エンタメ不感症の患部に巻く包帯

ゲーム、アニメ、海外ドラマ、映画などの、エンタメ作品総合レビューブログ

メイドインアビス 〈感想・レビュー・評価〉 理想的な映像化に成功した、極上のハイファンタジーアニメ

f:id:chitose0723:20180824182516j:plain

PV

 
評価:90/100
 
作品情報
放送期間
2017年7月~9月
話数
全13話
アニメ制作会社
キネマシトラス
 
 

あらすじ

 
 約1900年前、南海べオルスカの孤島で発見された直径が1kmもある巨大な大穴アビス。アビスの中には常識が通じない危険生物や、人智を遥かに超えた古代の遺物が存在し、ロマンに惹かれた世界中の探検家がアビスへと殺到する。
 
 いつしかアビスに潜る探検家たちは探窟たんくつと呼ばれるようになり、アビスの周りに出来た探窟家たちの拠点は巨大化しオースという街となった。
 
 そんなオースで一人前の探窟家を目指す探窟家見習いの少女リコ。リコはアビスの中を探窟中に体が機械で出来た記憶喪失の少年レグに出会う。
 
 リコとレグの平穏な日々は、リコの母であり、リコが二歳の時にアビスに潜ったきりである伝説の探窟家殲滅のライザの持ち物が発見されたことで終わりを迎える。持ち物の中にあった『奈落の底で待つ』という紙切れを見たリコは居ても立っても居られなくなり、母が待っているかもしれないアビスの底へ向かうと決心。レグも自身の過去を思い出せるかもしれないと旅路に同行すると申し出る。
 
 アビスでは上昇負荷、通称アビスの呪いと呼ばれる、深度の深い場所に潜ると上昇時に体に多大な影響が出るという謎の現象が起こるため、人間はある深度よりも下に潜るともう二度と地上に戻る(上昇する)ことは不可能となる。
 
 アビスの呪いの影響を受けない機械の体を持つレグを頼りに、リコは人の身で降りたら二度と地上への帰還が叶わないアビスの底を目指し、過酷な冒険の旅へ出る・・・・・・。
 

メイドインアビスに潜む少年漫画性

 

ハンター×ハンターとの類似性比較
  メイドインアビス ハンター×ハンター
憧れの職業
探窟家
ハンター
未開の地
アビス
暗黒大陸
主人公
リコ(母親が伝説の探窟家)
ゴン(父親が伝説のハンター)
旅立つ理由
幼い頃にリコを残してアビス
の底へ潜った母を探しに
行方知れずの父を探すためハ
ンターを目指す
プロの腕前
白笛クラスの探窟家は奈落の
遺物で武装しており凄まじく強い
一流のハンターは全員念能力の達人
作者
天才
天才
 
 
 このように非常に設定や物語の動機付けが良い意味でハンター×ハンターに似ています。一見固有名詞が多めで、ビジュアルも凝りに凝りまくり絵の情報量が膨大で読み解くのが大変なハイファンタジーっぽくても、話の骨格は少年漫画的で一度作風に慣れてさえしまえば飲み込みやすいです(少女が空から降ってくるのではなく少年がアビスの底からやってくるのは天空の城のラピュタの設定をひっくり返した構造にも見える)。
 
 数年前に原作漫画を読んだときは癖のある絵柄と、絵の情報量に気圧され、絵から物語を読み解く作品なのだと勘違いし、イマイチ乗り切れませんでした。しかし、アニメ版を見て「これ、世界観や絵が凝りまくっているだけでストーリーは自分が大好きな少年漫画風なんだな」と気付いたら、一気に作品の楽しみ方が分かり、原作漫画も俄然面白く読めるようになりました。
 
 一度作風が馴染むと、冒険ものストーリーに、少年漫画では破格とも言える、とんでもなく厚みのある美術や設定の魅力が加味された作品であることに気付け、否が応にも虜になります。
 
 ハンター×ハンターと同じで、表面上は少年漫画的な気軽さを備えつつ、中は底の見えない深淵の如き深みがあるという二面性を持つ構造は、見た目の可愛さとは裏腹に堂々とした傑作の風格を漂わせています。
 

原作とアニメ版がお互いの価値を高め合う、理想の映像化

 
 普通、絵に強いこだわりのある漫画を映像化したら原作の個々のパーツの釣り合いが崩れ、何かしらの不均衡をまねきそうなものですが、本作は崩れるどころか、さらにBGMや環境音を足し、アニメーション(動き)を足し、それらをほぼ完璧に調和して見せるという驚異的なバランス感覚で作られており、画面内で浮いて見える要素が見当たりません。
 
 微塵の隙もない背景密度や、一度見ただけでは聞き取れないほど細かい、遠くの遠くから聞こえる風の音や、鳥の鳴き声、虫の羽音など、パッと見の画面の情報量と細部の音の作り込みがシンクロし、初回時よりも二回目、二回目よりも三回目と、見る度により好印象が増していきます。
 
 単純な情報の物量や演出の迫力で圧倒するのではなく、繰り返しの視聴で徐々に作品の空気が体に染み込んでいくため、初見時は正直やや刺激不足に感じました。ただ、ずっと基調色である温かみのある柔らかい緑色に包まれていると、スゥっとアビスに体が馴染むように、刺激を求め過ぎないスタンスに心地よさを覚え出します。
 
 アビスという舞台の神秘性を損ねないよう、画面からノイズとなる要因を追放し、見ている最中一度たりともアビスの存在に疑念を抱かせない細密さは、アメリカドラマのゲーム・オブ・スローンズにも通じるハイファンタジー世界を映像で見せ切ってやるという作り手の熱意を感じさせます。
 

ただそこには度し難い選択と結果のみが存在する

 
 劇中何度も発せられる度し難い(救いがたい・どうしようもない)という言葉に象徴される、登場人物が取る行動の合否を作品側が判定してくれず、見る側が行動の意味を考えなければならないというやや突き放すような作りは海外のゲームデザインにも通じる深みがあります。
 

 
 特に最終話で取る行動は「本当にこの選択肢で正しかったのか?」と悩み、見終わった後もずっと気持ちが晴れませんでした(と、言うか、最終話の後半はずっと泣き続け、見終わった後も数十分涙が止まらなかった)。
 
 しばしば、見ているこちら側の常識と照らし合わせると異常とも思える行動や思考をする登場人物たち。
 
 それは、自分の命を削り漫画やアニメを作り続けるという終わりの見えない過酷な人生を選択したクリエーターの姿とも重なり、探窟家たちが二度と地上に戻れなくなるのを覚悟しアビスの底を目指すように、どこまでも深く潜っていかないと気が済まない、創作の魔性に魅入られた者たちのモノ作り賛歌の寓話にも見えてきます。
 
 自分がやたら探検や冒険を描く話に興味を惹かれるのは、そこに作り手のあえてリスクを取り、答えなどない危険な道に挑みたい、そして挑む者を全力で祝福し鼓舞したいという純粋な想いを垣間見るからなのかなと考えさせられました。
 

最後に

 
 近年稀に見る超・超・弩級の大傑作!!
 

余談

 
 最近、シャーロットRe:ゼロから始める異世界生活など、TVアニメ版のガンバの冒険終盤のノロイ島以降のような、登場人物たちを精神的・肉体的に情け容赦なく痛めつけるという展開がラスト近くに配置される構成の作品にやたら遭遇する気がします。
 
メイドインアビス Blu-ray BOX 上巻

メイドインアビス Blu-ray BOX 上巻

 
メイドインアビス Blu-ray BOX 下巻

メイドインアビス Blu-ray BOX 下巻