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【PS4】グラフィックの美しさだけに突出した、PS4ローンチタイトル |『キルゾーン シャドーフォール』(※キャンペーンモードのみ)| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:60/100
作品情報
ジャンル FPS
発売日(日本国内) 2014年2月22日
開発(デベロッパー) Guerrilla Games(ゲリラゲームズ)
開発国 オランダ
ゲームエンジン DECIMA(デシマ)

ゲームの概要

 
このゲームは、オープンワールドアクションRGP『ホライゾン ゼロ ドーン』でお馴染みのゲリラゲームズが開発したFPSです。
 
PS4本体と同時発売タイトルだけにグラフィックの美しさには目を見張るものがあります。
 
しかし、中身は凡庸なシューターで突出した魅力は特にありません。
 
全体的に高難易度で終盤はプレイするのが苦痛に感じるほど難易度が跳ね上がるため、クリア後は徒労感しかありませんでした。
 

シューターとしてもステルスとしてもどっちつかずの高難易度拷問ゲーム

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このゲームは、PS4のローンチタイトル(ゲーム機本体と同時発売のゲーム)らしく、ゲームとしての面白さ・完成度よりもグラフィックの質を前面に押し出す安易な姿勢が透けて見えます。
 
 

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ステージの構造は一部ただのリニアではなく行動範囲がかなり広めのマップを採用しており、ステルスプレイで敵を削ってもいいし、いきなり銃撃戦を初めても良し、マップ内に散らばっている複数あるミッション目的を好きな順番でこなしてもいい、と多少の自由度を持たせた作りです。
 
しかし、マップを広大にしたせいで初期『HALOヘイロー』のようなだだっ広い空間で迷いやすい構造になっており、初回時は高確率で迷子になります。一応ナビゲーション機能はあるものの、漠然とした目的地(ゴール)だけ示し道順(ルート)を表示しないタイプで、結局どの場所で昇り降りするのか分からずひたすら迷い続けます。
 
このせいで退屈な移動時間が間延びし、ゲームとしてのテンポがグダグダもいいところでした。
 
広さを利用して演出をシームレスに繋げる工夫(爆弾を設置し、そのまま画面の切り替えを挟まず遠く離れてから自分が仕掛けた爆弾の爆発を見せ、空間の連なりを表現する)などはあるものの、ゲーム部分では、一部狙撃するか突っ込むか選べる程度で特にコレといって広さを利用した面白味は皆無です。
 
自分のようにキャンペーンモードに特殊部隊の作戦行動を疑似体験するかのような、次から次に状況が推移していく目まぐるしさを求める人間からするとただただ単調で退屈です。
 
景色が綺麗なだけのだだっ広い空間を延々歩かされ、散発的に敵と銃撃戦が起こるだけで別段ミッションにドラマ性もなく淡々とした印象しか受けません。
 
世界観やストーリーに魅力が乏しいわりに、作り込んだ風景をやたら見せびらかすためか強制移動させられるだけのパートも長めで、ゲーム側が強調し押し付けてくる部分が面白さとまったくリンクしていません。
 

迫力不足の銃撃戦

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銃撃戦は、銃の発射音や広い空間に銃声が響き渡る音響周りの作りもしょぼく、まったく迫力がありませんでした。
 
銃のリロードも全体的にやや遅めに調整されており、繰り返し行うと徐々にストレスに感じてきます。
 
戦闘をサポートしてくれるドローンも指示を出す際のレスポンスが悪すぎて危機的状況では使い物にならず、存在感は薄めです。
 
そのため『コール・オブ・デューティ』や『バトルフィールド』といった一流どころのFPSに比べると操作性や銃撃戦の迫力ではまるで足元にも及びませんでした。
 
それでもシューターとしての基本部分はそこそこ良くできており、バランス調整次第ではいい勝負も出来たかもしれないという程度の手応えはあります。
 
なのに、後半は『バイオハザード6』を彷彿とさせるまったく面白くもないただ理不尽なだけのミニゲームで何十回もゲームオーバーになり続けるという拷問展開が増え、やる気が根こそぎ奪われました。
 
しかも、終盤は高めの難易度が容赦なく牙を向きほぼ死にゲーと化していくため、苦痛以外の全ての感覚が消え失せます。
 
全体的に不満だらけなものの、唯一タクティカルエコーという、周りのオブジェクトや敵の位置情報をスキャン(サーチ)するシステムは大変気に入りました。
 
タクティカルエコーは、スキャン時に十字キーを押し続け、ゲージをギリギリまで溜めてからタイミングよくボタンを離すことでスキャン可能範囲が伸びる(誤ってゲージを端まで到達させてしまうと敵にコチラの存在がバレる)という、スキャンに緊張感を付加する試みがされており、いい刺激になります。
 
 

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ゲージが端まで到達すると敵にバレる

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ただ、タイミングを外すと敵に居場所を発見されるという部分はステルス用のもので、すでに発見されて銃撃戦になると敵がこちらを見失うことはありません。
 
タクティカルエコー自体は非常に魅力的なのに、ステルスがただのオマケでしかない本作の作りと相性が悪く、うまく機能しているとは思えないのが残念でした。
 

ステルスとシューター、混ぜるな危険!

