エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[レビュー]ファイナルファンタジー15(PS4版)〈感想・評価〉 スタンド・バイ・ミーFF

トレーラー

 
評価:80/100
 
作品情報
ジャンル
オープンワールド
アクションRPG
発売日(日本国内)
2016年11月29日
開発(デベロッパー)
スクウェア・エニックス
開発国
日本
ゲームエンジン
ルミナス・スタジオ
 
 

ゼノギアスのディスク2再び

 
 元々FF13シリーズの一翼として企画されたものを無理やり15という単独作品に改め、複数のエピソードで展開されるはずだった壮大なスケールの物語を一本のゲームにまとめて詰め込んだ影響など、制作過程のあらゆるゴタゴタが全てゲーム内容から感じ取れてしまう、ほぼ似たような過程を経たゼノギアスを強く連想させられる出来。
 
 ゼノギアスと同じで制作上の問題がゲーム後半に暗い影を落とし、一本のゲームとしては未完成に近く、ほぼ破綻しています。
 
 ただ、ゼノギアスと同じで、作品が秘める熱量は相当で、クリアまであらゆる部分が不満ばかりでも、ゲームを終えるとその熱に当てられ、好きな作品になりました。
 

永遠に戻ってこない輝かしい時代の思い出

 
 本作を本作たらしめている要因は、未来に起こる出来事をゲーム冒頭に持ってくるという、時系列を入れ替えるシナリオ構成です。
 
 あまり時間を未来や過去へ行ったり来たりさせるのは好きではないものの、この物語に限っては話の結末に近い部分を初めに見せてしまい、本編の旅を過去という時間に属させるという手法が絶大な効果を発揮しており、これがあると無いとでは作品そのものへの印象が変わってしまうほど。
 
 開始直後は仲間との旅というテーマの元ネタであり、主題歌もそのまま使用している映画のスタンド・バイ・ミー感を強調するため主要キャラクター4人が若かった頃の思い出という体にするんだな、けっこう大胆な構成だなぁくらいにしか考えませんでした。しかし、最後まで物語を見届けるとFFシリーズでもトップクラスの救いのないハードな展開が続くため、この瞬間がどれだけ幸せだったのかを痛感させられ、若かりし頃のエピソードの見え方が劇変します。
 
 クリスタルに選ばれた星を救う未来の王のため、多数の命が犠牲となり、その犠牲が徐々に物語の悲壮さを加速させる・・・・・・そして、後になればなるほど楽しかった旅の思い出がより重い意味を帯び、最初は見えなかった、でも初めから旅の陰に潜んでいた幸福と切なさを発見できるという作りは、クリア後でないと気付けません。
 
 ゲームが途中でオープンワールドでなくなるなど、初見時は不満しかありませんでしたが、クリアして初めてこのゲームは一度結末を体験しないと真の良さを見出せないと分かり、作品への評価がぐっと向上しました。
 
 何をどうやっても悲劇を避けることができず、しかもゲームの一番面白い部分が悲劇の手前でストップしているという作りは、幸せな時代・・・・・・だけどこの後に起こることを想像すると切ない、切なくて苦しい・・・・・・けどこの時間に触れられるのは幸せという相反する感情を掻き立てられ、心穏やかでいられません。
 
 最初は単に出来があまりよくないオープンワールドゲームという認識から始まったものの、クリア後は全ての何気ないエピソードがかけがえのない大切な時間だったと気付ける、切ない余韻が辛くもあり、それゆえ旅の思い出がより暖かくも感じるという深みが生じ、不満部分もある程度は許容できるようになりました。
 
 主要登場人物4人も最初は何の思い入れもなく、別段好きとも嫌いともどちらの感情を抱くほどの興味すらありませんでしたが、終わってみるとこの4人が本当に好きになっており、物語同様この4人がただ4人一緒に行動しているのを見るだけでも心揺さぶられるほど印象がガラッと変わります。
 
 

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 多分このゲームは元々こんなオープンワールドが途中で終わる不完全な作りになる予定では無かったと思います。ただ、結果的に4人が最も幸せだった時代で時計の針が止まり、切ない余韻がゲーム全体の空気を引き締める効果を発揮するという奇異な雰囲気の作品となっており、ちょっと他では味わえない魅力があります(未来という視点があるため、過去の出来事に切なさが生じるという作りはアサシンクリードとも似ている)。
 

自分の国じゃん!

