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天才プログラマー、異世界ロボット開発にイノベーションをもたらす [アニメ]「ナイツ&マジック」 〈感想・レビュー〉

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PV

評価:80/100
作品情報
放送期間 2017年7月~9月
話数 全13話
アニメ制作会社 エイトビット
3DCG制作 オレンジ

短評

 
 天才プログラマーが異世界に転生し、前世のプログラミング技術を駆使して異世界ロボット開発に影響を与えるという設定は秀逸。
 
 作画・CGともに質が非常に高く、映像作品としても満足のいく完成度。
 
 しかし、シナリオはご都合主義と欠陥だらけでまともに見るのが辛いほど出来が悪く、ラストも安易なパロディに走ってしまうため余韻も最悪。

 

あらすじ

 
 天才プログラマーであり熱狂的なロボットマニア倉田翼は、ある日交通事故に遭い帰らぬ人となる。
 
 しかし、倉田は死後にエルネスティ・エチェバルリアとして異世界に転生。異世界でシルエットナイトという人型のロボットを目撃した衝撃で、自分がプログラマーでありロボットマニアだった前世の記憶を思い出す。
 
 前世のプログラミング技術とロボットに対する溢れ出る情熱で瞬く間にシルエットナイトに対する知識を深めたエルネスティは、遂に個人でシルエットナイトの新型機開発を成し遂げる。
 
 だが、新型機が謎の集団に強奪され、最新技術が国外に漏洩したことにより、世界は混乱へ向かって行くこととなる。
 

ご都合主義の穴だらけシナリオ

 
 この作品は天才プログラマーでありロボットマニアの主人公が異世界に転生し、天才的なプログラミング技術を駆使し異世界のロボット開発にイノベーションを起こしていくという異世界転生ものロボットアニメです。
 
 本作は一本のアニメとしてはほとんど成立していないと言っても過言ではないほど脚本が支離滅裂です。
 
 ストーリーは次から次に見る側の理解など置いてきぼりで進み続け、終始ご都合主義のオンパレード。プロの技術者やメカニックが会話しているのに、プロっぽさなど微塵も演出する気がなく、説明・説明・説明、品の無いナレーションを頻繁に挟んでまた説明・説明・説明と、説明臭すぎて辟易させられます。
 
 終盤これまで何度も何度も登場したシルエットナイト(人型ロボット)の部品に対してまた説明セリフが入った時はさすがに呆れ返りました。
 
 本作は主人公がパイロットとして前線でバリバリ戦うというよりも、どちらかというとロボットの設計・開発をする話なので、深い専門知識を持った技術者同士のテクニカルタームをちりばめた知的な会話劇が味わいたいのにそこが抜け落ちており、コンセプトとシナリオのピントが合っていません。
 
 勘所が押さえられていないのは会話だけでなくドラマも同様。
 
 登場するキャラクターは全員愛嬌があり魅力的なため仲間同士の掛け合いは見ているだけで微笑ましくここは好感が持てます。特に己の不甲斐なさと真正面から向き合い人間的な成長を遂げるディートリヒは他のキャラより一段輝いており、しかも感情の起伏を表現するシーンの音楽の使い方の巧みさも相まって非常に好きなキャラになりました。
 
 ただ、起こる展開はど派手なのにも関わらず、ほぼ登場人物の誰の感情もこもっておらず、ドラマ自体は空洞でまったく響いてきません。しかも、主人公は常にマッドサイエンティスト然としており大喜びで兵器を開発し心底楽しそうに戦闘するためほぼ感情移入不可能で、もう少し作品のトーンをブラックに調整でもしないと、この主人公の異常性が浮き過ぎて辛いものがあります。
 
 作品全体がこのロボット愛を理由に暴走し続ける狂人の主人公にただ振り回されるのみで、暴走させるにしても完璧に制御した上での暴走でないと、ただ頭のおかしい人が好き勝手やっているさまを見せられるだけで作品にまとまりが感じられません。
 
 正直、脚本は欠点だらけで完成度の高い映像の足を引っ張っているとしか思えません。
 

作画(エイトビット)とCGロボット(オレンジ)の見事なハーモニー

 
 古くは『ゾイド』、最近では『アルドノア・ゼロ』、『蒼穹のファフナー EXODUS』といった人物は手描きでロボットやメカ部分はCGというアニメの系譜の中でも本作は完成度が非常に高い部類だと思います。
 
 舞台となる異世界は魔法が当たり前に存在する『聖戦士ダンバイン』のバイストン・ウェル風で、メカデザインは『重戦機エルガイム』や『ファイブスター物語』の永野護デザインのような甲冑を身に纏った巨大な騎士風といったハイセンスで尖った80年代ロボットアニメ調。
 