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本作はシューターメインでややサブ的にステルス要素も入っているというバランスですが、自分はこのシューターにステルスが雑に混じっている作りが大嫌いです。
 
シューターは敵と銃撃戦をするのを楽しむジャンルなため敵との撃ち合いは快感。ステルスは逆に戦闘を回避するか、正面から撃ち合うのではなく機転を利かせて一瞬で戦闘を終わらせることが快感と、目指している方向性が異なるため、戦略無しで一緒にしたらお互いの長所を殺し合うだけで、むしろマイナスだと思います。。
 
ナノスーツを軸に、撃ち合いもステルスも手段の一つとする『クライシス』シリーズのように両方がうまく共存している作品など、互いの邪魔をせず、ストレスを感じない作品も多々あります。
 
しかし、最悪なのが銃を撃ちたくてそのゲームをやっているのにステルスを半ば強制させられるタイプです(『バイオハザード リベレーションズ2』のバリー編や、『バトルフィールド ハードライン』や『バトルフィールド1』、『バトルフィールドⅤ』、など)。
 
敵に発見されないように静かに動けと言われても「こそこそ隠れたくないし。気持ちよく撃たせてよ」としか思いません。
 
ステルスゲームは大好きなので、別段ステルスプレイがやりたいなら最初からステルスに特化しているタイトルを選ぶため、撃ち合いが主なシューターだと思っていたらそれを妨害するだけの意味もないステルス要素が入っているとげんなりします。
 
シューターにステルス要素を入れるのは、ド派手な作りを避けながらプレイ時間をより長く稼ぐことができるなど、どちらかというと面白くするためというよりは楽をするためというケースが多く、一部の例外的に完成度が高いものを除いて、この手のゲームはどうしても好きになれません。
 

パンチが皆無な世界観と登場人物

 
本作の設定は、巨大な壁により隔てられたヴェクタ人が住まうヴェクタと、ヘルガスト人が住まうヘルガーンという二つの国がお互いを憎み合い、その負の連鎖が何時までも止まらないというありがちなものです。
 
その上、二つの勢力の描き分けがうまくできておらず、魅力が感じられません。
 
ヘルガスト人に父親を殺され、誰よりもヘルガストを憎むはずの主人公の心の動きがしっかり描かれないため、成り行きで動いているようにしか見えませんでした。特に育ての親であり上官でもあるシンクレアとの関係性の描写はもう少し丁寧に描いて欲しかったです。
 
この二人は描きようによっては初代『メタルギアソリッド』のロイ・キャンベルとソリッド・スネークのように、信頼の厚い上官と部下でありながら古い友人でもあり、それゆえ信じていた上官に不信感を抱くという展開に切なさを覚えるという深いドラマ性も生じたのに、洋ゲーでありがちなイデオロギー的な役割に絡めとられるだけの展開になりガッカリでした。
 
SFシューターとしても『HALO』のように地球側とコヴナント側でテクノロジーが異なるという差別化もせず、見た目のインパクトが弱めです。
 
使用している武器もそれほど差異はなく、戦場を彩る装備や兵器群はドローンとか多脚戦車とか、クローク(光学迷彩)など既視感を覚えるものばかりでワクワクしません。
 
『メタルギアソリッド4』に出てくるメタルギア月光のように、上半身が機械、下半身は人工筋肉で、無人機なのに牛のような鳴き声を発し人間っぽい生々しくて気持ちの悪い動きをするという、現行の技術と地続きにしながら未来の兵器に見えるというSF的なうまいひねりやセンスの加え方が足りず、どれもこれも物足りません。
 

不満あれこれ

 
不満とは少し違うものの、やや戸惑ったのがキャンペーンモードのチャプター開始場所の選び方がやや分かり辛いことです。
 
クリア後にキャンペーンモードの各チャプターをちょこちょこ再プレイしていた際、各チャプターの項目に移動すると冒頭のシーンが表示され、てっきりチャプターの頭からしか始められないのだと思い込んでいました。
 
しかし、メニューの横にセリフのようなものが表示されており、「あれ何だろう?」と何の気になしに十字キーの右を押したら横にスライドして、チャプターを好きなポイントから始められることにようやく気付けました。
 
 

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他作品のキャンペーンモードは普通チャプターやステージを選択するとツリー形式のように開始可能なポイントが縦に並んで表示されるため、それに慣れているとこの十字キーで横にスライドさせる形式は盲点でした。
 
そのせいで何度も何度もチャプター冒頭から開始しては長々としたムービーや強制移動シーンを見る羽目になり時間を損しました。
 
せっかくチャプター内の好きな地点から始められるという便利な機能があるのに、出来ればチャプターの開始地点を選ぶのが横スライド式だと一発で分かるようなメニュー画面に工夫が欲しかったです。
 

最後に

 
キャンペーンモードのボリュームはそこそこありますが、後半はほぼ苦痛しか感じなかったので逆に長さが恨めしくありがたみはゼロでした。
 
PS4本体と同時発売で、PS4の性能の宣伝用であるということ以上のアピールポイントは特にない凡作です。
 
 

 
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