 
 ハッキリ言ってこのゲームは不満が全体の6~7割ほどを占めるため、切なさを覚える構造やキャラクターが魅力的という以外はほぼ不満だらけです。
 
 まず、旅をテーマにしているという割に最も気になるのが、ルシス王国の王家の人間がルシス王国内を車で移動して回っているため、旅をしているというより、ルシス王国民の生活を王族が見学して回っているように見える点。せめて旅をテーマにするなら主人公とプレイヤーの世界に対する視点を一致させてくれないと、王子たち一行の自国見学に付き合わされているようで、イマイチ乗れません。
 
 なぜ舞台を国外ではなく、主人公たちが育ったルシス王国内にしてしまったのか理解に苦しみます。一応見た目は現代日本風である王都と、アメリカの荒野やらその他の風景が混じった王都の外では別世界ではあるものの、こんな生まれ育った王都と目と鼻の先を車で走り回るだけだと、旅先という実感があまり湧きません。
 
 ルシス王国内にある歴代の王たちの墓所を巡っていくというストーリー展開にしたかったためなのか、こんなもの単にマップはそのままで国外ということにしてしまえばいいだけなのに、そうしなかった理由がよく分かりません。
 
 主人公のノクティス王子が幽閉状態など特殊な環境で育ったため外の世界をまったく知らないという事情があるならまだ自国内が新鮮に見えても何とか説明もつくものの、幼い頃にルナフレーナがいるテネブラエを訪問していたりと、外国を訪れた経験が普通にあるのでそれも成立せず。
 
 王都には普通にテレビまであるため別に王都周辺なんていくらでも映像メディアを通じて見ているはずなのに、これだと未知の世界に出会っているのではなく、単に王子の癖に自国のあり様をまったく知らないだけの無知な王族ということになってしまい、興が削がれます。
 
 そもそも、旅というよりも外国へ船で出発するまでの旅の準備段階のような状態で始まり、ほぼそのまま進むので、地理的に王都の近場すぎるということもあり、決定的に遠くまで来てしまったという旅の説得力が乏しいです。
 
 そのせいで、ラストで王として故郷に帰還しても、ゲーム中ずっと王都周辺をあちこち散策していたため、大して帰郷に感慨が生じないのが勿体ないです(単純にストーリーのボリューム不足の問題もある)。
 
 車移動を主軸とするオープンワールドなのに車を自由に操作できないという大きな欠点はあるものの、システム含め車旅というコンセプトは上々で、景色も長時間のドライブに耐えられるほど充分綺麗なため、もう少し前提部分を煮詰めて気持ちよく旅をさせて欲しかったです。
 
 

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爽快感はあるのに調整不足でストレス多めなバトル

 
 毎回毎回バトルシステムには強いこだわりを持ち、凝りに凝りまくるFFシリーズ。
 
 本作はATBゲージというFFシリーズの象徴的システムを排し、本格的にリアルタイムアクションを採用するという挑戦に踏み切っており、そこは好ましかったです。
 
 多分このお手軽なボタン入力だけで攻撃と回避(カウンター)を繰り出せる作りはバットマンシリーズのそれをお手本にし、改良を加えたものだと思います。
 
 最初は高い場所にマップシフト(ワープ)してぶら下がるとMPが回復するという仕様がどういう文脈で生まれたものなのか謎でしたが、バットマンのワイヤーで高所に移動するグラップリングの名残なんだと考えると合点がいきます。
 
 

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 バトルの基本部分は悪くない・・・・・・どころかFFシリーズでもかなり好い線行っているくらいの手応えなものの、これまたFFシリーズお馴染みのバランス調整の不具合で、操作に慣れない序盤はひたすら敵にタコ殴りにされるため、快感より苦痛のほうが多めです。
 
 ベースはバットマンライクのバトルな癖に、なぜか本家のシステム的な分かりやすさを全てオミットするという暴挙に。攻撃してくる敵を光らせたり頭上にアイコンを表示したりと強調表示をせず、序盤はひたすら四方八方から殴られ続けるだけ。攻撃しても敵がまったくノックバックしないため連続攻撃がいちいち潰され、しかも回避やシフトで消費するMPはマップシフトするか、オブジェクトにカバー状態にならないと回復しないという、バトルの流れをぶった切るやり方で散々。
 
 特にMPの回復を攻撃や回避行動に組み込んでいないのが気になり、いちいちMPが切れるとマップシフトポイントをきょろきょろと探さなければならならず、バトルのリズムが崩れる点が非常にマイナス。仲間同士での連携攻撃が決まった際とか、敵を一体倒す度などに細かくMPを回復してくれればバトルの流れをいちいち遮らずに次から次にリズミカルな攻撃や回避が可能なのに、融通が利きません。
 
 マップシフトでぶら下がった状態からのシフトブレイク(ワープ攻撃)は快感なので、一概にダメとは言わないものの、戦闘する場所によってはどこにマップシフト可能なポイントがあるのか分からず、MPがゼロ状態で延々カメラを回してポイントを探すというグダグダな時間が発生するので、スピーディなバトルが台無しになります。
 
 全体的に足し算的に無駄を重ねバトルの各要素が常にギクシャクしている上に、基本は回復アイテムを大量消費してゴリ押しすればどんな敵でも倒せるので、手間だらけでストレスが多いわりに難易度は非常に低いという、何がしたいのかよくわからないバランスに仕上がっており、謎です。
 
 バトル自体は非常に爽快感があり、各要素をもう少し整理整頓さえすれば見違えるほど良くなりそうなのに、雑なバランス調整のせいで魅力を殺されている様にしか見えず、残念。
 

