中でも最も好きなシーンになったものの、正直本編の印象はフライトゲームとさほど変わらず。
 
 この監督はとにかくサスペンスが手数勝負なので、忙しないだけで起こることは底が浅く、いまいち話にのめり込めません。それになまじテクニックに優れているためか、明らかにヒッチコック作品を意識して作っている本作も撮影や編集、音など単発で処理しようとし過ぎて、サスペンスが打撃技っぽく、ヒッチコック的な見る者の興味の運動エネルギーそのものを利用する投げ技や、話に絡めとられる寝技のようなねっとりとした粘り気が足りません。
 
 10年間毎日通勤のため利用し、ほとんどの客が顔見知りというホームグラウンドのような電車の中で、見知らぬ乗客を探し出すというアイデアはフライトゲームより格段に優れ、興味を惹かれるものの、やはりやっていることはフライトゲームの退屈な繰り返しにしか見えず、イマイチ。
 
 後、自分のサスペンス美意識的に許せないのが電車が止まってもまだ映画が終わらない点。主人公の不安な精神状態をトレースするように走行中グラグラ画面が揺れているというサスペンスにはこの上なく打って付けの舞台である電車が停止してもまだ話がだらしなく続くため、終盤は興味が完全に失せ、早く終わって欲しいとしか思いませんでした。
 
 多分ヒッチコック監督のバルカン超特急の終盤、敵に列車を包囲されて緊迫した状態になるというシーンの再現がしたかったのでしょうが、ただの蛇足。
 
 このどうでもいい間延びするだけの蛇足展開が無かったらもう少し映画の尺を縮められたのに、残念。
 

ラクをし過ぎなキャスティング

 
 フライトゲームではドラマのハウス・オブ・カードで存在感の強かったピーター・ルッソ議員役のコリー・ストールを起用し、本作では同じくドラマのブレイキング・バッドのマイク・エルマントラウト役のジョナサン・バンクスを起用と、この監督は傑作ドラマの中の濃いキャラをそのまま自作に引っ張ってこようとする癖があり、若干ずるいです。
 
 フライトゲームのコリー・ストールはハウス・オブ・カードのルッソ議員とは別人だったものの、本作のジョナサン・バンクスは気怠そうに見えて実は鋭い観察力を持っているという、どこからどう見てもブレイキング・バッドのマイクそのままなので、出てきた時は「いや、これマイクじゃん!」とツッコミを入れたくなりました。
 
 一応頼りがいのある人に見せ、それを中盤の絶望展開に利用するという、エグゼクティブ・デシジョンのスティーヴン・セガールっぽい使い方をしているものの、結局主演のリーアム・ニーソン以外で本作で一番印象に残ったキャラはマイクっぽいジョナサン・バンクスだったので、借り物みたいなキャラが一番目立つという状態はさすがにダメだろうと不満でした。
 

最後に

 
 冒頭の時間感覚が狂う編集が本編で最もサスペンスフルで、これ以降このシーンを超えることは一切なく、常に蛇足感が付き纏うのと、終盤がグダグダし過ぎで余韻がイマイチと問題も多めです。
 
 ただ、見知った通勤電車内をサスペンス空間にしてしまうというアイデアは非常に秀逸で、フライトゲームよりは楽しめました。
 
 

 

トレイン・ミッション(吹替版)
 

 

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