 しかし、画面に映るのは今風のキャラデザと密度の濃い背景、CGで動くロボットという、最新のものと古風なものが同居しているような感覚は、人物が手描きというアナログ手法とロボットがCGというデジタル手法の融合ぶりをそのまま体現しているかのようで、新しさと懐かしさが混ざり合い不思議な感覚でした。
 
 『インフィニット・ストラトス』の頃はオレンジのCGによるアクション部分のセンスの良さに対して、エイトビットの作画が明確に見劣りしていたものの、もはや格は同等でお互いがお互いを高め合う理想の関係となり、映像を見ていて清々しさすら感じます。
 
 シルエットナイト同士の格闘戦の殺陣は、機体の巨大さ・重量感表現よりもフットワークの軽さを重視したスピーディな動きと、CGである強みを最大限生かしたダイナミックなカメラワーク相まって単純に滅茶苦茶カッコいいです。
 
 魔法による砲撃戦も、魔法の弾速がやや遅いため『スターウォーズ』のブラスターのように剣で弾くことも出来る上、砲撃から着弾まで微妙な間が生じ、一部着弾の衝撃への溜めとなる見せ方もゾクゾクしました。
 
 『インフィニット・ストラトス』と同様、戦闘シーンになると途端に動き一つ一つにこだわりが感じ取れるため、会話劇もこれくらい一言一言に注意を払って作ってくれたらいいのにと、アクションが良ければ良いほど足を引っ張る脚本に不満が募るばかりでした。
 

ロボットアニメに新ジャンルを確立できるかもしれない世代交代の快感

 
 本作はロボット描写だけに注目すればかなりの出来なものの、ほとんどシナリオがまともに機能していないため一本の作品としてはガタガタです。
 
 ですが、原作をダイジェスト気味に描いたことの影響か、ロボットの進化・改良スピードが通常のロボットアニメの比ではないため、終盤になるとその目まるぐるしさに不思議な快感を覚えるようになりました。
 
 自分がこれまで見たロボットアニメの中でもトップクラスの開発スピードで、新型機として登場した機体がもう数話後には旧式になっているという恐ろしいまでの機体の耐用年数の短さは、突き詰めたら一つのジャンルになりそうな気すらします。
 
 主人公がパイロットよりも技術者要素のほうが濃いことを利用した、次から次に惜しげもなく新型機や新装備がお披露目され続ける、短いサイクルの機体交代劇は、個々の機体の活躍を度外視しややマクロ視点で機体が足早に世代交代していくのを楽しむシミュレーションゲームに似ています。
 
 まるで、『機動戦士ガンダム ギレンの野望』で自軍の主力量産MSがザクからドムへ、ドムからゲルググへ、ゲルググからゲルググM(マリーネ)へと駆け足で交代し続けるも、決して戦力的に安定することはなく、常に性能不足な現行機を使い続けようか、開発費用を投じて新型機の開発に着手しようか選択を迫られ続ける感覚に近いものを感じました。
 
 本作を見ていたら従来通り新型機の活躍をじっくり描くスタイルも良いものの、戦況に応じて新型機や新装備を短いサイクルで開発・実戦投入するプロセスそのものを目的化してしまう、戦闘よりも設計・開発に軸足を置くようなスタイルも、極めればロボットアニメの新しいジャンルになるのではないかと夢想してしまいました。
 

ガンダム(というか富野監督作品)パロディ化し、作品価値を下げていく終盤

 
 あれこれと不満はあっても短所よりは長所のほうが勝るので楽しく見ていると、終盤にいくにつれほとんど開き直ったかのようなヤケクソ状態でロボットアニメパロディに走りだし心底ガッカリさせられました。
 
 終盤は、ゲームの『スーパーロボット大戦』の広範囲を攻撃するMAP兵器風の武器とか、ガンダムシリーズに登場する有線式サイコミュ(インコム)とか『ガンダム00』のトランザムシステムっぽい演出や、『聖戦士ダンバイン』のオーラバリア、ハイパー化、『逆襲のシャア』のアクシズ落下阻止とか、見ていてその志の低さに呆れるばかりでした。
 
 このくだらない安直なガンダムパロディネタに突っ走った結果、同じくロボットアニメのパロディを大量に盛り込んだ『トップをねらえ!』と比べ熱量とセンスがまったく足りていない出来損ないのような惨状となってしまい、寒い余韻で幕を引きます。
 
 終盤がこんな悲惨なことにならなければもう少し本作への評価が高いままだったのに残念です。
 

ヒイロなみの見事な自爆っぷりでした

 

最後に

 
 最後の最後で安易なパロディに走ってしまい余韻は最悪でした。
 
 エイトビット×オレンジのコンビならこれからのロボットアニメジャンルを引っ張っていくことも出来そうなので、パロディに逃げずに正面から堂々としたロボットアニメを作って欲しかったです。