映像作品との繋がり

 
 自分の場合はゲームをクリアしてからブラザーフッドFF15キングスグレイブFF15という順番で見たものの、正直それほど作品への印象に変化は生じませんでした。
 
 ブラザーフッドのほうは全5章の短編の連なりで、基本は主要登場人物4人の子供時代を描き、キャラの絆の掘り下げをするだけで、ストーリー的な繋がりはほぼ皆無。
 
 ただ、クリア後に見たため、ゲーム本編が物語終盤から始まり時が過去に遡るように、悲壮な終盤から突然4人が旅をしている平和な話に戻り、見ていて非常に癒されました。やはり、FF15という作品は未来の視点から幸福だった過去を眺めるという構造がしっくり来るため、順番としてはクリア後に見たほうが何気ないやり取りが心に沁みます。
 
 一番印象的だったのが、ゲームのバトルチュートリアルでいつもノクトの練習相手をするのがなぜ面倒見のいいイグニスではなくグラディオなのかと不思議に思っていたら、グラディオは昔からノクトに剣を教えていた剣の師匠でもあったのだと劇中の描写で分かったこと。その他にもやたらプロンプトがゲーム中に太るという言葉に反応していたことなど、ゲーム内のいくつかのやり取りがこれを見ることによって腑に落ちます。
 
 しかし、映像作品として見ると、カラーデザインが明る過ぎてゲーム本編やキングスグレイブの落ち着いた色調に比べ一番浮いており、あまり同一の世界に見えません。それに、王都の描写が現代日本そのものとして描かれるため、ハイファンタジーとしての土台が軋み、作品イメージにヒビが入るというマイナスもあります。
 
 

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ハイファンタジーでプロダクトプレイスメントをやるという暴挙も酷い

 

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 キングスグレイブはもろに日本ぽさを前面に出すことは避けていたので、もう少しコンテなりでアングルを工夫し、日本ぽいけど日本には見えないくらいのズラし方をして欲しかったです。
 
 それでもアニメ制作会社がA-1ピクチャーズなため、webアニメでそこまで本腰を入れて作っているワケではないものの、アクションもそつなく描いており、質はそこそこ高く、ギリギリファンアイテムとしては及第点といったところ(ただ、日本国内向けというよりも、日本のアニメ制作会社が作る海外向けアニメに近い)。
 
 スクウェア・エニックスが自社で制作している劇場版CGアニメであるキングスグレイブのほうは、ゲームをやっている最中ところどころ説明が欠けており「もしかしたらこの説明不足な部分はキングスグレイブのほうで語られているのかな?」と思って多少期待して見ると、ほとんど関係なく補完してくれません。
 
 ゲームと映像作品を同時進行で作った弊害か、いまいち内容がシンクロしておらず、同一人物が出て来ても微妙に別人に見えたり、ゲーム中と同じ事件を描いているはずなのにちぐはぐに感じたりと、綺麗に内容が繋がってくれずもどかしいです(同じく同時進行で作られたゲームのテイルズ・オブ・ヴェスペリアと、ゲーム本編の前日譚である劇場アニメ版ヴェスペリアの関係とそっくり)。
 
 映像はCGアニメとしては情報密度が凄まじく、シフト(ワープ)描写が映像で見てもアクションとしてキレがいいという長所はあるものの、まったく期待せず見たらそこそこ良かったブラザーフッドに比べ、本編の説明不足を解消してくれるかもとかなり期待して見た分、話がゲーム本編と関係ありそうであまり関係なく、ガッカリさで言うとコチラの方が上でした。
 
 内容としてはスターウォーズローグワンと同じで、希望を未来に繋ぐため色々な人が犠牲になり、帝国の人質だったルナフレーナを解放し、未来の王であるノクトの元に送り出すという、一応本編で光耀の指輪を託されたルナフレーナが帝国の手を離れ自由に行動している謎が解けるものの、それ以上のものがありません。
 
 ゲーム本編の補完としては物足りず、単体作品としては技術面が凄いこと以外は、主人公の存在感もストーリーも薄いわりに尺だけ2時間近くあり無駄に長いというどっちつかずの印象しか受けません。こんな本編の4人の足元にも及ばない魅力の乏しい主人公を新たに設定するくらいなら、ノクトの父であるレギス視点にのみ絞って欲しかったです。
 

最後に

 
 クリアまで約20時間強。
 
 一本のゲームとしては隅から隅まで不満だらけなものの、それを補う、旅の始まりからすでに終わりを予感させる切ない構造と、それを成立させた大変魅力的なキャラクターのおかげで本作を好きになりました。
 
 ストーリーの尺を2倍か3倍くらい(出来ればFF7級)に増量し、この物語をこんな穴だらけで半端な形ではなく、しっかり語り切れればFFシリーズでも間違いなく上位級の作品になったと思うので、そこが悔やまれる限り。
 
 

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