トレーラー
評価:65/100
ジャンル | 横スクロール アクションアドベンチャー パズル |
発売日 | 2018年5月17日 |
開発(デベロッパー) | Okomotive |
開発国 | スイス |
ゲームエンジン | Unity |
短評
文明が崩壊した世界を帆船で旅していくというシチュエーションには非常に心惹かれるものの、雰囲気ゲーとしてのディテールの詰めが甘く、コンセプトとパズル性もイマイチ噛み合っておらず、終始チグハグさを覚える中途半端な内容。
良くも悪くもただの雰囲気ゲー
本作はオンボロな帆船をミニゲームの要領で操作し、ところどころ船から下りてパズルを解きながら先へと進み続ける横スクロールアクションパズルゲームです。
崩壊した文明の名残を横目に、海が干上がってできた大地を帆船で旅するという設定を知った時は、自分的にオープンワールドゲーム化して欲しいアニメランキング一位である、寒冷化によって死の大地となった地球を浮遊する帆船で旅する『エルゴプラクシー』を連想してしまい、興味を惹かれました。
ゲーム開始直後はほとんどモノクロに近いにもかかわらず、吸い込まれそうなほどの奥行きと広がりを感じさせる抑制の効いた画面にこれはPlaydeadの『LIMBO 』や『INSIDE 』級の名作なのではないかと期待させられました。
しかし、徐々に普通の雰囲気ゲーの範疇であり、過度な望みを抱きすぎたなと反省させられることに。
クリアするまで美しい景色とは何度も遭遇するものの、思わず息を呑むような、こちらの期待を上回る光景が目に飛び込んでくることはついぞ無く、プレイ中の感触もクリア後の余韻もあっさり気味でした。
ガタがきているのであろうオンボロな船をせわしなく前進させるミニゲーム+パズル部分と、風景や音楽で哀愁を語りたいというコンセプトの相性がイマイチで、システムと美術の調和を感じません。
船を降りたら意味ないだろ!?

本作のゲーム性は単純で、船内のギミックを順々に稼働させ続け、船をひたすら前進(横スクロール)させることです。
エンジンスイッチを押し、燃料が切れそうになったら補給し、熱が溜まったら排熱し、火災が発生したら鎮火し、機械が故障したら修理を順繰りに行います。
閉じたゲートや障害物で船が進めくなると、今度は船外に出てパズルで解決という、船内のミニゲーム的な単純作業とパズル要素をせわしなく繰り返すのみです。
最初は動きがぎこちなく、何度も燃料補給が遅れたり、エンジンスイッチを押し忘れたりで船を止めてしまうものの、慣れてくると船を停止させないまま次から次に流れ作業的にルーティンをこなせるようになるため、多少のゲーム的な上達を実感できます。
ただ、本作で一番の問題だと思うのは、障害物がある→船から降りてスイッチを押しに行く、を延々繰り返すため、船に乗りながら、船の機能を利用してパズルを解くゲーム性になっていない点です。
船の進路を妨害する閉じたゲートを開門するのに、何度も船から降り船外で凡庸で面白味もないパズルを解かされるため、船での旅とパズルの謎解きが分断されがちです。
このため、本作において最も重要であろう船と共に旅をしながら苦楽を共にし、次第に船と心が通じ合い絆が育まれていくという実感が乏しく、ひたすら退屈なパズルを解きながら単に帆が付いた燃費の悪い巨大自走式トロッコを運搬しているような気分でした。
もう少し帆を広げる・畳む、速度を出す・落とすなど、船の操作とパズル性を連動してくれないと、船がただの乗り物を超えてキャラクター化しません
それに、意味がまったく分からないのは途中の施設で船を改造して機能を強化する点です。
普通この手の物悲しさを表現するような作品なら、徐々に船が壊れて機能を喪失していくほうが演出的に理に適っているのに、なぜ強化・改造などというコンセプトと逆行する無粋なことをするのか理解に苦しみます(せめて、壊れた箇所を応急措置で修理し、痛々しい外見になるなら良かった)。
このように、終始表現したいことがピンボケ状態なため、見た目の美術は及第点でも、とんちんかんな印象しか受けませんでした。
最後に
クリアまで約3時間ほど。
ミニゲーム的な船内作業は一度やり出すと熱中してやめられなくなるほど中毒性があり楽しいと言えば楽しいですが、コンセプトに対して演出のきめ細やかさや、ゲームデザインの練り込みが足らず、パッとしない、もう一押し足りない作品といった感想です。